【ヤンチャすぎ】高2で大学生をボコボコにし、「女の子を連れて来い」と恐喝…“闇社会の帝王”と呼ばれた男の“荒れまくった学生時代”
文春オンライン / 2024年12月21日 17時0分
写真はイメージ ©Tomoharu_photography/イメージマート
大阪・中津の在日韓国人地区で生まれ育ち、喧嘩に明け暮れアウトローの道へと突き進んだ許永中。イトマン事件、石橋産業事件で暗躍し、「闇社会の帝王」「戦後最大の黒幕」と呼ばれた。
ここでは、そんな許永中の波乱万丈な人生を綴った 『許 永中独占インタビュー「血と闇と私」』 (宝島社)より一部を抜粋。彼のヤンチャすぎる学生時代のエピソードを紹介する。(全4回の1回目/ 2回目 に続く)
◆◆◆
「僕は、韓国人です」
許が大阪府立東淀川高校に入学したときのことだ。クラス編成が発表され、第1回目のホームルームで、クラスメートが順に自己紹介をしていくことになった。
自己紹介といっても、これといってテーマがあるわけがない。気負っているつもりはなかったが、このとき彼はいきなり自分の出自に触れた。
「僕は、韓国人です」
わざわざ公言した。陰でいろいろ言われるのが嫌だったからだ。同じ地域で育った者も中にはいる。隠し通すことは難しい。どこかで誰かにばらされて、「向こう側」の目で見られるより、自分ではっきり口にしておきたかった。
一瞬、教室が静寂に包まれた。そんな自己紹介をした級友は、他に1人もいない。もちろん、彼は「出身中学」や「好きなもの」や「得意なこと」も付け加えた。ただ、在日であることを外す気にはなれなかった。
このとき、あくまで日本名の「湖山」で、韓国名の「許」は名乗っていない。愛国心うんぬんはあまり関係なかった。高校生活で余計な気を使いたくなかっただけである。
高校2年生から、毎朝10時前にパチンコ屋へ
1年目は比較的まじめに通っていた許の高校生活は、2年目に入った頃から一挙に荒れ始める。
実は許には入学早々電撃的な恋心を抱いた女子がいた。第1回目のホームルームでの出自も、同じクラスになったその彼女に向かって告白したようなものであった。しかし2年になった時のクラス替えで彼女とは別になってしまう。
それで全く勉学意欲を無くしてしまったのである。毎朝10時前には高校に近いパチンコ屋に必ず足を運んだ。開店に合わせて顔を出す。時間つぶしといいながら、ずいぶんと律儀なものだ。
パチンコ屋での悪さの中身を、軽く紹介しておく。当時のパチンコ台は上が斜めに傾いて向こうに沈むようになっていた。釘は先が広がっているものの、根元は皆同じサイズだ。玉を入りやすくする一番簡単な方法は、台の底を足で蹴ってへこませることだ。こうすることで、台がこちらに浮き上がってくる。
玉はガラスに当たるようになる。勢いを止められてしまうわけだ。玉は跳ねずに真下に落ちる。結果として穴に入る。パチンコの穴はセンター、右、左に空いている。右の釘が緩く、他は締まっているとしよう。右に玉を集中させれば、その分当たる確率が高くなる。
許も連れもガタイは良かった。台を蹴るのはお手の物。面白いほどよく入った。店員に見つかると、当然のことながら揉めたものだ。
「この沿線で一番強いんは、ワシや」私大に通う大学生を恐喝
高校2、3年生にとって当時の4000円、5000円はかなり大きかった。昭和32年に、フランク永井が「13800円」という歌を歌っている。当時の平均月給がそれであったのだろう。その3分の1から半分近い金額を数時間で稼ぎ出す。子供にとっては十分な上がりだ。
とはいえ、パチンコで儲けても、その頃の彼にとっては小遣いの足しにもならなかった。こんなことを明かすのもみっともないが、当時すでにシノギの中心は恐喝だったという。
ただし、恐喝の標的は、大学生と決めていた。沿線の私大に通うお洒落なファッションに身を包んだ兄ちゃんたち。どれくらい腕に自信があるのか知らないが、意気がっている奴らが大勢いた。ちょうど自己顕示欲に目覚める年頃ではある。
電車に乗り込むと、ギラギラした目と視線が交わることがたびたびあった。
「この沿線で一番強いんは、ワシや」
無言のうちにそう語りかけてくる。「喧嘩で決着つけようや」と言いたげな輩が大勢うろうろしていた。
喧嘩で負かした大学生に「女の子、連れて来い。紹介せえ」と…
許が「お客さん」としていたのは、一番かっこつけていて一番強そうで一番金を持っていそうな奴。これ以上のカモはない。
いざ開戦となれば、短期で決着。瞬間に一発入れて、バチバチッと片付ければおしまいだ。
もっとも、最初から金目当てだったわけではない。当初は金を取っていなかった。
「女の子、連れて来い。紹介せえ」
金の代わりにそんな注文をつける。
私立の女子校に通う生徒たちは同じく私学の男子校とつるむのがお決まりだった。何かとご縁があるらしい。その点、彼の通う高校は共学で府立。女子校の子たちがそんなダサい学校を相手にしてくれるはずがない。
喧嘩で負かした大学生たちは、女子高生を紹介してくれた。約束は果たしてくれた。だが、あくまで「紹介する」だけ。
女の子は一度は会いに来てくれるものの、後が続くことはなかったという。無理もない。なにしろ許はおっさんのような風体。札付きの不良である。許の晩稲ぶりはここでも変わらない。女の子がいてくれるだけで嬉しかった。指一本触れてもいない。
〈 「その口の利き方は、なんや」「殴ってこいや」大学時代は“街の不良”とケンカ三昧…闇社会の帝王・許永中の“トラブルだらけの生活” 〉へ続く
(大下 英治,許 永中/Webオリジナル(外部転載))
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