“育ての親”プロデューサーの逮捕、「洗脳されていた」発言の真意は…aiko(49)がデビュー当時から“欠かさず続けていること”
文春オンライン / 2024年11月22日 11時10分
「相思相愛」(ポニーキャニオン)
〈 aiko49歳に 「テレビいっぱい出ろとか言うのやめてください」→スタッフ全員が下を向き、その後…20代の頃にショックを受けた“出来事”とは? 〉から続く
11月22日に49歳の誕生日を迎えたaiko。メジャーデビューから26年が経った今もなおヒット曲を生み出しつづけ、年末には5年ぶり15回目となる紅白への出場も決まっている。
デビュー当時から変わらない制作スタイルや、ライブに懸ける熱意とは。昨年はインディーズ時代から仕事をしてきた“育ての親”の元プロデューサーが逮捕され、裁判に出廷したaikoは「すべてにおいて洗脳されていた」と証言した。その真意は……。(全2回の2回目/ はじめから読む )
◆◆◆
aikoのライブは、特徴的なコール&レスポンスが恒例となっていたり、観客から集めた言葉を即興で詞にして歌ったりと、ステージと客席が双方向なやりとりにより盛り上がることでファンのあいだではおなじみである。ライブが終わってから、そのまま宿泊先のホテルに戻って曲をつくることもよくあるようだ。そこでは、その日《会場にいたひとりひとりと一対一で繋がっていることを信じてがんばろうと思いながらいつも歌詞を書いています。その思いは、ライブを重ねるたびに強くなっていくんです》という(『SWITCH』2013年9月号)。
「ひとりひとりと一対一で繋がっている」という思いはaikoの音楽活動のベースとなっている。それは次の発言からもあきらかだ。
《歌については、歌を歌う以上、聴いてくれるその人のそばにいたいとずっと思ってきました。その人のために一生歌いたい、というか。パーティーでみんなで聴く歌じゃなくて、学校帰りや会社帰りに電車の中で聴いてくれる歌を書こうって思って、ずっと今も続けています。私自身がそうやって音楽を聴いてきたし、支えられてきたので》(『別冊カドカワ 総力特集 aiko』KADOKAWA、2014年)
部屋にこもってラジオばかり聴いていた
そこにはラジオを聴いてきた体験も大きいようだ。小学生のころ家庭の事情から親戚の家に預けられたが、生活習慣になじめないので、高校を卒業するぐらいまで家にいるときはずっと部屋にこもってラジオばかり聴いていたという。
デビュー前の1995年にティーンズ・ミュージック・フェスティバルで優勝した直後には、エフエム大阪のプロデューサーから誘われて局へ番組見学に行ったのをきっかけに、自身でも深夜番組を担当するようになる。これが人気を集めたことから、他局でも出演番組を持ち、関西地区ではすっかり“ラジオの女の子”として知られるようになっていた。
自ら大阪のレコード店をまわった
メジャーデビューしたときには、彼女が出演していたラジオ各局でDJ仲間が曲をヘビーローテーションになるほどかけてくれた。 #1 に記したとおりデビューシングル「あした」が大阪のレコード店で1位になったのも、かつてインディーズ時代に彼女自ら店をまわり、CDを置かせてもらうなかで顔見知りになった店員たちが「あのaikoちゃんがデビューしたんやから」と自主的にコーナーをつくってプッシュしてくれたおかげであった(『日経エンタテインメント!』2000年5月号)。
ただ、彼女がデビューした1998年をピークとして、音楽業界全体でのCD売り上げは徐々に落ちていった。aikoも自分の曲が思うように売れなくなり、周囲の人たちはそれを慮って不況だからしょうがないと言ってくれるが、それでも売れている曲はあると思い、かえって落ち込む……という悪循環に陥っていたらしい。そんななかで救いとなったのがやはりライブだった。《こんなこと直接話したことはないけれど、デビュー以来ずっと一緒にやっているプロデューサーは、私にライブをやらせることで上手く心のバランスが取れるようにしてくれていると思うんです》とは、10年ほど前の彼女の発言だ(『SWITCH』2013年9月号)。
プロデューサーが逮捕・起訴され…
そのプロデューサーはaikoがデビューして以来その活動全般を取り仕切ってきた。だが、2019年、レコード会社の社員でありながら彼女の個人事務所の役員も務めていたことが発覚し、会社から背任の疑いを持たれ、論旨退職の懲戒処分となった。さらに昨年(2023年)には、今度は彼女の事務所に対する背任容疑から逮捕・起訴されている。容疑の内容はツアーグッズの仕入れ価格の水増し請求と、もし事実とすれば、ファンとの交流を何より大事にしてきたaikoにとっては最大の裏切りであり、ショックだったに違いない。
「すべてにおいて洗脳されていた」
その裁判にはaikoも今年6月に検察側の証人として出廷し、被告である元プロデューサーから「すべてにおいて洗脳されていた」と証言したことが大きく報じられた。彼女の言う「洗脳」とは、「君はインディーズでずっと音楽をやる人間だけど、僕がメジャーに引き上げちゃったんだよね」と言われたりして、元プロデューサーがいないとダメなんだと思わされていたことを指した。
だが、法廷で彼女は、「音楽を続けることが目標であり夢だった。被告(実際の発言では実名)がいなくなって、前にも増して音楽が楽しいです」とも述べている(以上、裁判での発言は「朝日新聞デジタル」2024年9月4日配信より引用)。実際、そのとおりなのだろう。2021年のアルバム『どうしたって伝えられないから』以降、自身で作品をプロデュースするようになってからというもの、シングル(配信限定を含む)のリリースのペースが速まっているのはその何よりの証しといえる。
今年8月には16枚目となるアルバム『残心残暑』をリリースしたが、そのボーカル録りをほぼ終えた翌日に応えた取材では、《実はまた、新しい曲を作り始めました(笑)》と言うのでインタビュアーを驚かせた(『音楽と人』2024年9月号)。2020年に結婚したが(公表したのは翌年)、曲は夫が寝ているあいだにつくっていることもあり、生活は以前とさほど変わっていないという。それにしても、あいかわらず旺盛な曲づくりへの意欲には感嘆させられる。
きっと、ずっと、満足することはない
そんなaikoは10年後、20年後と、将来的に何を目標としているのだろうか。昨年、これについて問われた彼女は次のように答えている。
《歌手になりたいですね(笑)。自分の思い描くこんなふうに歌いたいっていうところまではたどり着けてないんです。ライブをするとかテレビに出るっていう子供の頃の夢は叶ったけど、それをつづけるためにはもっと頑張らなきゃ。だからどんなときも『もっと』です。きっと、ずっと、満足することはないんでしょうね》(『anan』2023年3月22日号)
すでに四半世紀以上ものキャリアを持ちながら、この志の高さ。「あたしはあなたにはなれない」とは彼女が今年リリースしたシングル「相思相愛」のフレーズだが、いまなお曲づくりを日々欠かさず続けているのを見ると、誰もaikoのようにはなれないと思わせる。
(近藤 正高)
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