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「リアル二刀流として3度目のスタート」大谷翔平の底知れぬ“野球欲”

文春オンライン / 2024年12月25日 11時0分

「リアル二刀流として3度目のスタート」大谷翔平の底知れぬ“野球欲”

大谷翔平選手 ©文藝春秋

 投打「二刀流」として球界の常識を覆してきた大谷翔平が「一刀流」として打者に専念した2024年。想像を超えるインパクトとともにMLB史に残る大記録を刻み、チームをワールドシリーズ(WS)の舞台へと導いた年となった。

 8月23日、レイズ戦の9回。劇的なサヨナラ満塁本塁打を放ち、メジャー史上6人目となる「40本塁打&40盗塁」に到達。試合後、祝福のウォーターシャワーを浴びた大谷は、「ドジャースに来て、今のところ一番の思い出」と振り返った。最高の結果にも、「今のところ」と注釈を付ける俯瞰した視点こそ、大谷の底知れぬ「野球欲」の一端だった。迎えた9月19日には、’23年WBCで世界一を奪還したフロリダ州マイアミ、ローンデポパークで自身初の3打席連続アーチを含む6打数6安打10打点の離れ業で、史上初の「50本塁打&50盗塁」を達成した。

「一生忘れられない日になるんじゃないかと思います。これだけ打てたことは、多分人生でもないので、自分が一番ビックリしている感じです」

 大谷の驚異的な活躍に全米が沸いた。日本でも首都圏だけでなく大谷の地元・岩手でも号外が配られるなど、異例の盛り上がりだった。一方で、大谷自身にとっては、初めてのポストシーズン進出が決まった記念すべき1日でもあった。

「メジャーリーグに来てからずっと夢に見てきたところ。素晴らしい日になったんじゃないかと思います」

 ’23年オフ、エンゼルスからFAとなった大谷は、空前の争奪戦の末、スポーツ史上最高額となる10年総額7億ドル(約1015億円=当時のレート)でドジャースと契約を交わした。その際、大谷自身の提案もあり、今後10年間は年俸200万ドルに設定し、2034年以降の10年間で毎年6800万ドルずつを後払いにするという異例の条項を盛り込んでいた。その理由として、自らの将来的なビジョンを含め、あらためて世界一への強い思いを口にした。

「野球選手としてあとどれくらいできるかは正直誰もわからない。勝つことが今の僕にとって一番大事かなと思います」

 ’24年7月に30歳を迎え、昨季までに2度の右肘手術を受けた大谷にとって、今後つねに第一線でプレーできる保証はない。しかも自らの高額年俸がネックとなり、チームが戦力補強を躊躇(ためら)うようであれば、勝ち続けることは難しい。自ら申し出た年俸の後払いこそ、長年、勝つことに飢えてきた大谷の「野球欲」の顕著な表れだった。

 この間、すべてが順風満帆だったわけではない。ドジャース入団後のキャンプ中には結婚を電撃的に発表するなど、公私ともに新天地での再出発を期したはずだった。ところが、3月に韓国で行われた開幕シリーズの際、それまで全面的なサポートを受けていた元通訳・水原一平氏の違法賭博事件が発覚。球界を揺るがす大騒動へと発展した。

 事件発覚直後はメディアやSNS上で様々な憶測が飛び交い、いかに大谷といえども野球に集中できる状況ではなかった。それでも3月末には自ら会見を設定。高額な金銭の動きや賭博行為への自身の一切の関与を否定した上で、それまでの経緯と複雑な胸の内を、「言葉にするのが難しい。気持ちを切り替えるのは難しいですが、シーズンに向けてまたスタートしたい」と明かし、騒動に区切りを付ける形でリセットした。

激動のなか結果を残し、迎える来季

 右肘手術、移籍、結婚、元通訳の違法賭博事件など、目まぐるしい環境の変化を経ながらも、’24年の大谷は前人未到の記録を残し、公式戦162試合と初のポストシーズンをWSまで戦い抜いた。

 その間、投手としてのリハビリも継続してきた。3月末から2日に一度の投球プログラムを開始。グラウンドでの近距離のキャッチボールから、8月末に初ブルペン入りした後も、強度と距離を慎重に少しずつ増していく作業を繰り返した。打者として豪快なアーチを架ける試合とは別人のような地味な歩みだった。

 公式戦終了後、大谷は真美子夫人だけでなく、ファンの間でも人気を集める愛犬デコピンの存在、周囲のサポートに対する感謝の思いを口にした。

「1人でいるよりも野球以外を考える時間が多くなった。それがいい方向に、グラウンドにいる時に逆に集中できるようになったのかなとは思うので、そこはもちろん感謝したいと思います」

リアル二刀流として3度目のスタート

 迎えるメジャー8年目の’25年は、リアル二刀流として3度目のスタートとなる。過去2度の手術を経たこともあり、もし今後、大きな故障に見舞われた場合、二刀流との訣別を含め、重大な岐路に立たされる可能性は捨てきれない。打者に専念した’24年はWSまでフル稼働したものの、今後は登板日前後のプレー機会を考慮するなど、リカバリーを最優先する傾向が強まるに違いない。ドジャースとしても2033年まで契約が残っており、何より大谷のキャリア全般を考慮した緊密なコミュニケーションと球団としての管理体制も問われることになろう。

 ’25年は今永昇太、鈴木誠也を擁するカブス相手に日本での公式開幕戦が予定されている。大谷のリハビリが順調であれば凱旋試合で開幕投手への期待も高い。

「そのぐらいのクオリティーでキャンプを迎えて、そのぐらいの信頼感で送り出してもらえるのが、自分にとっても自信になるんじゃないかと思います」

 投手として20勝&サイ・ヤング賞、打者として50本&本塁打王の同時達成など、周囲の期待はどこまでも膨らんでいく。確かにこれまでの常識では考えられない領域に違いない。だが、そんな常識を大谷はことごとく覆してきた。年齢的に30歳台に入り、選手として脂が乗りきった大谷が、次はどんなパフォーマンスで世界を驚かせるのか。熱狂的なファン以上に、大谷自身が自分へ期待しているような気がしてならない。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2025年の論点100 』に掲載されています。

(四竈 衛/ノンフィクション出版)

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