1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

ガールズバーで「右手がないの、かわいいね」「写真を撮らせて」と…“生まれつき右手がない”義手ギタリストの女性(29)が語る、知られざる“欠損フェチ”の世界

文春オンライン / 2024年12月21日 11時0分

ガールズバーで「右手がないの、かわいいね」「写真を撮らせて」と…“生まれつき右手がない”義手ギタリストの女性(29)が語る、知られざる“欠損フェチ”の世界

〈 「保育園で『なんで右手がないの?』と言われてウザったくて…」“生まれつき右手がない”義手ギタリストの女性(29)が明かす、子ども時代の苦労 〉から続く

 先天性四肢障害で、生まれつき右手首から先がないギタリストのLisa13(29)。

 東京パラリンピックの閉会式のステージに立って注目された彼女に、演奏の際に用いる「義手ピック」製作の裏側、ギター専攻のある高校での日々、身体の部位を欠損した女性たちのいる「欠損バー」で働いてた頃の様子などについて、話を聞いた。(全3回の2回目/ 3回目 に続く)

◆◆◆

父親の発案で「義手ピック」が誕生

――義手ピックの製作は、お父さんが担当されていると。義手ピックを作ろうと言い出したのは。

Lisa13(以下、Lisa) 父です。右腕にはめた胃薬の箱で弾いてるのを見て、「もうちょっとカッコいいの作らない?」って。

 まず、ピックを買ってきて、両親と私の3人で「こんな感じか。いや、ちょっと違うか」なんて言いながら、ギターの弦とピックの当たる角度を研究して。

 それで、アクリル板をベースにした1代目が出来上がったけど、いろいろ弾いてるうちに「ピックの当たる角度、まだアレだな」とか「見た目、もうすこし可愛くしたいな」とか、いろいろ気になるところが出てくるんですよね。

――そのつど、改良を重ねていったと。

Lisa 我が家は、とにかくコミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーションって感じで、ちっちゃな頃から毎日「こういうことがあった」って家族で話し合うんですよ。

 その延長で義手ピックのことも家族共通の話題になって、ベルクロで留めるようにしたり、ピックを付けた板をリストバンドに挟んでみたり、スポンジでピックを挟んでみたりって、試行錯誤を続けていって。

 高校入学のときに、金属とレザーを使った現在の形になったんです。高校がギター専攻のある学校だったので、そうなるとビジュアルのいいものを持っていきたいじゃないですか。なので、金属とレザーを使おうってことになって、おまけにしっくりきましたね。

3Dプリンターで義手ピックを製作しない理由

――素材はホームセンターに置いてある入手しやすいものだけど、シンデレラフィットに到達するまでの工程は大変なわけですね。

Lisa 金属の板を材料にしてるので、サンダーやドリルで加工しないといけませんしね。あと、レザーは動物愛護団体の方からチェックが入るので、ちゃんとフェイクレザーを使って。そういうところも考えてますしね。

――動物愛護団体の方に言われますか。

Lisa 言われます。DMで「それ、なんの革なの?」みたいな。海外のフォロワーの方にも聞かれますね。

――3Dプリンターで義手ピックの製作を考えたことは。

Lisa 3Dプリンターってフィラメントという樹脂を使いますけど、私の弾き方になると強度が気になるんですよね。金属の3Dプリンターもあるみたいですけど。

 右腕のない女の子が、ギターでOasisの「Supersonic」を弾いてる動画がXでバズったじゃないですか。あの子と知り合いで、欠損バーで働いてたときに出会ったんですけど。彼女は友達と一緒に3Dプリンターで、あの自助具を作ったんですよね。

「甲斐バンドのメンバーが先生をやっていて」ギター専攻のある高校に進学した経緯

――祖父がコード表を書いてくれたり、両親が義手ピックの製作に協力したりと、音楽的素養のある家族だったのですか?

Lisa お母さんが音大を出てて、声楽とピアノを学んでるんですよ。父も趣味がアルトサックスで、ロックやロカビリーとか、なんでも吹いていて。X JAPANのhideちゃんを好きになったのは、完全に両親の影響ですね。

 おじいちゃんも、ハワイアンバンドでギターを弾いてた人なんですよ。だから、家にはサックス、ピアノ、スチールギター、アコースティック・ギターって、楽器もいっぱいあったんです。なんか、常に音楽が鳴ってましたね。

――高校は「ギター専攻のある学校」だったと。

Lisa 渋谷高等学院という通信制の学校なんですけど、ギターを学べる高校ならここしかないなって。もともとギターを勉強できる学校に行きたくて、母親と一緒に探しまくっていたんですよ。そうしたら、渋谷高等学院を見つけて。

 甲斐バンドのメンバーだった田中一郎さん、BOWWOWやARBのメンバーだった斉藤光浩さんが、ギターの先生をやってたことでも即決でしたね。

「ギタリスト探してるんだけど、バンドで弾きませんか?」いきなりプロとして活躍

――ギターの授業では、右手のことを言われたりは。

Lisa なにも言われなかった。オープンキャンパスがあって、そこでギターを背負って授業の見学に行ったんですよ。で、田中さんと斉藤さんの前でX JAPANの曲をバリバリ弾いて。右手のことは見てはいるんだけど、まったく触れることもなく「うまいね」みたいな。

――バンド活動は、高校に入ってからですか。

Lisa そうです。中学ではバンドをやってなくて。高校では、女子だけのバンドで学園祭に出たくらいで。で、卒業してからは、インフルエンサーのはしりみたいなことを始めたんです。

 ブログをやったり、いろんなファッション・スナップに出たりするなか、プロフィールに「ギター弾いてます」って書いたら、「ギタリスト探してるんだけど、バンドで弾きませんか?」と誘ってくれた人がいて、バンドに入って。

――いきなりプロに。

Lisa そうですね。ライブハウスにポーンと出て、月に3本か4本かライブをやってました。

「どういう世界なんだろう」欠損バーで働くようになったワケ

――「欠損バーで働いてた」とのことですが、そのバーは新宿にある「ブッシュドノエル」ですよね。身体の部位を欠損した女性が働いている店ですが、どういった経緯で働くことに。

Lisa 2019年かな。「Moth in Lilac」というバンドをやってたんですけど、活動休止になって。その直前にテレビの番組に出たときに、欠損バーを運営する人と知り合いになったんです。

 その方は、義手や義足、四肢欠損、目のない子とか、そういった子が普通にガールズバーとしてお客さんとコミュニケーションできるような場所を作りたかったと言っていて「いいんじゃない」って思って。

 あと、「どういう世界なんだろう」っていう好奇心もあったので、「ゲスト的な感じで、1回お店に出させてもらってもいいですか」ってコンタクトを取ったのかな。

 ただ、私の場合はバンドが活動休止になったけど、ファンに会える場所が欲しいなとも考えていて。自分でどこかに場所を借りてやっても良かったんですけど、欠損バーで働いてファンに来てもらったほうが手っ取り早いなって。そうすれば、お店としてもお客が増えるわけだし。そんな気持ちで働かせてもらうようになったんですね。

――働いてみて、どうでしたか。

Lisa 私が思ってた以上に、欠損であることを重く受け止めている子が多くて。私はまったくそういうのがなかったから、場違いとまでは言わないけど「あ、ごめんなさい……」という気持ちになりましたね。

「欠損バー」では欠損が原因で就職できなかった女性も働いていて…

――なぜ「あ、ごめんなさい……」という気持ちになったのですか。

Lisa 「どんな世界なのか覗いてみたい」とか「ファンと会える場所にしたかった」とか、私が欠損バーで働いた動機って軽いんですよ。でも、他の子たちは「自分の居場所が見つけられた」とか「ここでナンバーワンになる」といった思いで一生懸命に働いてたんです。

 そういうところへ、ちゃらんぽらんな私が入ってきて「ごめんなさい」と。しかも、2年くらいしかお店にいなかったし、しょっちゅう出ていたわけでもないからレアキャラみたいなもんだったし。

 でも、みんなすごい優しくて「Lisaちゃん、Lisaちゃん」ってフレンドリーに接してくれて。「ごめんなさい」から「ありがとうね」という気持ちになって。

――他の女性たちの経験も、あまりにも自分とは違った。

Lisa 障害に対する捉え方も違うというのもあったけど、ヘビーな子は、ほんとにヘビーで。普通に就職したかったけど、欠損が原因で採用してもらえなかったとか。

 私は就職なんてまったく考えていなかったから、そういうことがポピュラーな出来事として起きている世界があることに驚きましたね。「ああ、社会ってそうなのかあ」って。

「右手がないの、かわいいね」欠損フェチのお客さんとの交流

――欠損バーの客層というのは。

Lisa 義肢装具士の方がお客さんで来たりしましたけど、欠損フェチの方が多かったですね。女の子たちに「右手がないの、かわいいね」とか「義足って、いいよね」みたいな感じ。

――欠損フェチの方を見て、どう感じましたか。

Lisa いや、とくになにも。というか、私はなにも言えないですね。マリリン・マンソンを「かわいい」と思えちゃう人なので。好きなものって、人それぞれじゃないですか。

――他の女性たちは、どんな様子でした?

Lisa みんな「喜んで!」って感じでしたよ。やっぱり、うれしいと思いますよ。後天性の欠損の子だったら、元々あった部位がなくなってる状態なんだけど、そうなった姿を「かわいい」と言って肯定してくれるのはうれしいと思う。

――たとえば、客から「欠損部位の写真を撮らせて」みたいなことは。

Lisa 他の子たちは、あるみたいです。「ねえ、その写真でなんかするの?」って聞きたくなりますけど。ほんと、私はそういうことを一切言われたことがなくて、悩み相談を受けることが多かったですね。

 中年男性から若い女の子まで、幅広く相談されて。「私も義手ピック作りたいんですけど、どうやって作ればいいですか」っていうものから人生相談的なものまで、いろいろと。

――そのへんは、Lisaさんのキャラクターが影響しているんでしょうね。

Lisa してると思います。欠損バーの女の子たちって、清楚で可憐な子ばっかりなんですよ。そのうえで欠損というものを抱えているので、かよわさみたいなものが漂っているというか。それが「かわいい」的な気持ちを呼び起こして、欠損バーに通うって人もいるんじゃないですかね。

写真=山元茂樹/文藝春秋

〈 「ある番組で、私の障害が目立たないから『出なくていい』と…」“生まれつき右手がない”義手ギタリストの女性(29)が語った、マスコミへの“苦言” 〉へ続く

(平田 裕介)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください