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仕入れ額は600万円、すべて売りさばいたときの利益は…日本で「200点の羽生結弦グッズ」を買い漁った中国人に見た「転売ビジネスのからくり」

文春オンライン / 2024年12月2日 11時0分

仕入れ額は600万円、すべて売りさばいたときの利益は…日本で「200点の羽生結弦グッズ」を買い漁った中国人に見た「転売ビジネスのからくり」

「羽生結弦グッズ」を商材とする転売ヤーの儲け事情とは? ©getty

〈 《300万円を荒稼ぎした女性も》転売ヤーの“次なる標的”に選ばれた「羽生結弦グッズ」の悲劇 〉から続く

 日本だけでなく、中国でも人気を集めるフィギュアスケーターの羽生結弦さん。なかにはその人気を利用して、グッズの高額転売を行う輩も…。ここでは羽生グッズを商材とする、在日中国人女性Lの「転売ビジネス事情」に密着。ライターの奥窪優木氏の新刊『 転売ヤー 闇の経済学 』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

「転売ヤー対策」をすり抜ける裏技

 彼女は、日本橋髙島屋で同展が開催されていた20日間、ほぼ毎日足を運んだ。一日複数回、入場した日もあった。

 事前予約のルールでは「全日程を通し予約は1人1枠まで」「同一のお客様による複数の予約が判明した場合、全ての予約を無効にする」などの制約があった。

 しかしLは、予約時にメールアドレスを使い分けることで、この制約を易々と突破していた。といっても、Lはそれほど大量のメールアドレスを持っているわけではない。彼女が使ったのはある「裏技」だ。

 それは、ひとつのgmailアドレスの、@マーク以前の部分に適当に「ドット」を入れることで、予約システムに「別のアドレス」と誤認させる、というものだ。

 例えば、「abcdef@gmail.com」というメールアドレスを持っていた場合、「a.bcdef@gmail.com」、「ab.cdef@gmail.com」、「abc.def@gmail.com」というメールアドレスを予約フォームに入力する。すると、それぞれ別のメールアドレスとして認識されるのだ。

 ところがそれら宛に送信されるメールはすべて「abcdef@gmail.com」のアカウントで受信することができる。

 近年、転売ヤー対策として事前予約や事前登録を求められることも多いが、この方法を使えば、多くの場合、複数名義で予約を取ることが可能なのだ。

 名義は、念のためそれぞれ異なる偽名で予約していた。しかし、会場では予約時に発行されたQRコードを提示して入場するだけで、身分証の確認などはなかった。

 中へ入るとLは展示物には目もくれず、物販コーナーに直行する。

「転売行為はお控えください」。壁にそう張り紙がされたその場所で、彼女は展覧会写真集やトートバッグやストラップ付きフィギュアなどをどんどんと買い物かごへと放り込んでいく。一見、手当たり次第に見えるが、実は同じ商品を5点ずつ選んでいる。同一商品の購入は、一人当たり5点までに限定されているからだ。他の客からは冷たい視線が刺さる。

 入場するたびにこの調子で大量購入しているLは、何人かの店員の顔を把握している。特に転売行為について釘を刺すようなことを言われたことはない。

 この展覧会に転売目的で来場している客は、彼女だけではなかった。Lはこれまでに、日本人の転売ヤーとみられる来場者も何度も目撃していた。先ほども、過去に限定品の販売会場で何度か顔を合わせている中国人と出くわしたばかりだ。

羽生グッズ転売で300万円の儲けに

 この日購入したのは、約200点〆て23万円超。最終日で品切れの商品もあったため、少な目だ。Lがこの展覧会のグッズ売り場での「仕入れ」に費やした金額は、600万円を超えている。

 日本国内では、Lのような転売ヤーの存在に業を煮やした羽生ファンたちは、Twitter上で転売品の購入を控えるよう呼びかけあっていた。また、同展の限定グッズを高値で出品したフリマサイトのアカウントが、SNS上で晒されるなどということも行われていた。

 確かにLには中国という国外の売り先がある。しかし総額600万円分ものこまごました雑貨がそれほど売れるものなのか……。

 結果から言うと、彼女は、20日間で仕入れた羽生グッズを2ヶ月あまりで全て売りさばいた。売上の総額は約800万円。単純計算で200万円を儲けたことになる。しかも彼女は、日本橋髙島屋の後に行われた名古屋と大阪での展覧会にも足を運んで仕入れた約300万円分も完売し、400万円を売り上げた。東京分と合わせて計300万円の儲けである。

 Lがこれだけの儲けを出した背景には、“生配信”がある。微博で羽生関連商品に商機があると判断した後、彼の情報を配信するアカウントを中国の若い女性に人気のSNS・小紅書(シャオホンスゥ)で開設。以前から、日本のメディアが取り上げる羽生関連の情報を翻訳して投稿して地道にフォロワーを獲得していった。同時に、羽生特集を組んだ雑誌や、彼の写真が使用されている企業の販促グッズの転売も行っていたのだ。

(奥窪 優木/Webオリジナル(外部転載))

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