「表のミュージシャンが裏社会に寄ってきた感じ」真心ブラザーズと奥田民生が急接近した瞬間「民生さんを知って衝撃的だったのは…」
文春オンライン / 2024年11月26日 11時0分
©三浦憲治
同世代のミュージシャンとして様々な形で共演し続けた真心ブラザーズ。ふたりが奥田民生と急接近したきっかけをきくと……。(全2回の前編/ 続き を読む)
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――ユニコーンのデビューが1987年で、真心ブラザーズは89年です。民生さんに対して、同世代の仲間意識のようなものはあったんですか?
YO-KING いや、ユニコーンは表側で、こっちは裏側だからね。バンドブームでいうと、ユニコーンやジュン・スカイ・ウォーカーズが表で、下北沢は裏(笑)。しかもアルバム1枚目、2枚目あたりはアイドル的な感じだったから、正直なところ聴いてみようって気にはならなかった、あの頃は。
桜井秀俊 4枚目のアルバム『ケダモノの嵐』(90)のCD帯にさ、丸く穴が開いてて、そこから川西(幸一)さんの顔が覗いてて、矢印で「この人がドラム」って書いてあったんですよ。それを見て、あ、このバンド好きって思った(笑)。
YO-KING その辺のユーモアが出てくるのは、やっぱり3枚目の『服部』(89)ぐらいからでしょう? それまでは『PATi・PATi』とかの表紙に出てたし、同世代のバンドマンに響くようなバンドではなかったと思う。『服部』『ケダモノの嵐』あたりから、ユニコーンってカッコよさそうじゃんって、ざわついてきた印象はあります。
――民生さんとの交流が始まったのはいつごろですか?
YO-KING SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)は以前CSアーティスツと言っていて、「CSAちゃん祭り」というイベントをやってたんですよね。その辺のバンドを集めて、シャッフルしたりして。そのときの企画の打ち合わせから、だんだん話すようになって、仲よくなっていったイメージがありますけど。90年代のはじめかな。
桜井 シャッフルバンドの流れでいうと、SPARKS GO GO(スパゴー)が地元の北海道・倶知安を盛り上げる趣旨のイベントを開いたんですよ。そのときに民生さんとスパゴーと真心がシャッフルして、ポテ伊東と……なんだっけ?
――「ポテ伊東とハッピー&八熊」ですね。
桜井 え、こっちは忘れてるのに(笑)。倶知安のときはそういう名前のシャッフルバンドをやって、それ以来、民生さんが考えた企画に呼ばれるようになったんですけど、僕は言われたことをなんでもやるという、そういうプレイを毎回させられて(笑)。でもそれで気持ちが近づいたかなと。そのあと地球三兄弟をやって、さらにまた近くなって、みたいな流れですね。
「楽屋でふたりがずっと永ちゃんのものまねして(笑)」
――YO-KINGさんは民生さんやTheピーズの大木温之さん、佐藤シンイチロウさんと03年にO.P.KINGを結成しました。あれはどういう経緯だったんですか?
YO-KING 「TODAY」というイベントを主催していたときに民生くんとTheピーズを呼んで、最後にロックンロールのカバーをセッションしたんですよ。それで次の年の夏かな、チャック・ベリーが来日するとき、日本の対バンを探してるっていうので、この前のセッションバンドで出てみないかって話になったんだと思う。
民生くんとはるさんって言ったら表の代表と裏の代表みたいなもんだから、そのケミストリーはすごく面白かった。楽屋でふたりがずっと永ちゃんのものまねして歌ってたもんね(笑)。ハモってたよ、ふたり。
――ちなみにその2年後、2005年のイベントにポテ伊東とハッピー&八熊は参加するはずでしたが、トラブルからキャンセルになって、翌年にお披露目されています。
YO-KING ああ、そのとき時間がなくなったから、こんないい加減なバンドはいらねえだろうってなったんだ、たぶん(笑)。会場の床が抜けて、他の人たちも1、2曲くらいしかできなくなっちゃったから。
桜井 やったらやったで、他の人の歌をけっこう酷い替え歌にしてるから、音源に残せない(笑)。そのとき観た人しか知らないバンドです。
YO-KING そう思うと、表の奥田民生が裏社会に寄ってきた感じはあったよね。まあ、たまたま最初の印象がバンドブームの表のほうでね。一緒にやったら、中身は同じだったっていう。ユーモアの感覚も同世代で近かったし、カッコつけすぎてるのはカッコ悪いみたいな価値観は一緒だったと思うんですよね。
桜井 民生さんを知って衝撃的だったのは、こんなにダジャレばっかの人なのって(笑)。我々の裏チームでは、ダジャレってそんなになかったから。民生さんってダジャレの人なんだ、マジでおじさんじゃんっていう認識でしたよね、最初のころは。
「あれくらいですよね、我々が真面目にやったのは(笑)」
――それからみなさんの距離が近づいて、11年には真心ブラザーズ+奥田民生の名義でシングル「My Back Pages」をリリースします。
桜井 あれくらいですよね、我々が真面目にやったのは(笑)。
――で、そこから発展したかたちで、翌12年にユニット「地球三兄弟」を結成しました。民生さんが「Oしゃん」、YO-KINGさんが「スパ de SKY」、桜井さんが「THE EARTH」を名乗りましたが、誰が考えたんですか?
YO-KING スパ de SKYは自分で考えたかな。地球三兄弟っていうバンド名が最初に決まって、じゃあ名前もそれに近いノリでって。
桜井 「陸・海・空」ですよね。
YO-KING ああ、「地球を守る」っていうコンセプトだからか。
桜井 僕は自分で「THE EARTH」って決めた記憶はないから、Oしゃんが考えたんだと思う。たぶん拒否権はなかったはず(笑)。
――3人で合宿してアルバムをレコーディングしたんですよね?
YO-KING 北海道ですね、たしか。いかにレコーディングを短く済ませて遊ぶかっていう。
桜井 バーベキューをやる日を最初に決めてね。
YO-KING この日はバーベキュー、この日は寿司ってご飯のシフトを決めて、次にゴルフの日を決めて、その合間にレコーディングみたいな(笑)。ここだけの話ですけど。
――レコーディングの雰囲気はどんなものでしたか?
YO-KING そこはね、俺にひとつアイデアがあって、Oしゃんが作ってきた曲は俺が歌って、俺が作った曲はOしゃんが歌うっていうのはどうよ、って提案したのを覚えてる。桜井さんはメンバーじゃないので……いや、メンバーか。
桜井 ……つらい(笑)。
YO-KING つらいね、つらいよね(笑)。で、桜井さんはふたりを使った曲を自由に作るっていうコンセプトでやれば、有機的に絡めるかなと思って提案したんですよ。最終的に1、2曲足りなくて、それぞれ部屋にこもって作ったのを覚えてますね。みんなひょいひょいってできちゃうから。
桜井が同じ作り手として奥田民生に感じたこと
――そもそも「My Back Pages」のカップリング曲「絵」を3人で初めて共作して、そのときの手応えから地球三兄弟へとつながったはずですよね。
桜井 たしかにあのときの経験があって、これならいくらでも曲ができるぞっていう感じがしたんですね。YO-KINGさんがAメロを書いて、それを受けて僕がBメロを書いて、Oしゃんに最後を書いてくれって。とっかかりがあれば、問題なく曲を作れちゃう人たちなので。
――曲作りのスタイルはもちろん人それぞれでしょうが、民生さんの特徴ってなにかあるんですか?
YO-KING なんだろうね?
桜井 すごくキャッチーなメロディーとか、書こうと思えば書けるんでしょうけど、あえて外してくるみたいなのは感じました。「絵」のときも、サビの部分なのに「これがサビ?」っていう。ドラマチックにしないで、わざと出だしのメロディーみたいなものを持ってくるんですよね。
でも反復させたり、サビであるべき場所にあったりすることで、これがサビなんだぜって。寸止め感というか、外連味を出さないというか、そのこだわりや信念があるんじゃないかって感じました。話したことはないですけど、なんかそういう印象を受けるんですね、同じ作り手として。
撮影 三浦憲治
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〈 「かまってちゃんをかわいく出せる人。愛らしい人なんです」真心ブラザーズが考える奥田民生が誰からも好かれる理由 〉へ続く
(門間 雄介)
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