坂本勇人(35)は5億円、田中将大(36)は“実質戦力外”…貢献度もスキャンダルも似ている2人の明暗を分けた「意外な要素」とは
文春オンライン / 2024年12月2日 7時0分
1億減とはいえ年俸5億円の厚遇を受けた坂本勇人 ©時事通信社
日本球界で一時代を築いた同学年の2選手が、来季の契約で残酷なまでのコントラストを描いた。楽天の田中将大投手(36)は11月24日、同球団と契約を更新せず他球団への移籍を目指すことを自身のYouTubeチャンネルで表明した。
交渉で提示された大減俸をのめなかったためで、日米通算200勝にあと3勝と目前にした時点で前代未聞の退団となることは確実だ。
2日後、巨人の坂本勇人内野手(35)は1億円減の年俸5億円で来季契約を更改したと発表された。近年は坂本も力の衰えが隠せなくなってきた中、単純比較できないとはいえ田中とは比べるまでもない厚遇を受けることになった。
少年野球時代に投手・坂本、捕手・田中としてバッテリーを組んだこともある2人の格差は、なぜここまで広がってしまったのか――。
田中と、楽天で交渉役に立った石井一久シニアディレクター(SD)の契約交渉はわずか15分で終了したという。席上、今季の推定年俸2億6000万円から野球協約に定める減額制限(1億円以上は40%)を超える提示がなされた。
減額制限は1億400万円までのため球団提示は最大でも1億5000万円程度。実際はその半分に満たず1億を切ったのではないかとみる球界関係者も少なくない。
「三木谷オーナーの費用対効果へのシビアさは有名ですが…」
田中が2021年にヤンキースから復帰した時は日本球界最高年俸の9億円で2年契約を結び、鳴り物入りで凱旋した。
しかし期待された成績は残せず、2年契約が終了した2022年オフは4億2500万円減の4億7500万円、昨オフはさらに2億1500万円減の2億6000万円、そして今年には3年連続の減額制限を超える提示を受けたことになる。9億円からは80%以上のダウンだ。
「ヤンキースで右肘を故障して、日本に戻ってきても変化球でかわす投球しかできていません。24勝0敗の記録を残した2013年の圧倒的な投球の面影はありません。それにしても球団の評価の急落ぶりは功労者に対するものとは思えません……。三木谷(浩史)オーナーの費用対効果へのシビアさは有名ですが、マー君も例外ではなかったのでしょう」(楽天の元首脳陣)
一方で坂本は19年から5年契約を結び、3年目の21年までは年俸5億円の固定制だった。21年は117試合で打率2割7分1厘、19本塁打、46打点でチームもリーグ3連覇を逃した。しかし3年間中の実績が評価され、22年は1億円増の6億円に年俸がアップ。その年は83試合の出場にとどまったが、23年、24年も6億円を維持してきた。
ショートから三塁に本格転向した今季はゴールデン・グラブ賞こそ取ったものの、出場109試合で94安打の2割3分8厘、7本塁打、34打点。さすがに6億円の選手の成績ではない。在京球団の査定担当者が語る。
「うちの査定基準なら減額制限超えの減俸になる成績。今季までの年俸を振り返っても、5年契約した後に年数が見直され、今季まで契約が保証されていて年俸も据え置きだったようです。固定されていた21年までの3年間はともかく、22年以降の3年間は年俸に見合わない結果でしたので、もっと下がるかと思っていました。
ただ昔から巨人の看板選手は査定基準があってないようなものと言われてきましたし、既に名球会選手でもある坂本にチームがそれだけの価値を認めているということだと思います」
田中は安楽のパワハラ問題、坂本は妊娠・中絶問題を抱えていたが
2人は、どちらもベテランになってからスキャンダルを抱えた点も共通している。田中は安楽智大投手のパワハラ問題で、後輩へのハラストメントを助長したとされた。坂本にも22年途中に一般女性との妊娠・中絶問題が発覚している。しかしその対応も明暗が分かれた。
「スキャンダルについても坂本はほぼ不問に付されましたが、マー君は足元を見られ、昨オフから立て続けに大幅な減俸につながったように見えます。球団体質と言ってしまえば、それまでですが……」(前出の元首脳陣)
とはいえチームへの貢献度は、どちらも極めて高い。ともにドラフトも1位だ。
坂本は巨人一筋18年。田中は星野仙一監督が指揮を執った13年に神懸かり的な成績で球団史上初の日本一に貢献し、東日本大震災からの復興の象徴になった。翌年ポスティングシステムでヤンキースに移籍したときも、楽天には20億円以上の譲渡金をもたらしている。
球団への貢献度では甲乙付けがたく、坂本と同じく田中にも「将来の監督」という目はあったはずだが……。
「マー君ほどの選手の契約ですから、三木谷オーナーの意向が絡んでいないはずがありません。交渉もたった一度で、球団側に歩み寄る気がなかったのは確実。1億円を切る提示をすればマー君が自由契約を選ぶことは予期できたはずで、実質は戦力外通告に等しいものだったと言えます。ビジネスとしては当然なのかもしれませんが、三木谷オーナーにとってはマー君が名球会目前であることなどさしたる問題ではなかったのでしょう。これまでの球界の慣例からは考えられないほどドライな判断で、星野さんが生きていればこんなことにはなっていなかったと思います」(同)
「星野さんがいれば、マー君にあんな…」
星野氏は楽天で11~14年に監督を務めた後、球団副会長に就任した時には、三木谷オーナーの介入から現場を守る防波堤になろうと努めてきた経緯がある。
しかし星野氏がシーズン前に死去した18年には、梨田昌孝監督がシーズン途中で解任の憂き目にあっている。梨田氏に近い関係者は当時を述懐した上で、今回の田中退団をこうみた。
「星野さんがオーナーの介入を抑えてくれていたことを、いなくなって痛感しました。星野さんがいれば、マー君にあんな『もう期待されていないんだな』と絶望させるオファーは出さなかったはず。でも今の石井(SD)はオーナーに従順なので、意見するなんてことはあり得ないですよ」
(木嶋 昇)
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