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ポケモン人気でも、バトル要素でもない…新リリースされたアプリ「ポケポケ」が、たった1ヶ月で300億円超の莫大な収益を生み出せた“納得の理由”

文春オンライン / 2024年12月16日 6時0分

ポケモン人気でも、バトル要素でもない…新リリースされたアプリ「ポケポケ」が、たった1ヶ月で300億円超の莫大な収益を生み出せた“納得の理由”

画像は『ポケポケ』公式X(旧Twitter)アカウントより

 スマートフォン向けアプリとして配信されている『Pokémon Trading Card Game Pocket』(略称『ポケポケ』)が爆発的な人気を獲得している。

『ポケポケ』は、ポケモンを題材にしたトレーディングカードゲームを遊べるアプリである。モバイルアプリの各種データ分析を行う「AppMagic」によると、本作は配信から 1ヶ月で2億ドル(300億円/1ドル150円換算)を超える収益を生み出したと推定 されている。DL数は3000万を越えており、ほかのポケモン関連アプリに大きな差をつけているほどだ。

 そもそもポケモン自体が人気のあるコンテンツではあるし、基本プレイ無料のスマホアプリは大きな利益を生みうる存在だ。しかし、なぜここまでヒットしているのだろうか?

そもそもここ数年は“驚くべきTCGブーム”

 まず最初に押さえておきたいのが、そもそもトレーディングカードゲーム(TCG)がブームになっているところだ。

 物理媒体で遊ぶ昔ながらの「ポケモンカードゲーム」、つまりポケモンのTCGは1996年から歴史が続いているカードゲームである。そのほかのTCGも人気が根強く、「マジック:ザ・ギャザリング」や「遊戯王」など、かなり長い歴史を持つ作品も増えている。

日本の玩具市場規模は2023年度に初の1兆円超え

 そして、ここ数年カードゲーム・トレーディングカードの市場は右肩上がりで、 日本玩具協会の発表 によると、2023年度には2774億円市場になっているほどだ。

 この数字は現実にも反映されている。2022年ごろには秋葉原でTCG専門店が急増しているとされ、2024年の現在は都心から離れたショッピングモールのような場所でもそういったショップが当たり前になってきたような状況だ。

 あるいはショッピングモールのゲームセンターにはTCGのカードが景品となったクレーンキャッチャーがあったり、あちこちにオリパ(非公式に販売されるTCGのオリジナルパック)自販機が設置されていたりと、異様な熱気といえるほど。少し前では考えにくい状況だろう。

 2023年にはNHK『クローズアップ現代』でTCG特集が組まれており、そのカードの高騰ぶりが紹介されている。カードのなかには希少価値が高いものもあり、かつ時間が経っても数が増えないものは高騰しやすい。ヒカキンが通称「かいりきリザードン」を5000万円で購入したのは有名だろう。そこまでいかずとも、レアカードは数千円~数万円、ものによっては数十万円で取引されるのだからかなりのインパクトだ。

 一部のカードがここまで高騰するとなると、当然ながら投機目的で購入する人が出てきたり、レアカードを転売する人も出てくる。なお、オランダではゴッホ美術館とポケモンのコラボが実施されて特別なプロモカードが配布されたのだが、当然のように大混乱を起こしたそうだ。こうなるとますます人気は加熱していき、TCGを遊ばない人もカードを欲しがるようになる。

 もちろん、ポケモンというキャラクターコンテンツの人気も重要である。各地にあるポケモンセンターを見てみれば、観光に来たであろう外国人がたくさん詰めかけており、さまざまなグッズをたくさん手にとっている。言うまでもなく世界で大人気のキャラクターコンテンツだ。

 TCGのブームがあるうえ、世界的コンテンツのポケモンが掛け合わさっているのだから『ポケポケ』に注目が集まるのは当然だといえる。

日本はデジタルの「ポケモンカードゲーム」に飢えている市場だった

 とはいえ、賢明な読者はこう指摘するだろう。「ブームになっているのはリアルなTCGだし、デジタル(スマホ上)の遊びである『ポケポケ』では転売ができないだろう」と。

 至極もっともである。『ポケポケ』が2億ドルを超える収益を生み出したのには、日本が置かれている特殊な背景がある。

 前出のAppMagicの分析によると、本作の収益のうち約42%が日本からのものだとされている。しかし、日本でのDL数は全体の8%(100万程度)であり、24%を記録した米国には遠く及ばない。にも関わらず、なぜか日本からの強烈な支持があるのだ。

 これは、今まで日本向けに「ポケモンカードゲーム」のデジタル版が存在しなかったことが影響していると考えられる。

 海外ではPCで遊べるデジタル版「ポケモンカードゲーム」が存在していたのだが、日本向けにはサービスが行われなかった。潜在的な要望があったにも関わらずお金を使う機会がなかったわけで、ゆえに日本で特に大きく盛り上がったのだろう。

「バトル」ではない…巧妙な“沼”への誘い

 また、アプリの内容も見事である。本作は起動すると最初にカードパックを剥かせ、どんなカードが入っているのかとドキドキさせてくれる。しかも、毎日無料で2パック開封できる仕組みだ(開封できるようになると通知が来る設定まである)。

 TCGというと集めたカードで対戦する部分を思い浮かべる人も多いかもしれないが、最初の一歩は「集める楽しみ」だ。TCGのカード集めはアナログなギャンブルに近いおもしろさがある。レアなカードが当たれば嬉しいし、ポケモンに愛着を持っている人ならば好きなカードは集めたいものだろう。

 基本プレイ無料のゲームにおけるガチャがこれだけ人気になっていることを考えれば、デジタルの遊びだとしてもレアカードが当たるのは嬉しいものだ。何より『ポケポケ』ではデジタルならではの表現もカードデザインに取り込んでいる。

 ガチャに類する遊びはソーシャルな遊びでもある。ガチャで何を引いたかがSNS上の話題になるように、TCGも開封報告が盛り上がる。

『ポケポケ』では「ゲットチャレンジ」というシステムがあり、これは開封結果を公開しつつ他プレイヤーと共有するものだ。任意の開封結果を共有できるわけではないのだが、“当たり”を引いたユーザーは他者から褒められる仕組みになっている。

 最初は無課金で遊ぼうと思っていても、コレクションの楽しさに目覚めて課金することになる流れはよく理解できる。毎日無料で2パックという設定もよい。これだけでは物足りないのでもう1パック増える月額課金をしたくなるし、ソーシャルな遊びを加速させるため、あるいは対戦に必要なカードを求めてもっとカードを引くようになっていくだろう。

 なお、『ポケポケ』は課金の上限を定めており、1日で最大120パックまでしか引けない。節度を持って遊ばせる姿勢もきちんと見せているわけだ。

 スマホでTCGアプリを出す場合、やはりカジュアルなプレイヤー層が多くなるだろう。ゆえにコレクションを前面に押し出した『ポケポケ』は見事である。

 記事執筆時点の『ポケポケ』は拡張パックが3種類しかないが、2024年内に新しい拡張パックが追加される予定である。また、一部のカードをトレードできる機能も追加されるそうだ。バトルに関しても今後要素が充実していくだろう。

 まずはコレクションからはじめ、カジュアルな層をTCGの沼へと沈める導線がよくできている。『ポケポケ』は見事であると同時に恐ろしさも感じるゲームアプリといえよう。

(渡邉 卓也)

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