非行に走って少年院へ→“整形依存ヒモ男”でテレビデビュー→現在は“大物マダムタレント”に…高知出身のいじめられっ子が「アレン様」になるまで
文春オンライン / 2024年12月14日 17時0分
アレン様 ©細田忠/文藝春秋
「生きる幻」として知られ、SNSを中心に人気の大物マダムタレント・アレンさん。10月末に刊行された『 全てアレン様が正しいでございます 』(通称「全ア」本/玄光社)も売り切れ続出となり、大きな反響を呼んでいる。
高知県で生まれ、「普通」ではない自分に劣等感を抱え続けていた幼少期を経て、いかに「アレン様」となったのか? 知られざる半生が赤裸々に語られた「全ア」本を頼りに、2年ぶりに再びご本人に話を聞いた。(全2回の1回目/ 続きを読む )
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本の企画が通らず…「悔しい」じゃなくて「気持ちワルっ」と思った
アレン はい、では今から2社目の文春オンラインさん取材頑張ります(動画を撮っているスマホカメラに向かって)。
――今日はたくさんの取材が入っているんですね。
アレン 今日は7つね。
――アレン様はつねづね「労働人生」を拒否されていますが、「全ア」本作りという労働に関してはいかがでしたか。
アレン それはすっごい答えたい質問で。あのね、あたしもともと、本を出すことに対してネガティブなイメージを持ってたじゃない?
――2年前の取材時には、本の企画が通らないという話をされていて。
アレン そうなの。最初、いろんなところから出版のオファーがあったときは期待してたの。うわっ、自分の本を出せるかも、ってね。やっぱりメディアに出る側として本には憧れてたし、嬉しいじゃない。
で、企画を立てた現場の編集者さんはみんな熱意を持ってやってくれるんだけど、上層部、頭の固いジジイどもの「ダメ!」で全部、終了よ。あたしはそのとき「悔しい」じゃなくて、純粋に「気持ちワルっ」と思ったの。
その怒りがあっての今! (バーンと机を叩く)ジジイどもざまあみろって!
――そんな過去を乗り越えての「全ア」本刊行、本当におめでとうございます。アレン様が赤ペンを持ってゲラチェックもされて?
アレン 絶対に。マネージャーに任せてないです、1個も。別の仕事終わりの夜9時からこの本のチェックをしたりとかね。でも、「全ア」本で苦とかはまったくない。
だから、このかたちで良かったんだって思ったの。これまで断ってくれてありがとう、大馬鹿デビル出版社!
いじめかどうか判然としない間が一番しんどかった
――「全ア」本の中ではかつていじめを受けていたことも赤裸々に書かれています。書く時に苦しい部分もあったのではないかと思うのですが。
アレン あたし、この本で書いたことの3割ぐらいは、自分の記憶に蓋をしてたことなんですよね。いじめに耐えられなくなって家に帰った日、親が抱いてくれて一緒に泣いたこととか、本を書くために家族や友だちに電話して、無理やり思い出したのよ。
いじめって、突然はじまるわけじゃないんです。そこが強いて言うなら一番しんどかったかもしれない。
――コンパスで頭を刺されたり、教科書を捨てられたりしたことも書かれていましたが。
アレン だから、そこに至る前よね。最初は、「ん?」っていう違和感からはじまるのよ。その違和感の時間がすっごいキツかったんですよね。
数日前まで仲良くしてた友だちの態度が、ある日を境に急に他人行儀になっていくんだよね。一緒にご飯に行ってたのが、先にみんなが出て行っちゃうとかね。「確信はないけど、でも明らかに違う」っていうのが、徐々にハッキリした「いじめ」に変わっていく。その間がすごいしんどかった。
掃除のときに自分の机だけ誰も触ってくれないとかもキツいよ。そりゃキツいのは当たり前なの、いじめられてるってわかってるから。なんだけど、それよりも精神的にこたえたのは、いじめかどうか判然としない時間だった。
幼稚園のときから「普通」じゃないってわかっていた
――小学生の時から「普通」ではない自分に劣等感があり、家の中で暴れるようなこともあったそうですが、その一方で健康意識があって、大麦若葉をシェーカーで作って飲んでいたというエピソードも印象的でした。
アレン はいはいはい! 変わった子だったんだよね、ほんとに。でも、ちょっとおかしなところって誰でもあるじゃない。変なこだわりとかね。そういうところも含めて、本来の自分を出せない期間が長かったのよ。
――今のアレン様になる前のアレン様って、どんな感じだったんですか。
アレン 幼稚園のときから自分は「普通」じゃないってわかってたのよ。男の子の遊びにも全然興味なかったし。小学校から「オカマ」って言われてたから無理して男っぽく振る舞って、頑張って友だちの輪の中に入ろうとしてた。でも結局、中学で受けたいじめがきっかけになって非行に走って少年院まで入って。
東京に出てテレビに出てからも、ずっとくすぶってたのよ。自分のキャラをずっと隠してメディアに出てたし。
今は、本来の自分を出せてすごい幸せ
――一番出すのを躊躇した部分はどんなところですか。
アレン 自分のどこっていうよりも、親の目とか地元の目とか、その当時は若かったから、周りの目を気にし過ぎてた部分があるのかもしれない。
あと、最初にテレビに取り上げられたとき、「整形依存ヒモ男」みたいなキャラにされちゃったから、いきなり素の自分を出すのも怖かったのよ。
――そんなときに、「もっと素を出せばいいのに」とお友だちから言われたことが転機になったそうですね。
アレン 「アレン様の中で何が変わったの?」って聞かれたとき、1個しか答えはほんとになくって。何も恥ずかしがらず、本来の自分を全部出すようになったから、ってだけなのよ。
あたしはずっと、「なんでプライベートではすっごい面白いのに、テレビでは面白くないの?」って言われてたの。それで「何をそんな怖がってるんだろう?」って自分でも考えて、別に笑い者になってもいいし、ってか、いつもの自分でよくない?って。
それを身をもって知ったから、本来の自分を出せない会社とか環境だったりっていうのは、全部失敗に終わると思ってる。実際、自分がそれで失敗したからわかるのよ。だから今は、本来の自分を出せてすごい幸せね。
――具体的にはどのように「素」を出していったのでしょうか。
アレン Twitter(現X)で、動画を載せたんです。自分からしたら何気ない「こういうことがあった」みたいなこととか、ブチギレた話とかをしてたら、「あっ、アレン様ってこんなに素直で面白いんだ」ってみんなに受け入れられた瞬間があって。
そっからですね。もうプツって糸が切れて今の状態になって、ほんとに何も戸惑ってない。
――くすぶっていた時代の自分を、今どのように受け止めていますか。
アレン 本来の面白い部分を見せられてないから、そりゃファンもつかなくて当たり前だよね、って感じ。だって面白くないもの。
こんなに変な自分を出しても受け入れてくれるんだったら、なんであんなカッコつけてたんだろうって。くすぶってた時間を無駄とは思ってないんですよ。でも、もっと早く出しときゃよかったなってすごい思います。
「日本のシンガポール」出身地に対する想い
――本の中で、高知県出身であることも明かされています。
アレン それもこの数年で、本来の自分を出せるようになったことのうちのひとつです。でも、それでもやっぱり「高知」って断言はどこでもしてなくって、大体「デュバイ」とか「日本のシンガポール」とかって言ったりしてる。
ファンの方も高知出身ってわかってるんだけど、「アレン様はシンガポール出身だもんね」みたいな感じ。
――「老後は高知で過ごしたい」という、アレン様の高知愛にも驚きました。
アレン うん。あたし、もういうて東京の方が長くなってきましたけど、14歳で香川県の少年院に入って。
――少年院は香川だったんですね。
アレン はい。少年院って各県にあるわけじゃないんで、あたしの場合は香川だったの。
で、それまで14年ぐらいずっと高知に住んでたんだけど、その14年間って、あたしの中でほんとにただただ、自分を出せなかった時代なのね。小学校もずっと自分を出せずにいじめや嫌がらせにあって、そっから新たに自分で道を切り拓こうと思って受けた中学受験も、合格したはいいけど、そこでも失敗に終わって……。とにかく本来の自分を出せない、失敗だらけの14年間だったんですよね。
――あまりいい思い出のない地だったと。
アレン 高知での幼少期の楽しかった思い出とかが思い出せないんだけど、大人になってから高知の楽しさを知りはじめたんですよね。家族もいるし、友だちもいるから、今、大人になってもっと高知を知りたいっていう気持ちが出てきてるって感じですね。だからゆくゆくは、「日本のシンガポール」で過ごしたいなって思ってるの。
〈 「地元の人を『見返したい』と思って」「少年院に行くぐらい荒れちゃった」つらい幼少期を過ごしたアレン様が、それでもいじめっ子に「感謝する」ワケ 〉へ続く
(小泉 なつみ)
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