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「脳が寄生虫に食い荒らされている」ロバート・ケネディ次男の“数奇な運命”〈トランプが要職に起用〉

文春オンライン / 2025年1月9日 6時0分

「脳が寄生虫に食い荒らされている」ロバート・ケネディ次男の“数奇な運命”〈トランプが要職に起用〉

イラスト 澤井 健

〈 「冷血!」「人でなし!」「副大統領候補の目はないな」…トランプ側近に大ブーイングが起きた“意外なワケ” 〉から続く

「週刊文春」の町山智浩さんの人気連載『言霊USA』をまとめた最新刊『 独裁者トランプへの道 』。

 トランプの返り咲き再選までの400日が詳しい現地ルポとともに詳細に報告されている。

 第2次トランプ政権において「政府効率化委員」「国土安全保障長官」「厚生長官」にそれぞれ指名された、ヴィヴェク・ラマスワミー、クリスティ・ノーム、RFKジュニアは一体どんな人物か? 連載時のコラムを紹介する。

◆ ◆ ◆

ケネディ一族からは縁を切られ…

 第3の大統領候補だったロバート・ケネディ・ジュニア(70歳。以下、RFKジュニア)は、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥で、1968年の大統領選に民主党から出馬する直前に暗殺されたロバート・ケネディの次男。

 だが、民主党のロイヤル・ファミリーともいわれるケネディ一族からは縁を切られている。反ワクチンの陰謀論者だからだ。

 RFKジュニアはもともと環境問題を専門とする弁護士で、はしかなどの混合ワクチンが子どもの自閉症の原因だとする裁判を担当。この説こそ科学的に否定されたが、RFKジュニアはワクチン反対派のリーダーとして政府と対立していった。

 コロナ禍で政府がワクチン接種を義務付けると、それに反対する人々の陰謀論は、世界を裏から支配する国際陰謀ネットワークDS(ディープ・ステート)や、トランプが選挙で負けたのはそのDSの陰謀だとするQアノンなどの陰謀論とからんで、膨れ上がった。

「携帯電話の5G電波がコロナを感染させる」

 そんなデマまで喧伝していたRFKジュニアを大統領にしたいと考える人は多くないが、それでも世論調査の支持率は5%ほどある。現在、トランプは支持率でカマラ・ハリスに負けているが、RFKジュニアの5%をつかめば逆転できる。

 というわけで、トランプはRFKジュニアに閣僚の席を約束し、RFKジュニアは9月27日には接戦州ミシガンのトランプ集会に現れて、自分の支持者に「私ではなくトランプに投票してほしい」と呼びかけた。

「民主党は何千万ドルもの資金を使って私をクレイジーに見せようとしている」

 その集会でRFKジュニアは民主党への恨みをそう語った。

 いや、そんな大金を使う必要はない。RFKジュニアはほっといても勝手にクレイジーなことばかりしているからだ。

セミヌード写真を友人に見せて自慢

 この1週間前、RFKジュニアとの不適切な関係を理由に、ニューヨーク・マガジン誌の政治記者だったオリヴィア・ヌッツィ(31歳)が解雇された。

 そのきっかけは、RFKジュニアがオリヴィアから送られてきたセミヌード写真を友人に見せて自慢したことだという。妻帯者であるRFKジュニアは「ヌッツィとは一度しか会ってない」と否定しているが、オリヴィア・ヌッツィは「肉体関係はないけれど、親密になってしまいました」と認めており、この件で婚約を解消されたと報じられている。

 まあ、エロメールのやりとりくらい、クレイジーなことじゃない。でも、クジラの生首切断は?

 RFKジュニアの味方であるはずの環境保護団体「生物多様性センター」が、RFKジュニアがクジラの頭部を切断した件について連邦政府に調査を求めた。

 それは2012年に雑誌「タウン&カントリー」でRFKジュニアの娘キックが語ったことで、RFKジュニアが家族を連れてマサチューセッツ州の海岸を訪れた際に、たまたま海岸に打ち上げられていたクジラの頭部をチェーンソーで切断し、それを自動車の屋根に縛り付けて、ニューヨーク州の自宅まで持ち帰ったというのだ。

 RFKジュニアは動物の標本をコレクションしていたらしいが、クジラは保護動物なので死体といえど無断で自宅に持ち帰ることは連邦法で禁止されている。

 娘は帰り道をこう回想する。

「高速道路でスピードを上げると屋根の上のクジラの頭から垂れてきた何かの汁が車内に入ってきて、地獄でした」

 げえええええええええ。

 それだけじゃない。RFKジュニアは熊の死体をセントラル・パークに放置した。

マジでわいていた!

 2014年、マンハッタンのセントラル・パークで子熊が自転車とぶつかったらしき死体で発見され、「この大都会のど真ん中の公園にどうして熊が?」と地元のニュースになった。しかし、RFKジュニアが女優ロザンヌ・バーに語ったところによると、それはRFKジュニアのイタズラだったという。

 ニューヨーク郊外のハドソン渓谷で自動車にはねられて死んだ子熊の死骸を拾ったRFKジュニアは、それをわざわざセントラル・パークまで運んだという。

 今年8月、RFKジュニアがXに「その子熊を拾ったのは、毛皮をはいで、肉は食べようと思ったから」と投稿していたのをニューヨーカー誌が報じて、さらに顰蹙を買った。

 思わずこう言いたくなる人も多いだろう。

 RFKジュニアって頭に虫でもわいてんじゃないの? と。

 ところがなんと実際にわいていたのだ。

 2012年、RFKジュニアは頭がぼうっとする、などの症状に悩まされて脳のCTスキャンを撮影した。それを見た医者が「脳が寄生虫に食い荒らされている」と診断したのだ。

 これは豚条虫で、ちゃんと焼いてない豚肉を食べることで感染する。何しろ死んだ子熊を食べようとした人だから、どこから感染したのかわからない。

 現在はRFKジュニアの寄生虫は死んだそうで、今年5月にはXで「私はあと5匹の脳内寄生虫食べたって、大統領選でトランプやバイデン(当時)と討論しても負けない!」と息巻いていた。

 だから食べちゃ駄目だって!

(まちやまともひろ 1962年生まれ。映画評論家。米カリフォルニア州バークレー在住。BS朝日「町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN」が不定期放送中。当連載2022年夏からの1年分をまとめた単行本『ゾンビ化するアメリカ』(小社刊)が発売中!)

(町山 智浩/週刊文春 2024年10月17日号)

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