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「日本は敵性国家」「親日外交をすべて覆す」韓国大統領候補は“反日”で知られ…日韓関係のゆくえを左右する“時期”とは

文春オンライン / 2024年12月13日 11時0分

「日本は敵性国家」「親日外交をすべて覆す」韓国大統領候補は“反日”で知られ…日韓関係のゆくえを左右する“時期”とは

韓国の最大野党『共に民主党』の李在明代表 ©AFP=時事

〈 「大統領の自業自得」「民主主義を壊した」あまりに突然の“非常戒厳”…ユン大統領(63)に対する韓国での“リアルな反応”〈現地記者が解説〉 〉から続く

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する2回目の弾劾訴追案の採決が、12月14日にも行われる見込みだ。現在、一部の与党議員からも“賛成”の呼びかけがなされ、弾劾案が可決される可能性が高まっている。もし尹大統領が退いた場合、次期大統領はいつ、誰に決まるのか?

 現在の最有力候補は野党代表の李在明氏。韓国で「反日闘士」と言われ、過激な発言も目立つ、その人物像とは。日韓関係に起こりうる変化について、韓国在住のジャーナリスト・金敬哲氏が寄稿した。

◆◆◆

高まる尹大統領への批判

 12月7日、尹錫悦大統領に対する弾劾案が「不成立」となった。韓国憲法によると、大統領の弾劾には在籍議席(定数300)の3分の2、すなわち200議席以上の賛成票が必要だが、108議席の与党『国民の力』議員の大半が投票に参加しなかったからだ。『国民の力』は“弾劾反対”という党の方針を決めたが、反乱票が出ることを懸念して国会を退席したのだ。

 だが、野党『共に民主党』(以下、『民主党』)が「毎週土曜日ごとに弾劾案を表決に付す」と宣言したため、現在の尹大統領への批判が高まった世論を勘案すれば、いつまで『国民の力』が持ちこたえられるかは未知数だ。早くも若い議員を中心に、「党の方針ではなく弾劾を望む国民世論に従う」と宣言する者も出てきている。

もし弾劾案が可決されたら…次の大統領は?

 もし12月中に弾劾案が可決されたら、次の大統領はいつ決まるのか。韓国憲法によると、国会で可決された弾劾案は、憲法裁判所で審議を受ける手続きが必要だ。2004年の鉉盧武(ノ・ムヒョン)大統領と2017年の朴槿恵(パク・クネ)大統領それぞれの弾劾案審議を参考にすれば、判決までは約2~3ヵ月かかる。

 憲法裁で弾劾案が「合憲」とされれば、尹大統領は直ちに退かなければならず、大統領選挙によって60日以内に新しい大統領を選出しなければならない。すなわち、早ければ来年4月か5月には大統領選挙が行われると考えればいい。

次期大統領としての支持率が5割を超える「反日闘士」

 今のところ、来春に大統領選が行われるなら、『民主党』の李在明(イ・ジェミョン)代表が次期韓国大統領に選出される可能性が高い。戒厳令以降の世論調査を見ると、次期大統領としての李代表の支持率は5割を超える。その反面、『国民の力』の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は1割にも満たず、その後を呉世勲(オ・セフン)ソウル市長、洪準杓(ホン・ジュンピョ)大邱市長、曹国(チョ・グク)元法相*などが一桁の支持率で追いかけており、李代表を除けば全て泡沫候補のような存在だ。
*曹国元法相は、12日に実刑判決が確定し、議員職を失い大統領選の立候補ができなくなった

 進歩系(左派)の李代表が大統領になれば、韓国の外交戦略は今とは全く異なるだろう。特に、「反日闘士」と言われている李代表だけに、日韓関係は文在寅( ムン・ジェイン)政権時代よりも険しくなると思われる。

これまでの対日外交をすべて覆す

 李代表は、尹政権を「親日売国政権」と非難してきた。『民主党』が中心になって作成し、12月4日に韓国国会に提出された尹大統領の1回目の弾劾案には、弾劾の理由の一つとして尹大統領の「親日外交」が挙がっていたほどだ。

〈「(尹大統領が)いわゆる『価値の外交』という大義名分の下、地政学的な均衡を度外視したまま、北朝鮮、中国、ロシアを敵視し、日本中心の奇異な外交政策に固執している。日本に傾倒した人物を政府の主要な職務に任命するなどの政策を展開することで、北東アジアでの孤立を招いて戦争の危機を触発し、国家安保と国民保護義務を投げ出してきた」(※12月4日に韓国国会に提出された1回目の弾劾案より)〉

 李代表は尹政権で進めてきた対日外交をすべて覆すものと予想される。まず、尹政権の間で水面下に沈んでいた元徴用工訴訟問題が、再び韓日間の緊急懸案として浮上する可能性が極めて高い。

「日本企業の韓国内財産を売却して賠償すべきだ」

 李代表は大統領候補の時代から、「日本企業の韓国内財産を売却して元徴用工に賠償すべきだ」と積極的に主張してきた。2018年、三菱重工業を対象にした韓国最高裁判所の損害賠償訴訟で勝訴した元徴用工および遺族たちは、「賠償金を受け取ることができるよう、三菱重工業の韓国内資産を差し押さえて売却してほしい」と韓国裁判所に要請。2021年9月、韓国裁判所は三菱の商標権と特許権を売却せよという判決を下した。

 これに対して三菱側が控訴をすると、李代表は「時間稼ぎをしている」と批判。「日本政府は強制徴用賠償判決を速やかに履行しなければならず、韓国政府はさらに積極的に解決に乗り出してほしい」「遅れた正義は正義ではない」と主張した。

第三者弁済案による解決を「国の恥」などと批判

 いっぽう尹政権は2023年3月、日韓国交正常化の恩恵を受けた企業からの寄付金をもとに、韓国政府傘下の財団が日本企業の代わりに元徴用工の賠償金を支払うという「第三者弁済案」を提示し、日韓の最大懸案である元徴用工訴訟問題の解決を試みた。これによって、POSCO*などの韓国企業が41億ウォンを集めて基金を作り、最高裁で勝訴が確定した15名の原告のうち、3名は拒否、12名が基金を受け取った。
*韓国最大の鉄鋼メーカー

 このような韓国政府の解決案について李代表は「反民族的、反歴史的」「外交史最大の恥辱」「国の恥」などと猛攻した。

 李代表が政権を握れば、この「第三者弁済案」は白紙となり、まだ解決されていない賠償金に対しては、文政権時代に戻ることとなるだろう。前述した、第三者弁済案を拒否した3名の他にも、新たに1審で勝訴した原告らが出てきているからだ。係争中の元徴用工訴訟は少なくとも60件あるとされている。

 財団の基金は3億ウォンしか残っていないとされる。現状で少なくとも120億ウォンが不足したまま、尹政権の「第三者弁済案」は破産に終わる可能性がある。“李在明大統領”が誕生した際には「日本企業の韓国財産を売却して元徴用工遺族へ賠償金を支払う」というシナリオへ進むかもしれない。 

「日本は軍事的敵性国家」という持論を持つ

 日韓GSOMIAの破棄も予想される。2023年3月、日本で開かれた日本の岸田首相(当時)と尹大統領の首脳会談では、両国の首脳が日韓GSOMIAの「正常化」を宣言した。すると李代表は「日本の自衛隊が韓半島(朝鮮半島)に駐留する可能性がある。戦って防がなければならない」と、野党支持者を扇動した。彼はかねてより「日本は軍事的敵性国家」という持論を持っている人物で、日韓GSOMIAに対して強い反対をしてきた。

 新潟県にある「佐渡島の金山」のユネスコ世界遺産登録の取り消しのための運動が、韓国で展開される可能性もある。

「佐渡島の金山」ではかつて朝鮮半島出身者が働いていたことから、韓国政府は「強制労働被害の現場だ」として世界遺産登録の方針に反発していた。だが、今年7月に韓国政府が合意したことが明らかになると、『民主党』は「合意を撤回せよ」という決議案を国会で可決させた。10月には、李代表がかつて知事を務めていた京畿道(キョンギド)議会の民主党議員らによる抗議運動が佐渡市で行われた。

 李代表が大統領になれば、韓国国会で170議席近くを占めている『民主党』となんらかの反日法案を作り、韓国人の反日感情を刺激するかもしれない。

弾劾審議の結果が先か、李代表の判決が先か

 現在の状況で、李代表の大統領当選を阻止する方法は、次期大統領選挙前に李代表の公職選挙法違反に対する最終審議判決が出る道だけだ。李代表は前回の大統領選挙の過程で虚偽の発言をしたとして公職選挙法違反の罪に問われており、今年11月の1審で「懲役1年と執行猶予2年」の有罪判決を受けた。この判決が終審で確定すれば、李代表は今後10年間、被選挙権が剥奪され、次期大統領選挙への出馬が不可能になる。

 最高裁は6ヵ月以内に終審を出さなければならず、来年5月頃には終審が出る可能性がある。もし、来年2月とみられる2審でも有罪判決が維持されれば、終審で覆る確率はほとんどない。

 尹大統領がもし国会で弾劾されても、弾劾審議には2〜3ヵ月の時間を要する。弾劾審議の結果が先か、李代表の裁判の終審が先か。それによって、韓国の運命が決まるだろう。

(金 敬哲)

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