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4.5km離れた千歳烏山になぜ「深大寺門前そば」? ほんのり若草色な秘密は…37年続く名店の“本格春菊天そば”が絶品だった

文春オンライン / 2024年12月17日 11時0分

4.5km離れた千歳烏山になぜ「深大寺門前そば」? ほんのり若草色な秘密は…37年続く名店の“本格春菊天そば”が絶品だった

店は千歳烏山駅から北側商店街に入ってすぐ

 調布にある名刹、深大寺。その門前に広がるのが「深大寺そば」の名店たちである。霊験あらたかな門前そばの里として観光客も多く訪れる。そば食いの人達も定期的に訪れる。ただ、鉄道駅からは遠く、車も渋滞する。週末になればどこも大混雑である。

 そんなわけで、深大寺に行かなくとも深大寺そばを気軽に味わうことができる大衆そば屋が、昭和・平成の時代にはいくつか存在した。「深大寺門前そば 千歳烏山店」もその一つである。11月末のよく晴れた土曜日、小春日和の午後2時頃、1年ぶりに訪問した。

ガラスケースには「おにぎり」「おはぎ」も

「深大寺門前そば 千歳烏山店」は京王線千歳烏山駅を降りて、線路北側の商店街に入ったすぐのところにある。店の入り口には「いなり」、「おにぎり」、「おはぎ」などがガラスケースに配置されて販売されている。

「おにぎり」はなんと9種類。近所の奥さんたちが自転車で買いに来ている。入店すると左に長いカウンター、右にテーブル席が3つほどあり、家族連れや近所のオジサンが実食中だった。店は女性店主と女性スタッフの2人で切り盛りしていた。

あざやかな緑色の春菊天など自家製天ぷらが並ぶ

 カウンター中央に揚げたての天ぷらが並んでいる。かき揚げ、ごぼう天、たまねぎ天、そして緑色があざやかな春菊天など。人気メニューを女性店主に聞くと「春菊天そば」、「ごぼう天そば」、「かき揚げそば」だという。さっそく、「ごぼう天そば」を注文した。すると手際よく茹で麺を湯通しして、つゆをかけて天ぷら、ネギをのせ完成だ。すばやい作業である。

アツアツのつゆに立ち上がるごぼうの香り

 まず、つゆをひとくち。鰹節の出汁がじんわりと香る。返しがしっかり効いたくっきりしたアツアツのつゆである。そばは中太、コシもしっかり。ごぼう天は太めにカットして揚げたタイプで歯ごたえがよい。ごぼうの香りがつゆの香りと同時にじんわりと立ち上がる。どんぶりの縁が緑色なのもなんだかよい気分だ。

昭和62年創業の古参店

 女性店主に、食べながら店のことを聞いてみた。店は昭和62(1987)年に創業し、今年で37年だそうである。深大寺門前と名乗るからにはそれなりの理由がしっかりある。

 深大寺からやや北寄りの深大寺東町8丁目に「深大寺門前そば本舗」という老舗そば屋がある。調布市にはなくてはならない人気の名店でいつも満員御礼となっている。

「深大寺門前そば 千歳烏山店」はこちらから生そばを仕入れている。資本関係はないという。昭和62年当時、「深大寺門前そば本舗」に行き、大衆そば店をやりたいので麺を卸して欲しいとお願いすると、当時の社長さんが快諾してくれて店をスタートすることができたそうだ。

分倍河原の駅そばや仙川の「深大寺門前そば」は同じグループだった

 昭和から平成の時代には同じような営業形態の「深大寺門前そば」が、仙川駅近くや分倍河原駅そばとして営業していた。自分が1990年頃、分倍河原でよく食べていた「深大寺門前そば」が千歳烏山店と同じルーツであることがようやく判明した。立ち食いそばオタクとしてはテンションが上がる。

 それらの店は徐々に閉店し、現在では千歳烏山店だけが営業しているそうだ。なお立川の馬券売り場近くにあった「深大寺そば」(2016年閉店)は別経営とのこと。

本格そばで「春菊天そば」を追加注文

 仕入れた生そばは毎日、午後になると店で茹でて茹で麺をつくって翌日提供しているそうだ。「深大寺門前そば本舗」が水曜定休なので、こちらは木曜定休となっている。なるほど納得だ。そんな話を聞きながらお品書きをみていると、「本格そば」というメニューがあることに気がついた。

 女性店主に聞くと、調布の「深大寺門前そば本舗」が店で提供しているのと同じ生そばに麺をグレードアップできるオプションだという。それはありがたい。そこで、「春菊天そば」を「本格そば」で追加注文してみることにした。

ぷりっとしたコシが特徴的

 待つこと3分、今度も手際よく生そばを茹で上げ「春菊天そば」が完成した。その姿をみてテンションが上がる。そばがほんのり若草色をしている。「深大寺門前そば本舗」のそばはこの色のそばだ。そばにクロレラを練り込んでいる。そして、春菊天は鮮やかな緑色、生そばはほんのり若草色。ビジュアル的には申し分ない。

 春菊天を除けてそばをどばっと引っ張り上げてつるっとすする。そばはぷりっとしたコシが特徴的だ。これは「もりそば」で食べてもうまいに違いない。そして、春菊天の香りがたまらない。「今年は秋になっても高温で、いい春菊が手に入らなかった。最近になってようやく良いものが出まわって来ている」と女性店主が教えてくれた。

大晦日は年越しそばの販売のみ、「深大寺門前そば本舗」の若草色の生そばも

 毎年、12月30日までは通常営業で、大晦日は年越しそばの販売をしているそうだ。茹で麺のそばや天ぷらだけでなく、「深大寺門前そば本舗」の若草色の生そばも販売している。これはすてきな情報だ。

 千歳烏山は北口側の「深大寺門前そば」、そして南口側の「ファミリー」という人気の大衆そば屋がある街である。千歳烏山界隈は京王線の架橋工事が進めばずいぶんと雰囲気がかわってしまうだろう。しかし、この2店には末永く営業を続けてもらいたいと願うばかりだ。

INFORMATIONアイコン

深大寺門前そば 千歳烏山店
住所:東京都世田谷区南烏山6-4-32
営業時間:月~水、金~日7:00~16:00
定休日:木

(坂崎 仁紀)

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