「カメラの後ろは大騒ぎでしたよ。みんな走り回ってて」1989年に起きた“伝説の放送事故”の驚くべき新事実――てれびのスキマ「テレビ健康診断」
文春オンライン / 2024年12月21日 6時0分
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番組冒頭、画面いっぱいにテロップが表示された。
「この番組には不適切な表現が含まれておりますが、1989年に起きたザ・タイマーズの放送事故の検証ドキュメンタリーであるため一部あえて当時の表現をそのままに残しています。」
それは、『拝啓!ザ・タイマーズ~あれから35年~』と題されたドキュメンタリー。11月16日にCS放送のフジテレビNEXTで2時間の完全版が放送されたものが、1時間に再編集され、「ダイジェスト版」として地上波で放送された。
完全版では、タイマーズ結成に至る経緯も詳しく語られるが、地上波版は、1989年10月13日の『ヒットスタジオR&N』での演奏について語られた部分を中心に編集されていた。いわゆる「生放送の放送事故」の代名詞的な放送だ。本来は「偽善者」を歌う予定となっていた2曲目を騙し討的に変更し、「FM東京(現・TOKYO FM)」を名指しで「腐ったラジオ」などと罵倒した曲を歌ったのだ。その歌詞には放送禁止用語も含まれていた。番組では、その出演部分をほぼノーカットで放送(さすがに放送禁止用語の部分はピー音で修正されていたが)。そこに「カメラの後ろは大騒ぎでしたよ。みんな走り回ってて」(三宅伸治)、「副調整室からダーッと降りてきて、(レコード会社担当者の)近藤(雅信)さんを囲んでサーッと連れて行ったんですよ」(川上剛)といったバンドメンバーの生々しい証言が添えられる。慌てぶりがよくわかる。
そんな中、驚くべき事実が明かされた。このときディレクターを務めていた水口昌彦が言うのだ。
「実は生じゃなかったんです」
『ヒットスタジオR&N』は、古館伊知郎とGWINKOを司会に据えて生音楽番組としてスタートした。だが、思わぬ問題があった。GWINKOが16歳だったのだ。深夜労働ができない年齢(ただし、当時はまだ曖昧な規定だったという)だ。そのため、この回は当日の夕方に収録し、撮って出しの形だったのだ。編集する時間がなかったからそのまま放送したというが、ある種、確信犯的な気持ちがあったのではないか。いまはいかに問題を起こさないかが重視されがちだが、当時のテレビ、特にフジテレビは、そうではなかったように思う。いかに“事件”を起こすか。それが正義だったに違いない。事実、水口もプロデューサーに放送の可否を確認したそうだが、「いいんじゃない?」という答えだったという。
「スタジオの誰もが悪いことをしているという認識がなくて、瞬間を捉えろ的なジャーナリズムじゃないけど、形式とは違うところの面白さを撮り逃すなみたいな空気はありました」(水口)
向こう見ずな時代の勢いがそこには確かにあった。
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『拝啓!ザ・タイマーズ~あれから35年~』
フジテレビ 特別番組
https://otn.fujitv.co.jp/b_hp/924200172.html
(てれびのスキマ/週刊文春 2024年12月26日号)
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