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「身体中から赤黒い血が噴き出していた」“1000万円持ち逃げ男”を竹刀でボコボコにして監禁…「闇社会の帝王」許永中が憤怒した“CMトラブル”

文春オンライン / 2024年12月22日 17時0分

「身体中から赤黒い血が噴き出していた」“1000万円持ち逃げ男”を竹刀でボコボコにして監禁…「闇社会の帝王」許永中が憤怒した“CMトラブル”

写真はイメージ ©アフロ

〈 「腹を刺された」路上でいきなり暴漢に襲われ、ボコボコにして返り討ち…“闇社会の帝王”許永中が大学時代に起こした“ヤバい事件” 〉から続く

 大阪・中津の在日韓国人地区で生まれ育ち、喧嘩に明け暮れアウトローの道へと突き進んだ許永中。イトマン事件、石橋産業事件で暗躍し、「闇社会の帝王」「戦後最大の黒幕」と呼ばれた。

 ここでは、そんな許永中の波乱万丈な人生を綴った 『許 永中独占インタビュー「血と闇と私」』 (宝島社)より一部を抜粋。「闇社会の帝王」と呼ばれた彼の“恐ろしすぎる素顔”を紹介する。(全4回の4回目/ 3回目 から続く)

◆◆◆

「東邦エンタープライズ」お披露目

 昭和54年4月、東邦生命大阪ビルや東京の馬喰町にあった立派なビルのワンフロアを私は借り切った。「東邦エンタープライズ」のお披露目である。レジャー会員券を扱う会社であった。

「レジャーコラボ」に乗り出すつもりだった。

 資本金は8000万円で開発を手掛ける。ビルを借りるに当たって、内装だけでも破格の費用をかけた。とにかく構えだけはきちんとしなければならない。

 社長は、野村雄作、社長室長は、私、野村永中、専務に大谷貴義を紹介してくれた元産経新聞の西村嘉一郎が就いた。東邦生命の代理店である東邦産商を経営していた野村周史に後ろ盾になってもらった。

 野村雄作が一計を案じた。東邦生命の保険契約者を集めて、「かんがるうくらぶ」という団体をつくった。名称は東邦生命の社章にあしらわれたカンガルーから取った。ロゴには、カンガルーの横顔を使っている。自分でいうのも何だが、なかなかかわいい。

 パンフレットには謳いあげた。

『20万円で別荘の所有権を持てるうえ、ゴルフ場の会員権もついている』

 私はプラスアルファを用意した。中村錦之助のコマーシャルへの起用である。

「錦之助を、使わせてもらえませんか」ギャラ3000万円で交渉

 錦之助は、『一心太助』『宮本武蔵』シリーズなどの当たり役を持つ東映時代劇の大スターであった。昭和47年からは萬屋錦之助の芸名に変えていた。

 錦之助に力のある住吉一家小林会初代会長、日本青年社初代会長の小林楠扶に、私は頼み込んだ。このときまで、私と小林の間に接点は何もない。直談判で交渉するしかなかった。ギャラは3000万円を積んだ。

「錦之助を、使わせてもらえませんか」

 昭和54年といえば、錦之助の仕事がちょうど減っている時期であった。

 京都の東山区高台寺枡屋町にある老舗料亭の京大和。稀代の名優担ぎ出し交渉の舞台にはふさわしい。

 錦之助は当時の妻の淡路恵子を伴って姿を現した。ただし、小林は同席していない。

 私は、錦之助夫妻と飯を食う。この場ではギャラの話は一切しない。金目の交渉はすでに小林と折り合っている。ギャラは3000万円。あとの実務は制作会社に頼んでやってもらうことになっていた。

 コマーシャルの構成は、こんな感じである。まず、錦之助が能書きを垂れる。「これからはこういうクラブが必要です」とかいうセリフだ。そこに歌が入る。歌ってもらったのは当時親しくしていた韓国の若手の歌手。「カンガル~ク~ラブ♪」とメロディーをつけた。

 このパートだけでも何十回リハーサルをやり直したかわからない。私なりのこだわりがあった。それを生かすにはなかなか骨が折れたのを覚えている。ようやく完成したときには、ほっとしたものだ。

コマーシャルが急転直下、頓挫…いったい何が起こったのか?

 錦之助出演のコマーシャルは関西テレビで放映するはずだった。だが、この計画は急転直下、頓挫した。いったい何が起こったのか。

 関西テレビを設立した前田久吉の息子に富夫がいる。このときは専務だった。

 ところが、東邦エンタープライズの専務に据えた西村嘉一郎が過去に広告代理店を経営していたときに、この前田富夫にとんでもない迷惑をかけていたのだ。

 私には一切関係のないことだが、西村が過去にかけたという「迷惑」を前田はどうやらいつまでも恨みに思っていたようだ。西村の不手際でCMが打てなくなった。

 放映が飛んだことで、さまざまな影響があった。販売促進費は、すべて吹っ飛んだ。 

 追い打ちをかけるように、「かんがるうくらぶ」に、東邦生命からこんな通知があった。「会社も閉めてほしい」

「正しい保険募集をおこなわせることを目的とした保険募集取締に関する法律」(募取法)に引っかかるからということだった。

どこかからチンコロ(密告)が入ったのか

 募取法とは、新しい保険の契約を募集する際、遵守しなければならない法律である。保険という商品を売っていくため、勧誘をする上での制約などを定めている。「余計な宣伝をしてはいけない」など「これをしてはいけない」「あれをしてはいけない」といった規定がある。

 今回は東邦生命の社章にあるカンガルーから取って「かんがるうくらぶ」という名称にしたこと。「東邦エンタープライズ」という社名が「東邦生命」と混同されやすいこと。この2点が募取法上、問題とされたのだ。

 私には、東邦生命の名を騙ろうなどというつもりはさらさらなかった。起業したばかりの会社にどう信用をつけていくか。頭にあったのは、それだけである。

 だが、どこかからチンコロ(密告)が入ったのか、旧大蔵省(現財務省)に誰かが刺したのか。 

「おかしいじゃないか」

 そんな声が入ったのだろう。所管官庁からの働き掛けとあっては、東邦生命側も無下にはできない。

「とにかく、会社を閉めてくれ」東邦エンタープライズ閉業

「とにかく、会社を閉めてくれ。事務所も出てくれ」

 そんな要請があったのも無理のない話である。

 そこで、私は東邦生命ビルにまで確認に出向いた。

 東邦生命の専務は絞り出すように告げた。

「何の問題もないんやけど。できることならば……」

 東邦生命に迷惑を掛けるようなことがあってはならない。仕方がない。私は会社を閉めざるをえなかった。条件は一切つけていない。何の注文もない。

 私はこのときまで、募取法の存在すら知らなかった。知りもしない法律に反していると追い込まれるなどとは夢にも思わなかった。

 とにかく私は、この件では潔く身を引いた。いずれにせよ、失敗は失敗。認めてやり直すしかない。

1000万円を持ち逃げした西村

 この顛末の後、西村はとんでもないことをしでかす。私が貸し付けていた1000万円を持ち逃げしたのだ。

 そればかりか、山健組傘下の太田興業「本部長」の肩書きを持った人物をバックに、しょうもないことで私に追い込みをかけてきた。西村が言ってきた。

「本町駅近くのホテルで会いたい」

 出向いてみると、その「本部長」がヌッと顔を出す。

 こういうとき、私の対応はいつも決まっている。

「お前、何や!」

 かんからかんに怒り飛ばすのみだ。

「お前、何しについてきたんや。何が言いたいんや」

 私はよく分かっていた。私を脅すためだ。当時、山健組の看板には絶大な威光があった。

 どこに出しても通用する。まさに「天下の山健」。太田興業はその山健組の傘下だ。

 西村と別れた後、私は周りの人間に命じた。

「西村を、連れてこい!」

 間もなく、西村は身体ごと私の前にさらわれてきた。

「裸にして、犬小屋に放り込んどけ!」

 私の事務所のガレージ横にはグレートデン犬用の犬舎が3つあった。そのときはもう犬は飼っていない。空き家だった。

 西村には、まる2日間、水とドッグフードだけしか与えなかった。

竹刀で西村を滅多打ち、身体のあちこちから赤黒い血が…

「お前は、犬以下や。ドッグフードでもやっておく。悔しかったら、死ね!」

 西村は、さめざめと泣いていた。

 私は、それでも足りないと思った。

 西村を家に上げて素裸にして、裸のまま天井からぶら下げた。鬱血するほど長時間ではない。 

 ものの10分ほどの間だ。

 私は竹刀を手にすると、西村を滅多打ちにした。

 気がつくと、ボロボロになった竹刀が2本床に転がっていた。

 西村の身体のあちこちから赤黒い血が噴き出している。気のせいか、あたりには血の匂いが立ち込めていた。

 私はさすがに自分のおこないを悔いた。人にやらせるべきことを自分でしてしまった。

 それも仕方ないか。極道の世界では幹部にあたる男に脅される。西村はそんな舞台に私を引っ張り出したのだ。黙っているわけにはいかない。

西村とのバツが悪い再会

「同じような目を、味おうてわかったろう。堪忍したるから、詫び入れて、二度とワシの前に顔を出すな。出て行け!」

 西村を帰らせた。

〈下手したら、そのまま電車の線路に飛び込むかもしれんな〉

 そんな危惧もあった。だが、現実のものとはならずに済んだ。

 その後、西村とは3回ほど会うことがあった。京都駅の在来線ホームで二度、新幹線ホームで一度。

 私は京都・大津方面に行く際、いったん新幹線で京都駅まで行く。自動車は先乗りさせておき京都で乗り換えるのだ。

 あるとき、京都駅で電車を降りた。ふと脇に目をやると、見覚えのある顔があった。誰あろう、西村嘉一郎その人である。

 電車を乗り継ぐところだったのだろうか。ホームにぼんやりと立っていた。

 そうしているうちに、向こうも気づいた。まともに視線がぶつかった。

 西村にしてみれば、さすがにバツが悪すぎるに違いない。何とも言えない複雑な表情を浮かべていた。頭だけは一応下げて見せる。こちらから何がしかのものを言う気にはとてもなれなかった。

(大下 英治,許 永中/Webオリジナル(外部転載))

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