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ホルモン焼きの人気チェーンがなぜ立ち食いそば屋を? 戸越銀座の「立喰いそば でん」で食べた“丸チョウそば”に衝撃を受けた

文春オンライン / 2024年12月3日 11時0分

ホルモン焼きの人気チェーンがなぜ立ち食いそば屋を? 戸越銀座の「立喰いそば でん」で食べた“丸チョウそば”に衝撃を受けた

店は戸越銀座駅下り側改札のすぐとなりのビルの1階

 “東日本一長い商店街”で知られる品川区の戸越銀座商店街には長い間、立ち食いそば屋がなかった。街そば屋も多くはない。不思議である。そんな商店街の一等地、東急池上線戸越銀座駅すぐに11月11日、立ち食いそば屋がオープンした。その店名は「立喰いそば でん」。さっそく開店当日の午前8時半過ぎに訪問してみた。

ガラスケースにうまそうな天ぷらがずらり

 戸越銀座駅の下り側改札すぐとなりのビル1階に店はあった。外に面したところにもカウンターが用意されている。店内をのぞくとお客さんがワンサカいてびっくり。少ししてから入店してみた。間口は狭いが中に入ると意外と広い。10人位は入れそうだ。カウンター上のガラスケースには、すごい種類のうまそうな天ぷらが並んでいる。

 券売機をみるとその一番上左が「丸チョウそば」(880円)とある。丸チョウはホルモン屋などで見かける牛の小腸だ。天ぷらも頼みたいがまずはそれを選択した。というのも、こちらの店は都営地下鉄戸越駅から少し東に商店街を歩いて路地を左に入ったところにある「もつ焼きでん」の経営だと事前に聞いていたからだ。

「丸チョウそば」は大衆そば・立ち食いそば屋でも、もちろん老舗そば屋でも街そば屋でも出会ったことのないオリジナルのメニューである。

素晴らしい姿の「丸チョウそば」

 食券を渡すと、さとりん店長が「ハーーイ、ちょっと待ってくださいねえ」と元気に対応してくれた。厨房エリアには男性店員が3名、女性店員が2名と大所帯だ。さとりん店長は「もつ焼きでん戸越銀座店」や「もつ焼きでん蒲田店」にもいたそうで流れるような接客だ。

 すぐに「丸チョウそば」が登場した。まずその姿がすばらしい。国産ネギがざくっとのっている。その下には大きめにカットした丸チョウが鎮座している。そしてそばはやや黒めのむらめん謹製の田舎そば。つゆは程よい色合い。まずつゆをひとくち。程よい返しにコクのある出汁が感じられる。あご30%、かつお30%、さば20%、煮干し20%で出汁を作っているという。それに丸チョウの雑味のない脂の甘味が加わっている。

 ギャンブル系立ち食いそば屋などでみる「もつ煮込みそば」とはまた違う洗練された味である。そして丸チョウを食べてみる。これはいい部位を仕入れているのだろう。脂身が厚くしかも大きい。そばもこの味にマッチしていて一体感がすばらしい。朝からすごいうまいそばを食べてしまった。

店長おススメのオリジナル天ぷらがずらり

 するとさとりん店長が「うちは天ぷらがおススメ。奇想天外なものもあるのよ」とたたみかけてきた。それではそのラインナップを紹介しよう。

「かき揚げ」、「ごぼう人参天」、「春菊天」、「ちくわ天」、「ソーセージ天」、「ゲソ天」、「えのき天」、「紅しょうが天」、「ハムキャベツ天」、そして「カリカリポテト天」、「ながも天」、「米揚天」、それに日替わりの「本日の天ぷら」というのも提供しているそうだ。あまり見聞きしたことのない天ぷらが多い。

「カリカリポテト天」はじゃがいもを麺線状にカットしてそのまま揚げたもの。ふわっとした触感がたまらないそうだ。「ながも天」は新潟県佐渡島でとれるもずくのような海藻を天ぷらにしたもの。

 そしてさとりん店長がおススメというのが「米揚天」だ。さっそく追加発注してみた。別皿で到着した姿はなんだかわからない。箸で持ち上げるとやたら重たい。恐る恐るひとくち食べてみると、なんと紅しょうが味のおにぎりを天ぷらにしたものだった。「つゆにつけて食べてみて」と店長がいうのでやってみると、これがやたらにうまいのだ。おにぎりの新しい食べ方である。

 しかし、1日では天ぷらたちを食べることができないなあと伝えると、「それじゃあ毎日食べに来てね」と店長の策にまんまとハマってしまった。

店を出ると伝説のもつ焼き経営者が…

 さて、店の外に出ると白いTシャツを着たキャラの濃い店関係者が業者さんと打ち合わせをしていた。実はその方が「でん」の社長、内田克彦さんだった。急遽あいさつし取材することにしたのだが、これがまたすごい人だった。

 内田克彦さんは佐渡島出身の61歳。株式会社田(でん)の代表取締役である。もつ焼きでんは戸越銀座店以外にも水道橋店、中目黒店、西小山店、蒲田店、アメ横店、佐渡島の佐渡金井店と7店舗を展開している。まさに伝説のスゴ腕経営者だ。

 立身出世の経歴は飲食業界でも有名で、プロフィールの特技には「豚の内臓の処理ともつ焼き」と記すほどの「もつオタク」である。ロックバンドのギターボーカルとしての活動も長く、YouTubeにもたくさん動画をアップしている。とにかくエネルギッシュなロッカーである。

とにかくオジサンの集まる店をやりたい

 しかしそんな達人がなぜ「立喰いそば でん」を始めたのだろうか。質問したところ、内田社長はすごい勢いでその想いを話し出した。要約すると以下の通りだ。

 内田社長は19歳で佐渡島から上京し、いろいろな飲食業界を経験し研鑽を積んできた。たくさんの人間との繋がりも得て飲食店としての独立を志していった。そして「もつ焼きでん」をスタートしたのが2012年。ようやくその活動が華開いた。一方で若い頃から立ち食いそば屋が大好きで、いつもおいしい店に行ってはその味を堪能していたという。つまり完全な「立ち食いそばオタク」だ。「とにかくオジサンの集まる店が好きで、もつ焼き屋を始めたのもそんなところから。立ち食いそば屋もやりたくてたまらなかった」と内田社長はまくしたてる。

もつ焼き屋と立ち食いそば屋を両方やりたい

 内田社長は「もつ焼きでん」を経営しながら、大好きな立ち食いそば屋を作るアイデアをずっとあたためていた。そして2020年頃に立ち上げを計画していたのだが、コロナ禍で一旦保留。そして、2024年に遂にその時が来たというわけである。それまで実食で蓄積してきた立ち食いそばのノウハウと「もつ焼きでん」の実績を合体するチャンスが来たわけである。

 内田社長によれば、そばの出汁に使っているあごは「佐渡島でとれたものを、実家ではらわたなどをとって送ってもらっている」そうだ。「ながも」も佐渡島の特産だ。メニューにある理由がやっと分かった。もちろん丸チョウは芝浦の食肉市場から仕入れた新鮮なデイゼロのもの(解体したその日のもの)を吟味して仕込んでいる。この辺りは「もつ焼きでん」のノウハウを利用したすばらしい連携だ。

 内田社長は「自分はあと5店立ち食いそば屋を出して、ハワイのワイキキにも店を出したい。そうしたらロックバンドの活動にも弾みがつく」とたたみかけるように30分間以上も話をしてくれた。

4日連続で実食した結果...

 それでは最後に伝説の漢の余韻が残るオープン日から4日連続で食べた天ぷらのメニューを紹介しよう。

「カリカリポテトそば」はポテトがふわっとした触感で、つゆにつけるとまた食感が変わって面白い。これも他ではみないオリジナルメニューだ。

「かき揚げそば」は一番人気だとか。油切れのよいかき揚げはサクッと揚がっていて秀逸である。「春菊天そば」はカリっとしたナイスな春菊天がのる。

「ゲソ天そば」はげそがゴロゴロ入った天ぷらがのる人気メニュー。「ながも天そば」はまさに佐渡島の味だ。つゆになじむと、とろみが出てくる。食物繊維が多そうだ。その天ぷらの実によい出来具合である。ご馳走様でした。

 内田社長はすごい熱気の漢だった。しかも立ち食いそばオタクの匂いもある。親近感が増すばかりである。さとりん店長も他スタッフも奮闘中だ。戸越銀座商店街は土日になれば飲み歩き企画が常時行われている。週末にまたぷらっと立ち寄ってみたいすてきな店だ。次は「ハムキャベ天そば」でも食べることにしよう。

INFORMATION

立喰いそば でん

住所:東京都品川区平塚1-5-9

営業時間:月~金7:00~21:00
 土日祝 8:30~16:00

(坂崎 仁紀)

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