《300万円を荒稼ぎした女性も》転売ヤーの“次なる標的”に選ばれた「羽生結弦グッズ」の悲劇
文春オンライン / 2024年12月2日 11時0分
転売ヤーが羽生結弦グッズに目をつけた理由とは? ©getty
転売ヤーが商材にするものといえば「PS5」や「ガンプラ」などを思い浮かべるが、実は日本を代表するフィギュアスケーター「羽生結弦」グッズもその標的になっていたことはご存知だろうか。ここでは羽生結弦グッズを中心に狙う「ある中国人女性L」の転売ビジネスに密着。300万円を荒稼ぎしたその手口とは? ライターの奥窪優木氏の新刊『 転売ヤー 闇の経済学 』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
狙われた「羽生グッズ」
転売のターゲットになるのは、PS5のようなメジャー商品ばかりではない。一部の層で熱烈な需要がある、いわゆる「ニッチ商品」こそ、転売によって大きな利ザヤを得ることができる。
“柚子”グッズもそのひとつだ。といっても柑橘類ではない。柚子とはフィギュアスケーターの羽生結弦の、中国での愛称だ。
彼が中国で人気者になった理由については諸説あるが、きっかけのひとつとされるのは2017年にヘルシンキで行われた世界選手権だ。入賞者の写真撮影の際、優勝した羽生は3位の中国人選手が持つ中国国旗が裏返しになっていることに気づき、直すのを手伝った。その映像が中国のネット上で広がったことで、好感度を一気に上げたといわれている。2022年の北京五輪前には、彼の動向が中国のSNS「微博(ウェイボー」でたびたびトレンド入りするほどの注目ぶりだった。
そして迎えた2022年の北京五輪。2014年のソチ、2018年の平昌と、2大会連続で金メダルを獲得した羽生だったが、4位に終わる。しかし、羽生の中国での人気は衰えるばかりか、ますます高まったようだった。
そんなタイミングで開催されたのが、「羽生結弦展2022」だ。羽生の写真や衣装、獲得したメダルなどを展示するイベントで、2022年4月から5ヶ月間にわたり、全国6ヶ所を巡業するものだった。
もちろん日本国内でも羽生人気は相当のもので、熱狂的なファンたちにとって、この展覧会はビッグイベントだった。展示内容だけでなく、会場内で販売されるという限定グッズも、垂涎の的だった。
2018年の平昌大会の直後にも、「応援ありがとうございます!羽生結弦展」なる展覧会が開催された。その際には、多数の転売ヤーが会場に詰めかけていたことが、SNSなどで報告されている。フリマサイトでも、定価800円台の展覧会限定販売のオリジナルフィギュアの4種組み合わせが、会場配布のチラシ付きで5万5000円で出品されるなど、転売ヤーの暗躍ぶりがうかがえた。
今回は、コロナ禍の真っただ中で、人数制限が実施され、入場には公式サイトでの事前予約が必要になった。会場の日本橋髙島屋では、開催期間の20日間、朝から夜まで15分刻みで予約枠が設定され、開幕の3日前には、すべて予約済みとなっていた。
羽生グッズを買い漁る「中国人女性L」
その限られた予約枠を手にしたのは、純粋な羽生ファンだけではなかったようだ。
日本橋髙島屋での羽生展の最終日、入場のための受付へと続く日本人マダムたちに紛れ、一人の中国人女性の姿があった。
在日中国人のL(30代)。アニメ関連グッズからアパレルブランドの限定商品など幅広いジャンルの転売を行っている。
L自身は、フィギュアスケートにも羽生にも全く興味がない。羽生グッズに目を付けたのは“マーケティング”の結果だった。
中国のSNS・微博には『超話』という機能がある。趣味や嗜好、悩みなど、ありとあらゆるテーマごとにコミュニティが作られており、参加者は自由に書き込みすることができる。Lはかねてから、このコミュニティを転売ビジネスのマーケティングに利用している。アニメやアパレルブランド新商品の販売情報をいち早く得ることができ、またどのくらいの人がその商品に興味を持っているか、需要の規模も手に取るようにわかるからだ。
北京五輪直後、Lは羽生結弦のコミュニティに150万人もの参加者がいることを知り、金の匂いを嗅ぎ取った。そして羽生結弦展の開催や、限定グッズが販売されることもそのコミュニティ内で知ったのだ。
〈 仕入れ額は600万円、すべて売りさばいたときの利益は…日本で「200点の羽生結弦グッズ」を買い漁った中国人に見た「転売ビジネスのからくり」 〉へ続く
(奥窪 優木/Webオリジナル(外部転載))
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