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「卵を投げつけられた高校生も」在韓日本人がみた、戒厳令後の“リアルな現状”〈旅行者が注意すべきは…〉

文春オンライン / 2024年12月12日 11時0分

「卵を投げつけられた高校生も」在韓日本人がみた、戒厳令後の“リアルな現状”〈旅行者が注意すべきは…〉

12月6日、デモに参加する人々 筆者撮影

 44年ぶりの「非常戒厳」宣言に揺れる韓国。いまの韓国のリアルな状況とは? 韓国在住のライター・東山サリー氏が現地の様子を寄稿した。

◆◆◆

たった6時間で解除された非常戒厳

 ユン・ソンニョル大統領が突如として発表した非常戒厳宣言により、いま、韓国は揺れに揺れています。日ごとに変わってゆく状況を、現地に暮らす一人として、そわそわとした気持ちで過ごしています。

 私が暮らすのは韓国の首都・ソウル。平日は現地の企業で会社員をしているのですが、現在もいつも通りオフィスに出勤していますし、友達とも遊びます。ソウルに暮らす人々みんながみんなデモに参加しているわけではありませんし、以前と変わらぬ日常を送れています。

「ソウル旅行を取りやめにするべきか」と悩まれている方も多いと思います。まず、景福宮(キョンボックン)の前にある光化門エリアや、汝矣島(ヨイド)にある国会議事堂周辺は避けることをおすすめします。聖水(ソンス)や漢南洞(ハンナムドン)、弘大(ホンデ)、蚕室(チャムシル)など観光スポットとして人気のエリアをはじめ、デモが開催されている一部の場所以外はいつも通りの時間が流れています。とはいえ、いつ、どのように状況が変化するのかはまったくの未知数です。駐韓日本大使館の公式SNSやホームページには最新情報が掲載されるので、行政の公式情報をチェックしておくとよいかと思います。

 非常戒厳が出たのは12月3日の深夜22時過ぎのことでした。あまりの突然の発表に、大荒れになるSNSのタイムラインや、各局がニュースのライブ配信をするYouTubeを一晩中食い入るように見ていました。

 はじめは、「来月のライブが中止になったらどうしてくれるんだ!」などと、なんとも呑気な怒りを覚えるほどだったのですが、「非常戒厳」の内容を確認し、「夜間11時以降の外出は控えるように」「出版・言論の統制」など、まるで戦時中のような規制が行われることを知り背筋がぞっとしたのです。さらには、国会前に停められた戦車や国会に軍人が入っていく映像が拡散され、その様子は現実とは思えず、ただただ驚き、ドラマを観ているようでした。

 その後、4日未明には、非常戒厳の解除要求決議が出席した190名の国会議員全員の賛成で可決。民主化以降はじめて、44年ぶりに出された非常戒厳はたった6時間で解除されました。その圧倒的スピードに、国民の手で民主化を勝ち取った国の、民主主義への思いの強さを感じました。韓国のお国柄である「빨리 빨리 (はやくはやく)」が政治でも生かされていた一幕だったとも感じました。

「マジ?」韓国人のリアルな反応は…

 周囲の20~30代の韓国人のリアルな反応を振り返ると、「70年代じゃあるまいし……」と民主国家でありえない、あまりにも時代錯誤だとあきれたものが目立ちました。さらにはウォンの値下がりや株価など経済面を心配している人たちも多くみられました。SNSのタイムラインには、次のようなコメントが。

〈「今、2024年であってる?」

「夢かな?」

「これ国家がするってマジ??」

「国会議事堂へ行くべき?」

「だから投票は慎重にしないと……」

「明日出勤しなくてもいいよね?」

「マシな方を選んで、しぶしぶユン大統領に投票したけど、次の大統領を誰がやるの? イだけは嫌だ」

(SNSの書き込みより引用。すべて原文は韓国語で、邦訳は筆者によるもの)〉

 若者層の意見としては、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表に対する拒否感が多いように見えます。「あいつはマジでやばいやつだ」という反応も。

 中には、あまりのスピード感に「ぐっすり寝て、起きたらすごいことが起きてた」というコメントもありました。また、韓国の知人たちの反応で興味深いなと感じたのは、経営者やビジネスマンたちが「韓国へ旅行に来てくれなくなるのでは」などと、海外からの韓国の評価を気にかけていたこと。状況を客観視している人たちが多かったように思います。

 さらにネットには、「民主党が不正選挙をおこなったという証拠をつかむためだった」「トランプ氏と相談した可能性が高いのでは」などという話もごく少数ですが挙がっています。ただ、現在の韓国の空気感ですと、ユン大統領や与党を支持あるいは擁護するようなコメントをすれば、まるで非国民かのような扱いをされるでしょう。

卵を投げつけられた高校生も

 12月7日、野党が国会に提出したユン大統領の弾劾訴追案は不成立となりました。投票開始からすぐに与党議員たちは可決を防ぐために国会から退席。与党議員たちの氏名が新聞に掲載されたのですが、まるで“逆賊”かのような扱いです。「何千件もの悪口メールが届いている」と、個人のSNSアカウントで明らかにする与党議員もいます。

 ユン大統領の出身高校が、生徒の服装を一時的に自由化したというニュースも出ています。制服を着ているだけで悪口を言われたり、登校中に卵を投げつけられるといった被害が発生したための措置とのことです。

 弾劾訴追案の投票が行われる前日の6日には、ユン大統領の弾劾を求めるデモ集会のけたたましい音楽が、光化門エリアにあるオフィスの中まで鳴り響いていました。帰宅時もキャンドルデモをしていたので、見学をしてみました。 

 余談ですが、光化門エリアでは毎週土曜日何かしらのデモが開催されています。参加者は年配の方が多く、規模やテーマもその都度異なります。韓国のトロット(演歌)と歌謡曲をミックスしたような音楽が流れ、音楽にのってプラカードを振っていたり……。「あれは年配者のフェスだよ(笑)」なんていう韓国人の友人もいました。

 国会議事堂前や各所で行われていたキャンドルデモでは、K-POPアイドルのペンライトを持参している人も。筆者個人としては、民主主義の意味を改めて考えさせられる光景でした。しかし、異なる意見が“逆賊”扱いされ、一方への攻撃が激化していることに不安も覚えています。ただ、確かなのは、韓国中がこの混乱の行く末を案じているということです。

(東山 サリー)

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