東大不合格→横浜国立大学進学→筑波大学不合格→三重大学転学→名古屋大学不合格…華麗なる“仮面浪人”人生を送ってきた男性の“意外な現在地”
文春オンライン / 2024年12月27日 17時0分
〈 「失敗してしまったらどうしよう」「精神的な不安感が消えることはない」外資系企業を目指す男性が、デメリットを理解しながら“仮面浪人生活”を続ける“ある理由” 〉から続く
膨大な時間を受験勉強に費やし、ようやく大学に入学するも、そこからさらに別大学への転学を目指す人がいる。
せっかく合格した大学でキャンパスライフを楽しむでもなく、バイトに明け暮れるでもなく、あえて「仮面浪人」の道を選び、彼らを再び机に向かわせる原動力は、コンプレックスなのか、打算的計画か、それとも別の何かか――。
ここでは謎に包まれた仮面浪人経験者へ行ったインタビューのもようを紹介する。
取材協力:「仮面浪人・再受験交流会」
〈藤井大作さん(仮名/20代)の遍歴
・東北地方のトップ進学校から東京大学を目指し、浪人。
・東大再受験も叶わず、後期入試で横浜国立大学へ進学。
・文系から理系に転じ、1年後に筑波大学を受験するも失敗。
・同年の後期入試で三重大学工学部へ転学。
・三重大学3年生時に名古屋大学へ編入しようとし、失敗。
・大阪大学大学院へ進学。
・現在は社会人1年目。〉
◆◆◆
本当に興味関心のある分野を学びたい
――藤井さんの受験遍歴はすごいですね。
藤井 受験オタクのようなところがあるのは自覚しています(笑)。
高校時代は評価の高い大学に行くことを優先し、東京大学でリベラルアーツを学びたいと思っていたんですが、不合格で、そこから、浪人を経て、再度東京大学に不合格、横浜国立大学に入学し、さらに1年後には理系に転向したという経緯があります。
仮面浪人中の自問自答を通じて、卒業後のキャリアにつながるような、本当に興味関心のある分野を学びたいと改めて感じるようになったことが、この遍歴につながっていると思います。あと、いろいろな学問を深く覗き込みたくなる性分なんですよね。
仮面浪人は孤独な戦い
――「仮面浪人・再受験交流会」に入会して良かったことはありましたか?
藤井 私にとってはとても良かったですね。やはり仮面浪人は孤独な戦いですし、精神的に支えてもらった部分も大いにあったと感じています。精神的な部分だけではなく、詳しい受験情報を教えてもらえたり受験期の過ごし方を共有できたりするのもありがたかったですね。
また、会員だけのLINEグループがあるのですが、創設者の松尾一樹さんが感じた受験に関する雑記がとても考えさせられるもので、私の胸には響きました。
もう一度人生をやり直すとして、仮面浪人を選ぶかは微妙
――藤井さんは不本意な大学受験結果だった人に対して、積極的に仮面浪人を薦めたいですか。
藤井 いや、積極的に薦めることはありません。まず前提として、仮面浪人はしないほうがいいに決まっているんです。あくまで私の場合、仮面浪人をした先でたまたま良い出会いがあっただけで、もう一度人生をやり直すとして仮面浪人を選ぶかは微妙ですね。
――それはなぜでしょうか。
藤井 社会に出遅れてしまうじゃないですか。それに、学費諸々の負担を親にかけることになってしまいます。
私の場合、両親ともに地方で生まれ育ったからか都会志向があったので、首都圏の大学へ進学が叶ったことを満足に感じてくれていたんです。それだけに、私が仮面浪人したい旨を話しても、「何が不満なのか」となかなか納得してくれませんでした。確かに、両親の気持ちもよくわかります。
腹を決めて道を突き進む覚悟がないと難しい
――そんな両親に対して、どのような感情をお持ちなのでしょう。
藤井 仕送りなどの経済的負担を両親にかけることになってしまう点については、申し訳なく思っていました。幸い、私は編入学受験までは仕送りをもらって、それ以降は給付型奨学金と返還型奨学金を組み合わせることによって生活していたんですが、経済的な問題は多くの人にとってネックになると思います。
私の両親は教育に理解のある人たちです。それでも兄弟が他にいるなどの事情があって、一度入った大学に在籍しつつ仮面浪人をするという選択は手放しに応援できるものではなかっただろうなと思います。
私としても、仮面浪人のサークルに入っていながらも、仮面浪人を称賛するつもりはありません。やはり仮面浪人とは、人生を少し軌道修正するための手段であってそれ以上でも以下でもないと思っています。
不本意な大学へ入学したとしても、そのまま通った先に大切なものが見つかるかもしれないし、本当の正解はわからないと思うんです。だから、仮面浪人の道を選ぶ人は、腹を決めて道を突き進む覚悟がないと難しいのではないかと私は思っています。
(黒島 暁生)
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