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玉木雄一郎「不倫より政策」がスキャンダル報道を変える? かつては武勇伝、今は命取り「政治家の下半身」問題の今後

文春オンライン / 2024年11月19日 6時0分

玉木雄一郎「不倫より政策」がスキャンダル報道を変える? かつては武勇伝、今は命取り「政治家の下半身」問題の今後

不倫報道で謝罪する玉木雄一郎氏 ©時事通信社

 今回は政治家のスキャンダルについて考えてみたい。衆院選で議席が4倍に増え、一躍時の人となった国民民主党の玉木雄一郎代表に不倫報道があったからだ。政治家のスキャンダル、もっといえば「下半身」報道はいつからあったのだろう。

 私の記憶でいえば昭和の頃は政治家のプライベートはスキャンダルにならないばかりか、田中角栄の愛人報道のように武勇伝的な扱いだったとすら思う。

「下半身」報道の皮切りとなった宇野首相の愛人問題

 それが変わったのは、昭和が終わり平成元年となった1989年だ。この年はリクルート事件で自民党に逆風が吹いていた。竹下登首相は責任をとる形で退陣。「ポスト竹下」と言われていた安倍晋太郎や宮沢喜一は首相になれなかった。

 リクルート株はまんべんなく自民党内にいきわたっていたので大物ほど身動きがとれなかったからだ(裏金問題で揺れる最近の自民党と状況が似ている)。

 そんななか首相になったのは、外務大臣などのキャリアがあった宇野宗佑だった。大穴的な存在の「抜擢」に当時10代だった私は驚いたものだが、とにもかくにも宇野首相で自民党は参院選を戦うことに。しかし就任直後に『サンデー毎日』が宇野氏の元愛人の告白を報道したのである。

 ただでさえ自民党はリクルート事件、消費税スタート、農産物自由化問題の「三点セット」と言われていたうえに首相スキャンダル。参院選は惨敗し宇野政権はわずか2カ月の短命に終わった。

 当時の報道を『サンデー毎日』は次のように振り返る。

『平成初の本誌「特大スクープ」!「宰相の器」を問うた“三本指”』(2022年1月30日号)

 女性Aさんが東京・神楽坂で芸者をしていた85年、宇野氏と金銭を介した性的関係を結んでいたと誌上で暴露した。女性の手の真ん中の三本の指をギュッと握り、これでどうだと言ったという「三本指」告白である。

《もっともその頃、有力政治家が芸者の旦那になり、金銭の面倒を見ながら特別な関係を結ぶことは珍しくなく、彼らの「下半身」を書かないのがメディア側の不文律でもあった。》(『サンデー毎日』前掲号)

当時編集長だった鳥越俊太郎氏は...

 しかし当時の『サンデー毎日』編集長でジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、「政治家が女性と不倫し、肉体関係を持ったとしてもそれだけなら報道しない。宇野氏は彼女をホテルニューオータニに電話で呼び出し、国会を抜け出して会っていた。性交渉の対価としてカネを払っていた。これは『買春行為』であり、許されないと判断しました」。

 鳥越氏の言葉どおりなら不倫より買春を問題視して報道したということになる。ただ、この報道がきっかけで政治家の「下半身」報道がオープンになった。ついでに言うと、鳥越俊太郎氏は2016年に都知事選に立候補した際に、女性問題を週刊文春に報道された。因縁めいている。

 まさしく平成になった瞬間から、政治家の「下半身」報道は普通になった。最近の例をざっと挙げてみると宮崎謙介衆院議員(2016年・議員辞職)、山田太郎参院議員(2023年・文科政務官辞任)、広瀬めぐみ参院議員(2024年・自民党県連副会長辞任・議員辞職)、宮沢博行衆院議員(2024年・議員辞職)といった面々だ。議員を辞職したり役職を辞めている(広瀬めぐみ氏は政治とカネの問題が直接の理由)。

これで本当に国民生活を守れるのか

 それでいうと今回の玉木雄一郎氏の去就が注目されたが、現時点では代表も議員も辞めていない。ニュース番組での街の声を見ていると厳しい声は当然あるが、「政策とプライベートは別」という意見も見るようになった。

 玉木氏擁護の理由にはいわゆる「年収103万円の壁」の見直しを訴えて衆院選で支持を集めたことも大きいのだろう。もしこのまま「対決より解決」ならぬ「不倫より政策」となれば、長く続いた政治家のスキャンダル報道の潮目が変わる可能性がある。その意味でも注目なのだ。

 ただ、私は玉木氏が誰それと不倫という視点より、そのまわりに浮かぶ現実のほうに問題を感じる。まず衆院選後に時の人となり、いわば“玉木氏史上”もっとも世間から注目されていたときにあのような行動をしてしまう迂闊さ、軽さ。これで本当に国民生活を守れるのか、危機管理を任せてよいのか。不倫より資質そのものへの疑問である。

「103万円の壁」どころではない相手女性との“格差”

 もう一つの論点は、もはや昭和ではないということだ。玉木氏の相手の女性は高松市観光大使を務めていた。同市の担当者は、「女性の解嘱も含め検討しています」とメディアの取材に答えている。もし相手女性だけが職を失えば、不倫報道の結果の格差をまざまざと見せつけられる。

 女性が今後も仕事の機会を失えば「103万円の壁」どころではない。一人の人生を危うくしてしまう。さらに言えば、この格差は昭和の政治家の「愛人武勇伝」と同じくらい男性優位が変わっていない証明にもなる。

「妻に𠮟られた」の既視感

 玉木氏は会見で「妻からも息子からも、叱責を受けた」と話し、妻への思いを語った。既視感があるなと思ったら、あの森喜朗氏と同じだった。2021年に東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗氏は「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と述べ、女性差別だと問題になった。批判が集まると森氏は記者にこう述べた。

「昨夜、女房にさんざん怒られた。(略)今朝は娘にも孫娘にもしかられた」

 妻に叱られたアピールをした森氏だが、このあとの「謝罪」会見では記者の追及に逆ギレ。何もわかっていないことを見せつけてしまう。玉木氏が会見で妻を語るくだりには久しぶりに森氏を思い出した。

 そして、何より政策が大事となったとしてもスキャンダルが政策に影響することはないだろうか。国民民主党は所得税が課される年収の基準を103万円から178万円に引き上げることを掲げている。

 政策実現を盾にスキャンダルから逃れたことは逆に玉木氏を意固地にすることにならないか。「178万円」で押し切れるのか、協議が順調に進むのか。その点も気になるのである。というわけで今回は政治家のスキャンダル報道の変遷について考えてみました。

(プチ鹿島)

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