『ウルトラセブン』でキリヤマ隊長を演じた中山昭二が河崎実監督の『キリヤマ』に出演…その後電話の向こうで無言になったワケ
文春オンライン / 2024年12月31日 6時0分
©藍河兼一
〈 円谷プロから着ぐるみを借りて……大学時代の河崎実監督がつくった完コピ8ミリ映画『√ウルトラセブン』 〉から続く
小学生で『ウルトラマン』に衝撃を受けて特撮映画ファンになった河崎実監督。大学時代に8ミリで『ウルトラセブン』の完コピ映画『√ウルトラセブン』などを制作した。次いで特撮番組のレジェンドに出演を依頼したが……。第一線で活躍する映画監督に、自主映画時代を振り返ってもらう好評インタビュー・シリーズの第8弾。(全4回の2回目/ 3回目 に続く)
◆◆◆
大学卒業後に作った『キリヤマ』
―― 『キリヤマ』という作品もありました。
河崎 『キリヤマ』は、大学を出てどうしようかなと言っている時に、映画だけは作りたいから作ったという短編ですよね。
―― 中山昭二(注1)さんが出ていた。
河崎 そうそう。
―― 本人が特別出演的に冒頭で「『キリヤマ』という作品が出来るそうで、楽しみです」とかコメントして。本編のキリヤマ役は同級生にやらせたんだけれど。
河崎 で、内容が、キリヤマが単なるストーカーで。
―― 「なにっ」という名台詞を言う。
河崎 名台詞を言うだけで、ストーキングするっていうね。ちゃんとしたオチがある短編映画なんですけどね。ある意味『世にも奇妙な物語』みたいな感じだったな。
―― 中山さんご本人は、完成作を見てどんなことをおっしゃっていたんですか?
河崎 電話したんですよね。「どうですか?」と言ったら、無言でしたね。『地球防衛少女イコちゃん』という僕のデビュー作に出てもらおうと思って電話したんですよ。そうしたら、ノーコメントでしたよね。
―― でも、『イコちゃん』に出演されましたね。
河崎 怒ってないですよ。よく分かってないんじゃないですかね。要するに、俺たちがレジェンドだと思っている中山昭二さんとか小林昭二(注2)さんとか森次晃嗣(注3)さんとか黒部進(注4)さんも、やっぱり子ども番組として演じているわけなので。本当にあんなに深い内容がウルトラシリーズにあるとは思ってないんですよね。だから、役者としてはすごい技術で演じたわけだけどね。それは後年になって俺の映画にいろいろ出てもらってから聞いて分かったことなんですけど。
昭和の特撮ヒーローを演じた役者たちが出演
―― 特撮番組の役者さんたちが河崎さんの映画ではたくさんキャスティングされていますもんね。
河崎 ほぼ制覇しましたね。『ウルトラマン』『セブン』『仮面ライダー』『帰ってきたウルトラマン』『ミラーマン』『シルバー仮面』。ほぼ昭和の特撮ヒーローには出てもらった。そういう好きな人たちに俺の映画に出てもらうと、俺はこの人たちをかつての役、例えばハヤタだとしか思えないんですよ。役者さんは嫌うんだけど、俺はそのハヤタがずっと後で何かやってるというような役をやっぱり作っちゃうんだよね。
―― 演じてもらう役にそのイメージがあるわけですね。
河崎 そうなんですよね。俳優はそういうのは嫌うけどね。でも俺は、ハヤタがその後いろいろあってこうなってるんだという設定を考えるのが好きなんですよね。
―― 僕も平成ウルトラの映画で歴代の主役の方々に出演していただくもの(注5)をやったんですけど。
河崎 やったもんね。
―― 接してお話ししてみると、皆さんおっしゃるのは、こんなに残る番組だとは思わなかったと。子ども番組の一つとしてやっていたけど、マニアがこんなに育つとは思わなかったと。
河崎 そうそう。そのマニアの筆頭だけど。
―― 筆頭ですよね。
河崎 しかもすげえ嫌なマニアだよね(笑)。
―― でも、そういうマニアがこれだけ研究して、オマージュ作品を作ったからこそこういうポジションになったということもあるんじゃないですかね。
河崎 そうだよね。夢にも思わなかったですよね。まさか実相寺昭雄監督に俺の映画の監修をやってもらえるとは。
実相寺昭雄監督が監修に
―― 実相寺さんは監修で何本もクレジットされていますけれども、どういうふうに頼んだんですか?
河崎 「監修をお願いします」って。脚本と絵コンテを全カット書いて持って行ったんですよね。で、「どうですか」と言ったら、パラパラッと見て、「まあ、脚本や絵コンテを捨てることも大事なんだよ」とか言って、ポイッと。ああ、そうかと。映画を撮っていて、コンテどおりに撮らなきゃいけないんじゃ駄目なんだよね。プロというのは時間とお金の制約でやっているわけだから。だから、例えば雨が降ってきたとか、いろんなことが起きるじゃないですか。そうしたら、割り切ってカットするところはカットすると。臨機応変にやれという教えなんだなと勝手に理解して。だから『いかレスラー』とか、その後も全部監修だもん。名前だけ。
―― でも、題字も書かれたりしてますよね。
河崎 内容に関しては何も言ってないね。
―― 内容を確認するとかチェックすることはないんですか。
河崎 ちゃんとギャラを振り込んで、「いいね。飲みに行こう」っていう(笑)。
―― そうやって応援してくれていたという感じですかね。
河崎 やっぱり実相寺監督に一番影響を受けたね。あなたは飯島(敏宏)監督だろうけどね。
―― そうですね。系列としては。
河崎 俺は実相寺監督なんですよ。
―― 映像スタイルとかテーマが実相寺作品の良さですかね?
河崎 というか…この話は長くなるからね(笑)。とにかく天才なんでね。何もかも。映像的にもね。考えも。フランス語もペラペラだし。とにかくやってることがただ者じゃないよね。『ウルトラマン』もああいう変化球でやったけど。のちに映画に行っちゃったけど。あまりにもキャパシティが大きすぎる人なんで、俺達凡人にはなかなか分からなかったけどね。俺たちは怪獣に特化して喜んでるけど、エロティシズムとか、フランスの映画の世界とか、いろいろやってるから。ちょっと太刀打ちできない人だったよね。ただ、飲んでバカ話してるのは本当に面白いしね。それは本当に影響を受けました。
―― 会うと真面目な話はあまりされない方でしたか?
河崎 気心を許した人にはそういうバカばっかりですよ。
『エスパレイザー』が超満員に
―― 河崎さんは、学生時代8ミリを作りながら、プロになろうとは思ってなかったんですか?
河崎 あわよくばと思っていたんだけど。映画を作るのが楽しくなってきたから。『エスパレイザー』(注6)という映画が池袋の文芸坐のル・ピリエでロードショーをやって、超満員だったんですよ。
―― ですよね。
河崎 今でも覚えてるけど、1回100人以上入ったんだからね。4回で約500人。超満員ですよ。今の俺の映画の動員数より多いっていう(笑)。それで結果を出して、その後、CMをやろうと思ったんですよ。映画は大変だから。でも、CMの世界は挫折しちゃってね。
CMの会社に就職したけれど
―― 就職はされたんですか?
河崎 したんですよ。東急エージェンシー系のプロダクションに。そうしたら、俺の企画が全然通らない。そういうバカ企画が。
―― CMの企画を出しても。
河崎 うん。ちょっと早すぎたんだよね。俺みたいな企画が通るのはもっと後だもん。ウルトラマンがラーメンを食うとか。その頃はまだ過渡期で、前の前の世代の人が監督、ディレクターをやってたから、俺たちの言ってることが全然分からなかったんだろうね。で、そのCMの会社の人もよくしてくれたんだけど、「やっぱり河崎君が作りたいのは映画なんだろう」と言われたりして、1年半ぐらいで辞めちゃったんだよね。でも、いい経験になってね。その時、市川準監督とも会った。誰だっけ、この連載で、市川準監督と。
―― 犬童(一心)さんが言ってましたね。
河崎 犬童さんが、市川監督から認められたっていう。
―― CM界の天皇だって。
河崎 天皇からね。でも、俺はCMをやっていて、市川さんが現場に来て。くろがね学習デスクかな。現場で見てて、「なるほど」という感じで見てたんだけどね。俺とは全然相いれないなという感じだったね。横を通過したという感じですよ。その時は糸井重里とかもいて。別にこっちは何者でもなかったからね。そんな経験を経て、『地球防衛少女イコちゃん』を作ったんですよね。
注釈
1)中山昭二 俳優。代表作『アナタハン』。『ウルトラセブン』のキリヤマ隊長を演じた。
2)小林昭二 俳優。『ウルトラマン』ムラマツ隊長を演じた。
3)森次晃嗣 俳優。『ウルトラセブン』モロボシ・ダンを演じた。
4)黒部進 俳優。『ウルトラマン』ハヤタを演じた。
5)『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06) 監督:小中和哉 出演:五十嵐隼士 黒部進 森次晃嗣 団時朗 高峰圭二
6)『エスパレイザー』(82) 8ミリ作品。1983年文芸坐ル・ピリエで公開。
〈 なぜ私は『松島トモ子 サメ遊戯』のような映画を作り続けているのか…「バカ映画」の巨匠・河崎実監督かく語りき 〉へ続く
(小中 和哉/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
初代『ウルトラマン』キャスト陣も衝撃…人気絶頂だったのに「突如打ち切り」 何があった?
マグミクス / 2025年1月2日 7時10分
-
円谷プロから着ぐるみを借りて……大学時代の河崎実監督がつくった完コピ8ミリ映画『√ウルトラセブン』
文春オンライン / 2024年12月31日 6時0分
-
なぜ私は『松島トモ子 サメ遊戯』のような映画を作り続けているのか…「バカ映画」の巨匠・河崎実監督かく語りき
文春オンライン / 2024年12月31日 6時0分
-
「Yahoo!ニュースになった時、5行で全部が分かる映画をずっと作ってきた」河崎実監督の“笑撃の映画術”
文春オンライン / 2024年12月31日 6時0分
-
ウルトラシリーズ人気を音楽で支えた冬木透さん セブンのモロボシ・ダンとアンヌ隊員追悼
産経ニュース / 2024年12月30日 19時6分
ランキング
-
1東野幸治 ヒロミと若槻千夏がTVから消えたのち再ブレークした理由を語る「はっきり言います」
スポニチアネックス / 2025年1月2日 20時39分
-
2伊藤沙莉、2025年初投稿で結婚に言及
モデルプレス / 2025年1月2日 22時9分
-
3東野幸治 2024年「完全に売れた」という意外な?タレント 佐久間宣行氏も共感「自分で言ってました」
スポニチアネックス / 2025年1月2日 20時3分
-
4TBS女子アナ退局報告ラッシュ…宇内梨沙、加藤シルビア、小倉弘子各アナが続々と年末年始に
日刊スポーツ / 2025年1月2日 18時37分
-
5正月の顔「格付け」年始特番歴代2位タイの21・2%!全国3287万人が視聴 平均視聴は1696万人
スポニチアネックス / 2025年1月2日 16時13分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください