「かまってちゃんをかわいく出せる人。愛らしい人なんです」真心ブラザーズが考える奥田民生が誰からも好かれる理由
文春オンライン / 2024年11月26日 11時0分
©三浦憲治
〈 「表のミュージシャンが裏社会に寄ってきた感じ」真心ブラザーズと奥田民生が急接近した瞬間「民生さんを知って衝撃的だったのは…」 〉から続く
奥田民生はなぜ多くのミュージシャン、俳優たちから慕われるのだろうか? 30年以上親交のある真心ブラザーズのふたりが考えるその理由とは……。(全2回の後編/ 前編 を読む)
◆◆◆
――普段は民生さんと音楽の話をしますか?
桜井秀俊 そんなにしない感じかな。する人とはするんですけどね。
――じゃあ食事したり、飲んだりするときはどんな話をするんですか?
桜井 やめたほうがいいなと思うんですけど、民生さんの癖はごはん屋さんに行って別の店の話をする(笑)。あそこのあれは美味しいみたいな話はやめたほうがいいんじゃないかって。しかもまた声が通るんですよ。いま目の前にある美味しいものをいただこうぜって思いますね。
YO-KING 詳しいからね、やっぱりラーメンとかカレーとか。同世代のミュージシャンで、どこどこのなにが美味いぞって情報交換し合って、当時イベンターに煙たがられてましたから。地元のイベンターより詳しいので、あの人は嫌だって(笑)。そういう意味では、生きるとか楽しむとかってことに、すごく貪欲な人だと思う。
桜井 そうだね。
YO-KING ちゃんと自分で情報を収集するし、興味のあることにはもう徹底して詳しい。
――桜井さんは以前、民生さんを「脱力の天才」と評していたことがありました。
桜井 そうですね。自分の肩の力を抜くことのみならず、なにかしら仕事を負わされそうになったとき、うまく避ける術を知ってるというかね。暗い雲が近寄ってくるときに、逃げる嗅覚みたいなものを持ってる人なんだろうなと思います。すうっといなくなる感じ。真正面から受け止めるってことをたぶんしない。
人気者だし、たとえばマネージャーから「そろそろソロをやりましょうよ」みたいなことを言われるんだけど、はぐらかすんです。ソロで全部自分が背負うより、それならポテ伊東をやってたいみたいな。スポットライトを浴びるより、フィクサーでいるほうが好きなのかな。麻生太郎的な(笑)。よくわかんないですけど。ガキ大将っていうイメージを僕は持ってますね。
――かたやYO-KINGさんは、民生さんについて「普通にいい人」「明るい人」って。
YO-KING そうね、ステージだとちょっとぶっきらぼうなところがあるけど、普通にいい人ですよ(笑)。楽しい人。
これ、言っていいのかな。民生さんは……
――近寄りがたいみたいなのはないんですか?
YO-KING 僕はないかな。知らない人がそう思うのも無理はないと思うけど。まあ照れ屋でもあるから。
桜井 そう、照れ屋なところをちょっと近寄りがたいととらえる人はいるかもしれない。シャイなガキ大将なんですよ。
――YO-KINGさんはカーリングシトーンズのメンバーでもありますが、民生さんってバンドやユニットを組むのが好きですよね。なんでだと思いますか?
YO-KING それはさっき桜井さんが言われた、ひとりで全部背負うのが面倒くさいっていう、それがいちばんじゃない?(笑)。あとまあ、人とやるのはやっぱり楽しいし。とくに同世代の、同じものを見ながら成長してきた人たちとやるのって、話も速いし、楽しいんじゃないですかね。ひとりで全部やるよりは。
――ほかにも民生さんについて、いろいろなことをご存知だと思いますが。
桜井 これ、言っていいのかな。具体的な数はあれとして、民生さんはギターをたくさん持ちすぎだと思う(笑)。数を聞いて、ギョッとしたことがあります。これから何百年も生きるわけじゃないんだから、もうちょっと整理したほうがいいんじゃないかって。
そういうモノに固執する昭和感っていうか、箱物行政は考え直してもいいんじゃないかと思います。
――民生さんはYO-KINGさんの2歳上、桜井さんの3歳上にあたりますね。
YO-KING でもあの体力とか、元気さはすごいですよね。
桜井 そのわりに会うといつもどこが痛い、ここが痛いって言ってて。だから自分もあの歳になると、いろいろ痛くなるのかなと思ってたらそうでもない(笑)。ただお菓子をバリバリ食ったりしてるのに元気なんですよね。エネルギーがあるってことなのかな。
YO-KING あと、ひとりっ子のかまってちゃん体質ではありますよね。
――そうなんですか?
YO-KING すぐ痛いとか言うのも、きっとね。
桜井 かまってほしくて痛いって言ってるの?(笑) 本当に痛いわけではなく?
YO-KING いや、本当に痛いんでしょうけど、みんなに知ってほしいんじゃない?
YO-KINGが考える奥田民生が愛される理由
――言う人と言わない人がいますよね。
YO-KING そうそう。
桜井 普通は言わないよね、いい歳になると。
YO-KING でもそれをポップに言って、楽しい話題にするようなテクもあるから。ひとりっ子のかまってちゃんをかわいく出せる人。愛らしい人なんです。人気の根源はそのあたりにあるのかもしれない。
――そういう人間的な魅力の一方で、ミュージシャンとしての魅力はどこにありますか?
桜井 歌もギターも太いというか、こねないというか。小手先でなんとかするのは美学に反するんでしょうね。持ってるいちばんいい音を、ドーンとまっすぐ届けるみたいな。なぜエレキギターを持ってるかといえば、そういうドーンとした音楽をやりたいからだ、みたいな。
その太さは、その辺の人じゃちょっと真似できない気がします。このあいだ地球三兄弟でフェスに出たとき、久しぶりに民生さんが飲まないで――って言ってもビール1杯くらいは飲んで――ギターを弾いたら、火が出るようなものすごいギターを弾いて。「飲まないとすごいね」って、ちょっと失礼なこと言っちゃいました(笑)。
YO-KING 僕ね、上手さっていうものにあんまり興味がないっていうか、好きじゃないのが多いんですけど、民生くんの上手さは好きな上手さなんです。上手さだけを追求したら、本当はもっと上手いことできるんだろうけど、そこには行かずに、下手な味のカッコよさも残してる。
落語でも、上手いだけの落語ってやっぱり面白くなくて、ちょっとセリフが出てこないときにどう対処するかみたいな、それが面白い名人っているじゃないですか。志ん生じゃないけど。ああいうのって、AIの時代になっても機械が絶対出せない部分だから。
上手くない部分を嫌味なく出すっていうのが民生くんの才能ですよね。プロで30年、40年やってる人なら、上手いのが当たり前だし、民生くんはそこから先の味の部分で勝負してる。だから一緒にやってて楽しいですよね。
楽しみながら音楽を長く続けられる理由は……?
――民生さんはソロ30周年、おふたりはデビュー35周年を迎えましたが、みなさんずっと音楽を楽しんでますよね。
YO-KING そんなに根を詰めてやってないからね。漫画を読んだり、映画を観たり、いろんな楽しいことをしながら、レコーディングして、ツアーをして。ゴルフもやるし、スキーもやる。民生くんもそうやって音楽以外のことで遊んでるから、ずっと続くんじゃないかと思いますよ。他のことでめちゃくちゃ遊んでると、ギター弾きてえ、歌いてえって思うもんね。そこに持っていくのがすごく大事なんです、飢餓状態に。
――やりすぎないことが大事だ、と。
桜井 僕はもうちょっとやってもいいですけど(笑)。そこは違う感じがちょっとあるなって。
――価値観の違うふたりだからこそ、真心ブラザーズは長く続いているのかもしれませんね。
YO-KING もちろん。みんなそれぞれだから。ほっとく力も大事ですよ。人は人、俺は俺って。自分の場合は、音楽で食ってるからには芸人っていうのかな。これで稼いでなかったら芸術家って言ってもいいかもしれないけど、お客さんを喜ばして、それでお金をいただいてる以上、自分は音楽芸人だと思ってて、喜んでもらうことが自分の喜びだと感じるように年々変わってきた。
昔は自分が楽しけりゃいいと思ってたし、いまも自分が楽しむことが最上位にあるんだけど、お客さんを楽しませるとか、友だちを楽しませるとか、一緒に音を出してるミュージシャンを楽しませるとか、それが無性に面白くなってるんですよ。音楽をやる楽しさの種類が変わってきた、だから飽きない。なんならもうちょっと売れることで、事務所を喜ばすみたいな(笑)。そこが長く続けられる、ひとつの柱になってますよね。
撮影 三浦憲治
◆◆◆
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《奥田民生ソロ30周年記念写真集特設サイト》
https://bunshun.jp/feature/ot30th
(門間 雄介)
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