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「人の世話になっておいて、おかしいやろ」助けた相手から“給料のピンハネ”を疑われたことも…それでも日本初の女ヤクザが“問題児たちの更生支援”をやめない理由

文春オンライン / 2024年11月24日 17時0分

「人の世話になっておいて、おかしいやろ」助けた相手から“給料のピンハネ”を疑われたことも…それでも日本初の女ヤクザが“問題児たちの更生支援”をやめない理由

ときには助けた相手から裏切られることも…それでも彼女が「更生支援」をやめない理由とは? ©細田忠/文藝春秋

〈 「ああ、人生……終わった」元プロボクサーに殴られ顔が真っ赤、アザだらけに…ヤバい男を更生させようとした「元女ヤクザの後悔」 〉から続く

「西村がワシの給料からピンハネしてるやろ」――ときには助けたヤクザからいわれのないピンハネを疑われたことも。それでも西村まこさんが「更生支援」をやめない理由とは?

 更生を果たし、地域住民からの信頼も厚いNPO法人「五仁會」(主な活動内容は暴力団および非行少年の更生支援など)の広報として活躍する彼女の思いを、著書『 「女ヤクザ」とよばれて ヤクザも恐れた「悪魔の子」の一代記 』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

元受刑者と同居することの大変さ

 さて、退院という日、大勢の警察官が部屋に来ました。総勢20人ほどいたのではないでしょうか。ひとりの刑事が逮捕令状を示し、「西村、殺人未遂で逮捕な」と冷静に告げ、病床の私に手錠をかけました。パトカーに乗せられ、岐阜南署に行く通過点に私の家があったので、「日用品を取ってきたい」と言いましたが、無表情の警官が放った「ダメだ」のひと言で却下。そのまま署内の独居留置場にブチ込まれました。

 ただ、幸いなことに、私は退院といってもボロ雑巾のようなありさまです。そこは警察もわかってくれ、調べも手加減してくれていたようです。

 調べでは「私はいっさい手を出していない。向こう(住まわせてあげていた男)が自殺しようとして包丁を自分の腹に向けていた」という趣旨の供述をしました。

 男のほうは初めての逮捕なので気が動転していたのか話が二転三転したらしく、信憑性に難があったようです。ただ、彼の証言は「殺される前に殺そうと思った」「でも、西村さんには悪いことをした。ここを出たら慰謝料を払いたい」とも言っていましたから、少しは反省していたのかもしれません。

 取り調べはスムーズに進み、勾留満期。結果、男側の傷害となり、罰金20万円で落ち着きました。私はパイになり、22日で留置場を出ることができました。

 この事件以降も、刑務所を出て行き場がない人や、昔のつてをたどって頼ってくる人があとを絶ちませんでした。この事件を知っている人は「まこちゃん、こないだ、ひどい目にあったから、面倒を見るのもほどほどにしなよ」と言いますが、困っている人の面前でドアを閉めるわけにもいきません。

「困ってるんだな」「かわいそうだな」と思って居候させてあげるけど、結構な割合で裏切られてきました。さすがに暴力事件はなかったですが、シャブをやったあとのポンプなんかを置いていきますから、危なくってしょうがないのです。

「ワシの給料からピンハネしてるやろ」

 これなんか刑務所を出てきた人であるあるのケースなんですが、大阪のヤクザの知り合いから電話が入り、「大阪で仕事できないから、岐阜で探したい思うとるんですわ。仕事が決まるまで置いてもらえんですか」と頼まれました。

 私も女で、すでにカタギですから、元ヤクザの男の居候には気を使います。この知り合い――山一抗争(山口組と一和会の抗争)のとき、有名になった元ヤクザ――が岐阜に来たら、すぐに解体をやっている青山さんに「仕事を探してっから、使ってやってくれ」と紹介し、翌日から出勤してもらいました。

 元ヤクザは一週間ほどすると、突然、「大阪、帰るわ」と言い出したので、私も「そう、なら帰んな」と理由を聞くことも引き止めることもしませんでした。数日後、青山さんに件の元ヤクザから電話があり、「西村がワシの給料からピンハネしてるやろ」と、えらい剣幕で文句を言われたそうです。

 私としては心外ですから、元ヤクザに電話で「お前、人の世話になっておいて、それはおかしいやろ。うちがピンハネするなら、端っからそう言うわい」と怒鳴り上げてしまいました。

それでも問題児たちを助け続ける理由

 この元ヤクザの場合も、部屋は貸して、食事もつくってあげて、ピンハネを疑われるのですから腹が立ちます。なんなら家賃としてピンハネしてもいいくらいです。さらに、仕事を世話してくれた青山さんに難癖をつけたのですから、私の顔も立ちません。

 こうした問題児が入れ代わり立ち代わり、わが家には間借り人として訪ねてくるのです。断れない自分も悪いのですが、ヤクザ時代のくせでしょうか、「ノー」とは言えない私がいるのです。

(西村 まこ/Webオリジナル(外部転載))

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