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「既婚者よりも経済的に余裕がある」だけじゃない…末期がんの医療ジャーナリスト(59歳)だから気づけた「独身がん患者」のメリット・デメリット

文春オンライン / 2024年11月24日 6時10分

「既婚者よりも経済的に余裕がある」だけじゃない…末期がんの医療ジャーナリスト(59歳)だから気づけた「独身がん患者」のメリット・デメリット

がんが転移したあとに撮影したレントゲン ©文藝春秋

〈 「がんが転移した理由は…」59歳・医療ジャーナリストが恥を承知で「ステージ4の前立腺がん」を告白するワケ 〉から続く

「がんの闘病においては、おひとりさまならではのメリットもある」と語るのは、ベテラン医療ジャーナリストの長田昭二(おさだ・しょうじ)氏。医療情報のプロであり、かつ自身も「おひとりさまのがん患者」である氏が語った、独身者のがん患者だからこそのメリット・デメリットとは? 新刊『 末期がん「おひとりさま」でも大丈夫 』(文春新書)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

「おひとりさま」の闘病は忙しい

 超高齢社会の進展により、配偶者を失って一人で暮らす高齢者が増えている。熟年離婚も珍しいことではなくなり、そもそも結婚をせず、生涯独身という選択をする人も少なくない。

 じつは僕もそんな「おひとりさま」の一人だ。

 僕の場合、自分の意思で独身を続けているわけではない。2度も女房に逃げられた「バツ2」だ。僕のがんが見つかったのは2度目の離婚の後なので、独身になってから──ということになる。

 自分ががんになり病院通いをするようになって気付いたことがある。僕がかかる泌尿器科は男性患者が多いのだが、待合室を見渡すと夫婦連れが多く目につく。患者である夫のほうは待合室のイスに座って何するでもなく過ごしているのに対して、妻のほうが、おそらく夫の病気に関する情報が載っているのであろう本や雑誌を熱心に読み込んでいる。

 夫婦でいればそこに補完作用が働き、共に危機を乗り越えられるのかもしれないが、おひとりさまががんにかかると、すべてのことを自分で決断し、自分で処理していかなければならなくなる。「女房まかせ」ができない男の独り者ほど情けないものもない。

 治療の選択やスケジュールは医師と相談して進めるにしても、日常に起こる身の回りのこと、特に「仕事」に絡むことはきちんと整理しておかないと、いろんな人に迷惑をかけることになる。

 いまの僕はこうして原稿を書ける体力があるが、いずれは自由に体を動かすことができなくなり、寝たきりに近い状況に陥るのだろう。そうなったとき、おひとりさまはどう対処すればいいのか。これからの自分にどんな症状が出て、どのように苦しみ、どうすればその苦しみを和らげられるのか、あるいはできないのかも知っておきたい。

 また、自分が死んだ後のことも、事細かに指示しておく必要がある。財産や自宅(賃貸マンション)の後始末は家族がいれば任せられるが、独身者は自分である程度片づけてから、あるいは信頼できる人に依頼してから死ななければならない。

 このように、現代では死んでいくにも何かと事前の手続きが必要で、おひとりさまはそれらをあらかじめ済ませてから人生を終えなければならない。「病気になった」「がんになった」と悲嘆に暮れている場合ではない。いろいろと忙しいのだ。

おひとりさまならではのメリットとは?

 ただ、がんの闘病においては、おひとりさまならではのメリットもある。詳しくは本編で触れるが、病院選びや医師選びの対象範囲が広がる点は、“家族持ち”に比べて有利だ。また財産を残す必要が無ければ、人生の最終盤を経済的に余裕をもって過ごすことができるかもしれない。

 そのなかでも最大のメリットは、死によって「最愛の人との別れ」を経験しないで済む──という点に尽きるだろう。これも本編で詳しく書くが、死がもたらす最大の悲劇はこの“別離”だ。しかし、おひとりさまは事前に最愛の人との別離を済ませているか、最愛の人を持たない人生を過ごしてきたかのいずれかだ。このことが、これから死にゆく者のストレスを軽減する作用は計り知れない。

 人は家族や恋人を連れて死ぬことはできない。ならば、死ぬときはおひとりさまのほうが絶対に有利だ。一人で旅立つのは寂しいが、愛する人を悲しませずに済むと思えば我慢もできる。最愛の人と別れる辛さよりは、はるかにマシなのだ。

(長田 昭二/文春新書)

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