「オータニを逮捕しろ」「イッペイはスケープゴートだ」大谷翔平の元通訳が引き起こしたニッポンでは報じられない“借金トラブルの闇”――2024年読まれた記事
文春オンライン / 2024年12月30日 11時0分
大谷翔平選手の専属通訳を務めてきた水原一平氏 ©時事通信
2024年、文春オンラインで反響の大きかった記事を発表します。スポーツ部門の第3位は、こちら!(初公開日 2024/03/22)。
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米野球界に激震が走っている。
大谷翔平選手と7年間にわたって二人三脚で歩んできた専属通訳の水原一平氏が違法賭博をして作った借金が、大谷選手の銀行口座から、違法賭博運営者に返済されていたというのだ。正確な金額は不明だが、米スポーツチャンネルESPNによると、少なくとも450万ドル(約6億8000万円)が大谷選手の口座から送金されたという。
当初、水原氏は「彼は私のために返済すると決めた」と話していたのだが…
水原氏は、20日、ロサンゼルス・タイムズが同氏の違法賭博疑惑をすっぱ抜いた後、ロサンゼルス・ドジャースから即刻解雇された。
FBIが元ドジャース選手ヤシエル・プイグ氏と元マイナーリーグ選手ウェイン・ニックス氏が関与したとされる違法賭博事件を捜査していたことに端を発していると報じられている。法廷記録によると、ニューポートビーチ在住のニックス氏が主導した賭博の捜査で、ヤシエル・プイグ氏(無罪を主張している)を含む少なくとも十数人が起訴されたという。
この捜査の中で、ロサンゼルス・エンジェルスの本拠地があるオレンジ郡在住の賭博運営者マシュー・ボウヤー氏も調査を受け、その中で、大谷選手の名前が浮上したというのだ。ロサンゼルス・タイムズの問い合わせに対し、大谷選手の代理人が水原氏の行動を調査したところ、今回のスキャンダルが発覚したようだ。
それにしても、なぜ大谷選手の銀行口座から送金がされたのか?
当初、大谷選手の広報担当者はESPNに対し、大谷選手が水原氏が賭博で作った借金を肩代わりするために送金したと語ったという。広報担当者は19日夜、水原氏をESPNに紹介、水原氏は90分にわたるインタビューを受け、詳述している。
昨年、水原氏は大谷選手に、賭博で作った借金を肩代わりするよう頼んだというのだ。その時のことについて水原氏は、「大谷選手は明らかにハッピーではなかった。そして、もう2度と私がこのようなことをしないよう、私を助けると言った」「彼は私のために返済すると決めた」と話している。
そして、「翔平が賭博にまったく関与していなかったということを知ってほしい。私はこれが違法であるとは知らなかったということを知ってほしい。私は教訓を学んだ。スポーツ賭博は2度とやらない」と訴えている。
水原氏の借金は2022年末時点で100万ドルを超えていた
そもそも、水原氏はボウヤー氏とどこで出会ったのか? ESPNによると、二人は2021年、サンディエゴにあるポーカーゲーム場で出会い、水原氏はその年の終わり、賭博を始めた。しかし、水原氏は負け続け、借金は2022年末までに100万ドルを超えて、さらに膨らんで行ったという。
「私は賭博が下手だ。2度とやらない。勝てなかった」「自分で穴を掘ったのに、その穴はどんどん大きくなり、そこから抜け出すためにはより大きな賭けをしなければならなくなり、負け続けることになった。雪だるま式のようなものだ」
負け続けて借金が雪だるま式に増え続けたために、さらに賭博を続けたということか。
また、ESPNによると、水原氏は、大谷選手が借金の返済に同意した後、自身のコンピューターでログインし、水原氏の見守る中、数ヶ月にわたって(賭博運営者に)電子送金をした、送金の説明欄には、ボウヤー氏が「ローン」と入れるように言ったことから「ローン」と記したと話している。
さらに、「なぜ、大谷選手はボウヤー氏ではなく水原氏に直接お金を渡さなかったのか?」との質問に対し、水原氏は「大谷選手は、お金に関して私を信用していない」「彼(大谷選手)は私が賭博で金を失くすことを望んでいなかった」「私は大谷選手にお金を返すと話した」などとも話している。
ESPNが、大谷選手が送金を助けたという水原氏の主張を大谷選手サイドにぶつけると、大谷選手のスポークスマンは大谷選手の代理人弁護士にコンタクト、代理人弁護士は「大谷は“大規模窃盗”の被害者だ」との声明を出した。水原氏もまるで代理人弁護士の声明に歩調を合わせるかのように、「すべて私のせいだ。すべて私がしたことだ。私はあらゆる結果に直面する覚悟ができている」と大谷選手は同氏の賭博や借金、借金返済について何も知らなかったと、ESPNに対してした発言を全面的に撤回したのである。
確かに、事の成り行きを見る限り、どうもおかしい。そもそも、大谷選手のスポークスマンはFBIに調査されているような違法賭博運営者が絡んでいる非常にセンシティブな話であるにもかかわらず、なぜ、大谷選手が水原氏の借金を払ったと話し、水原氏をESPNに紹介してインタビューを受けさせたのか? また、なぜ、水原氏は後になって、大谷選手が借金を肩代わりしたという前言を撤回したのか?
米国のSNSでささやかれる大谷翔平に対する数々の疑念の声
当然のことながら、アメリカのSNSでは「怪しい」という疑念の声や「“Cover up”=隠蔽」という声が多々あがっている。
例えば、なぜ、水原氏は大谷選手の銀行口座から送金できたのかという疑問がみられる。
「通訳なのに、どうして、水原氏にオータニの銀行口座が与えられていたのか? 会計士は何をしていたんだ」
「オータニが、何ミリオンドルものお金が口座から消えたのを知らなかったとはとても信じられない」
確かに、大谷選手ほどのセレブなら、お抱えの会計士がついていて当然だろう。しかし、一緒に球場まで行くような、近い友人でもあった水原氏である。水原氏のことを完全に信頼し、お金の管理も任せていたのだろうか? しかしまた、そうとも言えない。前述したが、水原氏は、ESPNのインタビューで「大谷選手はお金について私を信用していない」と言及している。
賭博をしていたのは大谷選手で、水原氏がスケープゴートにされていると決めつけるような根も葉もないコメントも多々見られる。
「オータニを逮捕しろ」「通訳はスケープゴートだ」
「オータニが100%賭博していたんだろう。通訳は代わりに罪を被っているんだ」
「オータニが賭博をして、彼の友人であり通訳でもある一平をスケープゴートにしているんだろう。オータニが何も知らないわけがない」
「通訳はまさにスケープゴートだ」
「イッペイは、スキャンダルからオータニを救っているんだ」
「最大のスキャンダルは賭博をしていたことではなく、オータニが保身のためにイッペイを犠牲にしている可能性があるということよ」
さらには「オータニを逮捕しろ」という心ない声まである。
様々な疑念や憶測が広がる中、詰まるところ、大谷選手に対する見方はこの一言に集約されるかもしれない。それは、「イッペイのスキャンダルは、オータニを良くは見えなくした」という声だ。大谷選手の片腕と言えた水原氏のスキャンダルは、確実に、大谷選手のイメージダウンに繋がったのではないか。
その大谷選手は沈黙を守ったままだ。そんな沈黙も、さらなる疑念や憶測の広がりに拍車をかけることが懸念される。
今後、捜査機関による捜査とともに、新事実が出てくる可能性もある。沈黙を守っているMLBやドジャース、そして、大谷選手は、果たして透明性を持った対応をするのだろうか? それとも、人の噂も七十五日、水原氏のスキャンダルがたち消えるのをただ待ち続けるのだろうか?
(飯塚 真紀子)
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