「地下アイドルになるってバカじゃない?」メガバンクを辞めてアイドルに転身した“真っ赤な髪”の異色アイドルが、“世間の声”に思うこと
文春オンライン / 2024年12月29日 11時10分
アイドルグループ・NightOwlの折原伊桜さん ©深野未季/文藝春秋
〈 誰もが羨む「勝ち組生活」を捨てて“地下アイドル”に転身…メガバンクを辞めた“真っ赤な髪”の異色アイドルが明かす、銀行員時代の葛藤 〉から続く
ステージへの憧れを捨てきれずにメガバンクを退職し、現在は、デビュー6年目のアイドルとして活躍するNightOwlの折原伊桜さん。安定したイメージもある業界からの転職では、周囲からの辛らつな意見もあったという。
しかし、ファンを前にして歌声を届ける今は「誰かの理想を叶えるために生きているわけじゃない」と達観。ステージを目指すきっかけとなったZepp Namba(大阪)でのワンマンライブを目指して、堂々と「歌うために生きている」と胸を張る。(全2回の2回目/ 1回目から読む )
◆◆◆
銀行退職後、父と口をきかないほど険悪な関係に
かつて味わった、ステージで歌う感動をもう一度。その一心で、メガバンクの銀行員という超安定のキャリアを捨て、事務所のオーディションを受けた。
幼い頃から、両親が喜んでくれると信じた選択肢を「常に取ってきた」と言う。しかし、衝動に身を任せて退職届を提出。娘が自身のためにと選んだ道に当初、父は納得しなかった。
「退職届を提出して、上司による意思確認のための面談後に『銀行を辞める』と母に話したんです。当時、私が人生に悩み体調を崩していたのを知っていたので、母は受け入れてくれました。
でも、母づたいに聞いた父は怒ってしまって、実家暮らしでしたけど、そばを通っても口をきかないほど険悪でした。
再び、父と話せるようになったのはグループのライブです。母が連れてきてくれて、3、4年ぶりに話したんです。今では私を認めてくれたのか、熱心に応援してくれています」(折原伊桜さん、以下同)
「地下アイドルになるってバカじゃない?」と言われることも…
メガバンクの退職後には、アイドルとなった折原さんに周囲からも厳しい声が。大学時代、就職活動を共にした友人からの「せっかく努力したのに、もう辞めちゃうの?」「しかも、地下アイドルになるってバカじゃない?」という言葉の数々は、心に「グサグサ」と突き刺さった。
ただ、たしかに友人の意見もうなずける。安定した銀行員から不安定な印象もある芸能界への“転職”は、例えば、収入面での不安もつきまとうのは想像にたやすい。
しかし、折原さんは「決断した当時、収入は気にしなかった」と回想。当初は関心のなかったアイドルの世界へ飛び込み、プロとしての覚悟を決めた。
「人間関係の変化もあって、正直、遠のいてしまった友だちもいたんです。アイドルになったからには、ファンのみなさんをガッカリさせてはいけないので、男女で集まるご飯に誘われても『ゴメン。仕事が変わったので行けないや……』と勘違いが起きないように断ったり。でも、銀行員時代の同僚とか、応援してくれる友だちもいます」
「その見た目でアイドル?」アイドルデビュー後に受けた“洗礼”
アイドルデビュー後には、世間から厳しい“洗礼”を受けたこともある。
長身で赤髪の折原さんは、「童顔・小柄・黒髪」が人気のアイドル界では異色。過去には、彼女に対して「え、その見た目でアイドル?」と心ない言葉を浴びせる人もいたという。SNSに黒髪のウィッグを付けた写真を投稿すると「こっちの方がいい」と言われたこともある。
しかし、彼女はそういった言葉に「動じなくなった」と話す。それはなぜか?
「昔は周りの目を気にしていたけど、今は何を言われてもヘッチャラになりました。誰かの理想を叶えるために生きているわけじゃないので。アイドルになってからは『自分のために何を選択すればよいか』と常に考え続けています」
「誰もがNightOwlを知っている」ほど大きな存在を目指して
2019年8月にNightOwlのメンバーとしてステージデビューしてから、今年で6年目。自分のためにと突き進んできた世界で、折原さんは強くなった。
現在の目標は、Zepp Namba(大阪)でのワンマンライブ。憧れだったOLDCODEX(2022年5月に解散)のライブで「そこの赤い髪の子!」と指名されてステージに上がり、人生で初めて大勢の観客へと歌声を届けた場所だ。
いつか、「誰もがNightOwlを知っている」ほど大きな存在となってメンバーと目標のステージに立てる日を願い、グループの活動に情熱をそそぐ。
かたや、ソロアーティストとしての活動もあり、Xで「ステージに立つきっかけをくれた人」と公言したOLDCODEXの元メンバーであるYORKE.こと、Rest of ChildhoodのHALとの“対バン”を実現。2023年11月25日に行われた初めてのソロ名義での対バンは、彼女にとってかけがえない1日となった。
「HALさん宛に『私は今、歌っています。いつか、Zepp Nambaで歌うことがあったら見に来ていただけるとうれしいです』と書いたお手紙を送ったこともあるんです。
事務所のスタッフさんから『対バン相手はどうする?』と聞かれたときにHALさんの名前を挙げて、オファーしたら快く受けてくださって、私にとっては特別な意味のある『約束の日』でした」
「メガバンク退職を後悔していない」と断言するワケ
大学卒業から約3年勤めた、古巣のメガバンクへの未練はない。勇気をもって退職届を提出した選択肢は、けっして間違いではなかった。
「見るはずのなかった景色、出会えなかった人たちに囲まれて、この道を選んだ後悔はいっさいありません。
ライブでは、ファンのみなさんと通じ合えているし、実際、グループの曲『All Night Long』を披露したときにそう直感した日、終演後の特典会で私の思いが『届いたよ』と言われたこともあったんです。
フロアで応援する1人ひとりの顔はそれぞれ覚えていますし、ファンのみなさんのおかげでステージに立っている今『歌うために生きている』と胸を張って言えます」
撮影=深野未季/文藝春秋
(カネコシュウヘイ)
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