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「自分がここでピリオドかなと思い、去年から単身ニューヨークへ…」森山良子76歳の“試練”の乗り越え方

文春オンライン / 2024年12月24日 6時0分

「自分がここでピリオドかなと思い、去年から単身ニューヨークへ…」森山良子76歳の“試練”の乗り越え方

(右から)森山良子さん、渡辺満里奈さん、松本孝美さん、野宮真貴さん

 今回のゲストは歌手の森山良子さん。75歳にしてニューヨークでジャズを学んだ話を中心に、趣味の手芸のこと、娘の夫である小木博明さんをはじめとする家族のこと、そして人生観を聞きました。チャーミングに年を重ねるための示唆に富んだ座談を 『週刊文春WOMAN2025創刊6周年記念号』 から一部を編集の上、紹介します。

大江千里さんとニューヨークで作ったジャズアルバム

野宮 新作『Life Is Beautiful』拝聴しました。とても素敵なジャズアルバム。

松本 ほんと、良かった!

渡辺 大江千里さんとニューヨークで作られたって。

森山 千里さんからお声がけいただいたんです。さかのぼれば、千里さんがジャズを勉強するために渡米する前だから15年以上前かな、ラジオ番組でおしゃべりさせていただいて。「えっ、ニューヨーク行くの? 何しに行くの?」みたいな感じから始まったの。私も日本からプッツリいなくなってアメリカへ勉強しに行きたいって思ってたんです、若い頃に。

 でも、これは全然言い訳なんだけれども、恋愛して子供が生まれたり、兄が若くして亡くなったり、いろんなことが重なったんです。私がいないわけにはいかないと、勝手に思い込んでいただけなんだけど、みんなの面倒を見なきゃいけないって気持ちがあったの。本当は2年ぐらい休んでアメリカへ行って、という計画を立てていたんです。でもそれも無理だな、これも運命だなって。

 そしてそこからずいぶんと長い年月が経って、私もこういう年齢になった。するとあるとき、千里さんから「一緒にジャズのアルバム作らない?」とお話をいただいたんです。

野宮 千里さんは以前からのお友達だったんですか?

森山 娘の(小木)奈歩が、若い頃に千里さんのファンクラブに入ってて、それで家でよく聴いてたんです。でもお会いしたのはそのラジオ番組が初めてでした。彼がそれまでのキャリアをすべて捨てて、ニューヨークに渡ることに私は本当にびっくりして。すごい行動力だなと思いました。

 それからは彼が日本に帰ってくるたびに、食事をしたり、飲んだりするようになったんです。私もジャズが大好きだから、彼が通うジャズ学校のことや、アメリカのジャズシーンの話を聞いて、「わあ、いいな、いいな。私もそういう夢があったんだけど、できなかったんだあ」なんて話をしてたの。だから、千里さんに言われたとき「やる!!」と即答しました。

松本 一も二もなく。

森山 すごく嬉しかった。自分がこれから何をやろう、何をやったらいいんだろう、ここでピリオドなのかな、そんなことを思っていたときだったので。「日本語のジャズ」というコンセプトも面白いなと思って。それで、去年の11月から単身でニューヨーク通いを始めたんです。

渡辺 え、1人で?

森山 いちばん最初はスタッフと一緒でしたが、2回目からは1人きり。

女史会 すごーい!!

先生から「前時代のジャズ」と言われて

森山 千ちゃんのスタジオがブルックリンにあるので、マンハッタンの中心部のホテルから通って。レコーディングが終わると一緒にご飯を食べて、ジャズの理論を千ちゃんから教えてもらったり。あと、ジャズ学校の先生にも習いました。

野宮 ボーカルレッスン?

森山 じゃなくて、一緒に歌って指導してもらうの。マンハッタン・トランスファーのジャニス・シーゲルさんのお宅に行って教えていただいたときは、ぶっ飛んじゃった。ルルリ~ルル、ルルリ~ルルルラ~♪って、あんな声ってある!? みたいな声を間近で。

 とにかく、ニューヨークへ行って気づいたのは、私のジャズは古いってこと。私はエラ・フィッツジェラルドとかサラ・ヴォーンとか、そういうのを聴いて育ったんです。父がジャズトランペッターだったから、家ではいつもそういう音楽が流れてて。だから、歌うとどうしてもそっちに偏っちゃう。すると先生が「良子さんのジャズは前時代のジャズです」って全否定(笑)。

女史会 え~っ!!

森山 とにかくきれいに、抑揚なく、喉を使わずに歌う。そして、目をつぶらない。もう目から鱗(笑)。

新しいジャズを勉強することで会得した歌唱法

渡辺 でも、自分の歌い方を否定されて、そこからまた新しいものに挑戦するって、難しくないですか?

森山 やる気満々(笑)。やっぱりいいアルバム作りたいし、古臭い歌い方のままでは、それを「いま」作る意味がない。あと、私は声にすごく興味があるんです。ニューヨークの先生は、喉じゃなくて顔のこのへん(眉間と鼻のあたり)から声を出せって言うの。それがどうしてもよくわからなくて。日本に帰ったときに、声楽の先生に質問したんです。お稽古のときにね。

野宮 ああ、子供の頃から師事していらっしゃる……。

森山 そう、坂上昌子先生。14歳からずっとクラシックの声楽を教えていただいていて。先生はいま88歳なんですけれども。

女史会 えーっ!!

ちなみに、更年期でダウンしたとかは?

松本 ちなみに、更年期でダウンしたとかは?

森山 案外絶好調で(笑)。大きな病気を経験したこともなく。あ、でも、1回、大腿骨骨折したことがあったの。7年くらい前かな。そのときは入院して、人工骨に替えて。でも、手術の翌日から歩けちゃって、5日目に退院。病院始まって以来の早い回復だったみたい。

女史会 すご~い!

森山 コンサートがあるので、早く治りたい一心で。

渡辺 あれ? じゃあ、ドラマでダッシュしたのは人工骨にしてからですか?

森山 そうそう。

女史会 うそーっ!!

「神様! また私に試練をくださるんですけえ!!」

森山 年齢って関係ないと思うの。精神年齢って変わらないじゃない。だから、肉体が衰えるのは仕方なくても、年のせいで何かを諦めるとか、そんなのはもったいないと思ってる。

野宮 だからこそ、ニューヨークでジャズを勉強して。

森山 結局、大雑把な性格だからなんです。悲しいこと、つらいこと、いろんなことがあったけれど、私はそのたびにキッと天を睨むのね。「神様! また私に試練をくださるんですけえ!!」(笑)。これは誰のせいでもない。「試練だ」と受け止めた方が楽なんです。そして、試練が去ったら忘れる。「ああ、そんなことあったっけ?」

渡辺 お肌がきれいだなとか、お洋服がかわいいなとか、良子さんを見てるとほんと、見習わなくちゃと思うところはいっぱいあるけれど、いちばん大切なのはそのマインドですよね。

森山 年を取らない人はいないんだから。日本人は人の目を気にしがちだけど、そんなの気にしない! って思えば大丈夫。仕事もそう。「もうやめたほうがいい」って言われても私は抵抗する。そのくらいの厚かましさがあっていいと思う。

1月に“喜寿”を迎える森山さん

野宮 年取っていいことって、その厚かましさかも。

松本 あれ? 良子さんってお幾つでしたっけ? お歳を聞くのは失礼ですが。

森山 いまは76。1月になると7が重なります。

女史会 見えないっ!!

森山 これを、子供たちが気づいてるかどうか。そういうの、みんな無頓着。「今日は母の日ですけどー」って言うと、「知ってるよー」って電話置かれちゃう。「誕生日なんですけどー」って言っても、「勝手に一人で歌って、お酒飲んで、うまいもん食べてるんでしょー」って。だから、私が77になることを知ってるのかなあ。ちょっと心配。

松本 小木さんに伝えておくと覚えててくれるかも。

渡辺 年中シラフだしね。

森山 そうね、小木にだけ言っとこうかしら。「喜寿って知ってる?」

●「私は絶対に変わらない!」と泣いた19歳の頃の気持ち、手芸に集中して“茹でアスパラ”が“焼きアスパラ”になってしまったエピソード、仕事と家庭の両立の苦労や、小木家との10年以上にわたる二世帯同居など、座談会の全文は 『週刊文春WOMAN2025創刊6周年記念号』 でお読みいただけます。

文:辛島いづみ 写真:鈴木七絵 ヘアメイク:三上津香沙(渡辺さん)

ヘアメイク:小野明美 スタイリング:内野陽文 衣装協力:nude vintage&closet(以上、森山さん)

もりやまりょうこ/1948年東京都生まれ。1967年「この広い野原いっぱい」で歌手デビュー。ヒット曲に「禁じられた恋」「涙そうそう」「さとうきび畑」「あなたが好きで」など。2008年紫綬褒章受章。ラジオ「オールナイトニッポン MUSIC10」月曜レギュラーパーソナリティー。大江千里プロデュースによる N.Y.録音のオリジナルアルバム『Life Is Beautiful』が発売中。

のみやまき/1960年北海道生まれ。ピチカート・ファイヴのヴォーカリストとして90年代渋谷系ムーブメントを起こす。2025年3月に恒例の東阪ビルボードライヴツアー開催。

まつもとたかみ/1965年大阪府生まれ。80年代後半、ソニーなどの名CMでCM女王と呼ばれる。本人がプロデュースした更年期世代の女性に嬉しいアイデア満載の『大人の女史会』×「natiaral」のコラボアパレルが発売中。

わたなべまりな/1970年東京都生まれ。86年、おニャン子クラブでデビュー。翌年の解散後も歌手、タレントとして活躍。2000年代には台湾旅、ピラティスのブームの火付け役にも。

『大人の女史会』に参加しませんか?

この会で話してほしいテーマ、お悩みを woman@bunshun.co.jp (件名を「大人の女史会」に)もしくは〒102-8008 東京都千代田区紀尾井町3-23「週刊文春WOMAN」編集部「大人の女史会」係までお寄せください。匿名でも構いませんが、「年齢・性別・職業・配偶者の有無」をお書き添えください。

(辛島 いづみ/週刊文春WOMAN 2025創刊6周年記念号)

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