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「人を殺しているようには見えない普通の良い子でした」同僚のホステスを殺して15年逃亡…“時効3週間前の女”福田和子のその後(1982年の事件)

文春オンライン / 2024年11月24日 17時0分

「人を殺しているようには見えない普通の良い子でした」同僚のホステスを殺して15年逃亡…“時効3週間前の女”福田和子のその後(1982年の事件)

かつて彼女が暮らしていた街(写真:八木澤高明)

〈 実家は売春宿、ホステスを殺して15年逃亡…「松山ホステス殺害事件」福田和子の壮絶人生(1982年の事件) 〉から続く

 時効3週間前に逮捕された、「松山ホステス殺害事件」犯人女性の福田和子(享年57)。彼女と交流した人々が明かすその人柄、そして逮捕後の彼女の人生とは…。ノンフィクション作家の八木澤高明氏の新刊『 殺め家 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

 そして取材の途中で入ったお好み焼き屋では、ひとりお好み焼きを焼いていた女性がひと言。

「哀しくなるね。切なくなるね」

 彼女の言葉からは、福田和子を犯罪者として蔑むわけではなく、ひとりの女の生き様をそう表現した。

 私は犯罪者の故郷を訪ね続けているが、このような感覚を持つ地元の人々に会ったのは初めてのことだった。それ故に、彼女がこの土地で長男と会ったことが必然性のあることに思えたのだ。

時効3週間前に逮捕

 私は福田和子の軌跡を辿りながら、彼女が逮捕された福井県福井市へと向かった。彼女はこの地のおでん屋で福田和子と感づかれ、警察に通報され、時効3週間前に逮捕されたのだった。

 福田和子が通っていたおでん屋は無くなっていたが、同じ経営者が近くで小さな飲み屋を開いていた。

 店のドアを開けると、店の女主人と目が合った。彼女は一瞬驚いた表情をした。おそらく常連ばかりの店で、新規の客などほとんど来ないのだろう。カウンターだけの店は、常連と思しき2人の客だけだった。

 私はしばし、他愛もないことを話したあと、福田和子について尋ねた。

「普通の子だったよ。ただ誰にでも愛想は良かったね。福井の人間だと言っていたけど、話し方が違うから、すぐに福井じゃないとわかったよ。嘘八百言っている感じだったよね」

 どこか後ろめたい気持ちがあるのか、女主人はすぐに福田和子の話を打ち切った。代わりに店の常連さんが福田和子との思い出を話し出した。逮捕された日も店で同席していた彼女が言った。

「あの日は暑い日だったね。彼女は頭にタオルを巻いて歌っていたよ。私達はレイ子ちゃんて呼んでいたんですよ。福井のデパートで化粧品を売っているって言ってましたよ。まさか私は人を殺しているようには見えなかった。普通の良い子でしたよ」

その後の福田和子

 どこか人も穏やかで、彼女の育った今治と似た所もある福井市、1997年7月27日、彼女は常連さんと、ひと時この店で過ごしたあと、午後3時半店の外で張り込んでいた警察に身柄を拘束される。

 流れることを宿命づけられたかのような彼女の人生はその流れを止められた逮捕により静かに幕を閉じた。2005年3月脳梗塞で倒れた彼女は和歌山市内の病院から死出の旅に出たのだった。

(八木澤 高明,高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))

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