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「腹を刺された」路上でいきなり暴漢に襲われ、ボコボコにして返り討ち…“闇社会の帝王”許永中が大学時代に起こした“ヤバい事件”

文春オンライン / 2024年12月22日 17時0分

「腹を刺された」路上でいきなり暴漢に襲われ、ボコボコにして返り討ち…“闇社会の帝王”許永中が大学時代に起こした“ヤバい事件”

写真はイメージ ©Tomoharu_photography/イメージマート

〈 「その口の利き方は、なんや」「殴ってこいや」大学時代は“街の不良”とケンカ三昧…闇社会の帝王・許永中の“トラブルだらけの生活” 〉から続く

 大阪・中津の在日韓国人地区で生まれ育ち、喧嘩に明け暮れアウトローの道へと突き進んだ許永中。イトマン事件、石橋産業事件で暗躍し、「闇社会の帝王」「戦後最大の黒幕」と呼ばれた。

 ここでは、そんな許永中の波乱万丈な人生を綴った 『許 永中独占インタビュー「血と闇と私」』 (宝島社)より一部を抜粋。彼のヤンチャすぎる学生時代のエピソードを紹介する。(全4回の3回目/ 4回目 に続く)

◆◆◆

「腹を刺された」ツレと歩いていたらいきなり襲われ…

 出会い頭の事故のような事件が起きたのは、昭和41年5月、大学2年生の春だった。

 場所は、北新地の裏通りにある地元でも有数の“魔窟”で、多くの飲食店や事務所がひしめき合って並んでいる通りのはずれで、街灯はろくになく、夜になると先導されなければどこに何があるのかわからないようなところだった。

 当時は、毎晩のように親しくしていたツレと飲み歩いていた。

 彼は兵庫県西宮市に本家がある老舗組織の2次団体の組員で、一回り年上の気のおけない男だった。彼の事務所はすぐ傍にあり、売春と覚醒剤を主に収入源とする小さな組織だった。彼と落ち合うのはいつも深夜で、その日、人通りが少なくなった深夜、彼の誘いで知り合いの店へ向かっていた。

 暗がりから声がかかった。

 「コラ! ようもオレをコケにしくさったなっ!」

 怒号を上げるなり、男はツレに体当たりをしてきた。声を上げて、ツレはその場に倒れ込んだ。 

 腹を刺された。

相手の髪をつかんで、執拗に頭を地面に打ちつけ…

 許はすぐに反応して、男に体当たりをして頭突きを入れて倒し、もみ合いになったが、すぐに相手の髪をつかんで頭を石畳の地面に打ちつけた。「ツレが刺された」その一念で頭に血が上った許は、執拗に頭を地面に打ちつけた。やがて男はグッタリして、動かなくなった。

 薄明かりの中、ダランとした男の手からキラリと光った刃物が落ちた。血の臭いが立ち込めていた。

 刺されて倒れたままのツレに声をかけた。

「どこを刺されたんや」

「オレは大丈夫や、永ちゃんは?」

 その一言で我に返った。冷静になってきた。男の頭部から血が流れ出ている。許はこのあとの展開を考えてみた。なるようにしかならない。そう覚悟をした――。人生とはそういうものなんだ、と悟った。

事件がきっかけで、後に妻となる藤田紀子と出会う

 このヤマがきっかけとなって、後に妻となる藤田紀子には可哀想な人生を選ばせてしまった。 

 1人の女性としてみれば、これほど気の毒なことはないという。

 当時、藤田紀子は大阪樟蔭女子大学短期大学部に通っていた。高校時代までを過ごした郷里鹿児島から上阪。同じ学校に通学する友人の東大阪市の実家の離れに下宿していた。離れとはいっても、三畳一間の別棟。どちらかというと、物置に近い造りである。

 許と紀子は同い歳。当時18歳。ただ、許は2月で早生まれだが、彼女の誕生日は7月。学年では許より1つ下になる。

 当時の大阪で大工大は近畿大学の次に格付けされていた。許が通うくらいだから、もちろん、「硬派度」においてである。応援団が幅を利かしていて、空手部が強く、何よりもヤンチャな学生がやたらとたくさん闊歩していた。

 空手部の許の連れが樟蔭の女の子と付き合っていた。その男と彼女が会う場に許も呼ばれた。その彼女が頭数をそろえるために「もう1人、友達を連れてくるから」と連れてきてくれたのが紀子だった。

可愛い女の子だった紀子を一発で気に入って…

 昭和も40年代の話。もう大昔のことである。当節のように「合コン」などというお洒落な場などあろうはずがない。若い男女は喫茶店で落ち合って、ただお茶を飲むだけ。それが楽しみだった。一言でいえば、紀子は可愛い女の子だったという。気性もいい。許は一発で気に入ってしまった。「惚れた」というのとは少し違う。

 もっとも、向こうは明らかに彼を嫌がっていた。紀子はごく普通の短大生だ。その時分に流行したアイビールックが似合うボーイフレンドでも見つけて、楽しく学生生活を送りたかったのだろう。しかしながら、彼はアイビーなぞとは無縁だった。学ランこそ羽織ってはいなかったが、なんとも垢抜けない。

 背広といえば、まず、「自分を大きく見せたい」という意識が先に立つ。ダブルのスーツで決めてはいるが、一皮むくと、ダボシャツに腹巻が露わになる。繁華街でデートするのはさすがにはばかられるコーディネート。

 だが、当時の不良にとっては標準装備である。きちんとした身なりやスタイリッシュな格好をしている友達は、許の周囲にいなかった。スマートさなどかけらもなく、おっさんそのものだった。

 だが、どういうわけか、当時の彼には、それが「粋」に映っていた。

 彼女が敬遠するのも無理はない。今の言葉でいえば、「引いて」いた。

 ところが、そんなことでめげる許ではない。しぶとく、紀子に「次、また会おう」と約束を取り付けた。半ば強引に。

「あかん! デカや」紀子とデート中に警察と遭遇

 次の日の夕方6時。紀子と待ち合わせた時刻だ。場所は馴染みの喫茶店、トリオ。 

 学校が引けて、トリオに向かう。紀子と会うのが楽しみなあまり、約束の10分前には店の周りをウロウロしていた。

〈もう時間やな〉

 腕時計の針を確認したのは、何度目かわからない。ようやくトリオの扉を開ける。席に着くと、程なくして紀子が入ってきた。彼女が彼の前に座るか座らないかというその時のことだ。

 許の連れが、店に飛び込んできた。尋常ではない勢いである。

「あかん! デカや」

 そう叫んだ。警察が来た。

「おい、どうすんねん」

 許も叫んでいた。例のヤマの件に違いない。知人であるトリオの店長を呼ぶ。

「デカが、追ってくるらしい」

 とにかく、2階に上げてもらった。

紀子の胸元に顔を埋めるように隠した

 2階は、同伴喫茶や。ベンチ式の席が並んでいる。まばらだが、客が入っていた。適当な席を選んで、階下を見下ろした。曽根崎警察の私服とおまわりが前と後ろを固めて店内に入ってきたではないか。

 1階の入口近くにいる客から順に、声をかけている。許は、隣の紀子にささやいた。

「おまわり、上がって来よるで。しゃあない。バタバタできへん」

 参った。紀子とはまだ手も握っていない。何しろ2回目のデートだ。

 デカが、いよいよ階段を上がってきた。ベンチを順番に当たっていく。

 許は、すかさず紀子の胸元に顔を埋めるように隠した。無理やりの行動。条件反射のようなものだ。

〈このアベックの艶っぽい状況で「ちょっと顔を見せてくれませんか」とはデカもよう言わんやろう〉

 緊急時だったが、彼なりの読みがあった。デカは許たち不良があたりにたむろしていると睨んでいる。まるで東映か日活のアクション映画の世界。まさか、そのリーダー格が逢引の途中だとは夢にも思うまい。とにかく顔さえ隠しておけば、ばれるはずもない。

 何とかやり過ごした。警察御一行は階下に降りていく。

 部長が、駆け上がってきた。

「すぐ降りて」

 知人の店長は、そこから許たちを逃がしてくれた。

そのまま紀子の下宿先になだれ込んだ

 新御堂筋のガードができる前の時代。トリオを出ると、許たちは曽根崎警察と反対の方向へ走った。

 そこでタクシーを止める。飛び乗るやいなや、紀子に話しかけた。

「ちょっと悪いけど、自分とこへおらせてくれるか」

 トリオで何が起きたのか。恐らく彼女も訳がわかっていない。

「……いや、ええけど……」

「事情は、行ってから説明する。とにかく、頼むわ」

 そのまま彼女の下宿になだれ込んだ。

 当時彼女は同じ短大に通う友人の家に下宿していた。三畳一間の小さな下宿といえば、昭和48年に流行ったかぐや姫のフォークソングの、赤い手拭いマフラーにして2人で行った横丁の風呂屋という『神田川』の世界。

 そこで二晩世話になった。

〈 「身体中から赤黒い血が噴き出していた」“1000万円持ち逃げ男”を竹刀でボコボコにして監禁…「闇社会の帝王」許永中が憤怒した“CMトラブル” 〉へ続く

(大下 英治,許 永中/Webオリジナル(外部転載))

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