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「僕は最初『歌をうたうのかな?』ぐらいに思ってた」台本を書いた鈴木おさむが明かす、SMAP“謝罪放送”のウラ側

文春オンライン / 2024年11月26日 17時0分

「僕は最初『歌をうたうのかな?』ぐらいに思ってた」台本を書いた鈴木おさむが明かす、SMAP“謝罪放送”のウラ側

鈴木おさむさんと岡村靖幸さん ©文藝春秋

〈 「それまでアイドルがやらなかったことを積極的にやらせた」放送作家の鈴木おさむが語る『スマスマ』が“バケモノ番組”になったワケ 〉から続く

 この春、32年間続けた放送作家業を引退した鈴木おさむさん。同時に上梓した『もう明日が待っている』は、『SMAP×SMAP』を通してSMAPと深い信頼関係を築いてきた鈴木さんにしか書けない、知られざる国民的グループの物語が描かれていると話題を呼んだ。

 ここでは、プライベートでも鈴木さんと交流のある岡村靖幸さんの『 幸福への道 』から二人の対談の一部を抜粋して紹介。テレビ史に残る「謝罪放送」の内幕についてや、岡村さんとSMAPの共演の思い出などについて語った。(全4回の4回目/ 最初から読む )

◆◆◆

ソウギョウケは絶対だった8年前の「あのとき」

岡村 SMAPの例の会見があったじゃないですか。会見?

鈴木 謝罪放送。

岡村 あの台本をおさむさんが書きましたよね。手を貸すのは嫌だと思わなかったんですか?

鈴木 いやもう、謝罪放送になるとは思ってなかったんで。僕ら、その前日の夜に呼ばれて、「明日生放送をやることになりました」と告げられて。僕は最初「歌をうたうのかな?」ぐらいにしか思ってなかったんです。でも、会ってみるとそんな温度じゃない。とにかく、騒動をみんなで謝るから「心配かけてごめん」ということを色を変えて書くのが僕に与えられたミッションでした。

 とはいえ、メンバーそれぞれの思いはあるだろうけど、言えることは何もない。みんなで話し合って、何か言ってるようで言ってない言葉で切り抜けようと。でもそれが「ソウギョウケ」にスパーンと見抜かれた。「甘えたことを言ってんじゃないよ」と。結果、「ソウギョウケ」が入れろという言葉を入れざるを得なくなり、(稲垣)吾郎ちゃんと(草彅)剛くんにその任務を負わせてしまったんです。

岡村 おさむさんの小説(『もう明日が待っている』)にその辺のことは詳しく書いてあるけれど、テレビ史上類を見ない異様な出来事だったんでしょう? 屈辱感やテレビへの失望はなかった?

鈴木 屈するもなにも、そんなことを言ってられる状況じゃなかった。放送まであと何分というギリギリのところだったし。しかもあの頃、「ソウギョウケ」は「絶対」。テレビ局の偉い人も全員。いまだからこそ「おかしい」という感覚を抱くけど、2016年1月18日の時点では、そういうことを言える環境じゃなかった。

「あれはもともとSMAPのために作った曲だった」

岡村 それから8年の時が流れ、テレビを作る側も観る側も、ずいぶん意識が変わりましたよね。

鈴木 めちゃくちゃ変わりました。良くも悪くも変わった部分、失った部分はすごくありますよね。

岡村 そういえば。今日、僕が『スマスマ』に出たとき(14年11月放送)の写真を持ってきました(とカバンから写真を出す)。

鈴木 うわ、いい写真!

岡村 SMAP5人と僕。もう二度と撮れない写真だから写真立てに入れて部屋に飾ってて。

鈴木 岡村さんの曲をみんなで歌いましたよね。「愛はおしゃれじゃない」と「カルアミルク」と、もう1曲は……。

岡村 「彼氏になって優しくなって」。実は僕、SMAPとはそれ以前から縁があったんです。「ビバナミダ」って僕の曲があるでしょう。あれはもともとSMAPのために作った曲だったんですよ。

鈴木 ああっ!!

岡村 SMAPのディレクターの人がやって来て、「青いイナズマ」みたいなアッパーな曲を書いてくださいと。それで「ビバナミダ」を書いて渡しましたが、なぜだかボツになっちゃった。

鈴木 俺、初めて「ビバナミダ」を聴いたときにSMAPっぽい曲だなあと思ったんです。SMAPが歌ってもバッチリの曲だなって。じゃあ、歌い分けも意識したんですか?

岡村 5人のパートを考えました。

鈴木 そうだったんだ!

岡村 「ビバナミダ」はSMAPの曲にはならなかったけど、結果的に番組で僕の曲をいろいろ歌ってくれたので感無量でした。

「9歳の息子はテレビをまったく観ません」

岡村 そしておさむさんは放送作家を引退。これからは何を?

鈴木 to C(一般消費者)に向けた若手起業家のためのファンドを始めます。結局、似てるんですけどね、放送作家の仕事と。

岡村 じゃあ、鈴木おさむ以後のテレビ界はどうなるでしょう? 

鈴木 どうなるもこうなるも、新しい才能はもう入ってこないし、一縷の望みを持っていた人たちも、この1年でテレビから離れていっちゃったし。とはいえ、才能のある若いプロデューサーはいるので、映像に固執せず、テレビの枠を越えたことをやってほしいと思いますね。とにかくいまは毒にもならない番組ばかりが増えすぎ。うちの息子は全然観ないんです。

岡村 息子さんはいま何歳?

鈴木 9歳です。小学3年生。ゲームとYouTubeに明け暮れてます。うちは時間制限がないので、好きなものを好きなだけ観てます。

岡村 どんなYouTubeを?

鈴木 ありとあらゆるものを。全然面白くないコントを観てると思ったら、北朝鮮の武器ランキングを急に観始めたり。そりゃあ楽しいですよ、いろんな情報がどんどん入ってくるから。僕らがものすごく苦労しなきゃ手に入れられなかったエロ本情報も、いまはネットですぐに出てくるし(笑)。

岡村 おさむさんがやってきた膨大な仕事があるじゃないですか。そのアーカイブを観せてあげたらどうですか?

鈴木 僕が観せるより、気づいたときに自分で観ればいいかな。

岡村 じゃあ、最後に。おさむさんにとっての「幸福」とは。

鈴木 やっぱり、脳内にアドレナリンが出る瞬間に幸せを感じるなって。仕事に限らず、プライベートもそう、恋愛もそう。放送作家をやめてからすごく思います。これからもいろんなことに興奮して生きていきたいなって。

◆◆◆

 この続きは岡村靖幸さんの『 幸福への道 』でお楽しみください。

(岡村 靖幸/ライフスタイル出版)

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