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「中国が強くなりすぎた」「中国企業が世界で天下を取り続ける」急成長中の経済大国インドが、それでも中国に勝てない“決定的理由”

文春オンライン / 2024年12月23日 6時0分

「中国が強くなりすぎた」「中国企業が世界で天下を取り続ける」急成長中の経済大国インドが、それでも中国に勝てない“決定的理由”

中国の上海 ©hoyano/イメージマート

 中国のビジネスニュースを毎日見ているのですが、今年は各所で言われている通り不景気だったようです。中国語で書かれた記事の端々から、不景気感がにじみ出ていました。

 その一方で、今年の日本では、“ネクストチャイナ”としてインドが取り上げられることが多くなったように思います。

 でも個人的には、インドはネクストチャイナになれないと思うんですよ。これは、私が中国を紹介してるライターだから、というポジショントークではありません。

 なぜなら、中国が強くなりすぎた。世界各国が中国企業に対して関税を数百%かけるくらい非現実的なことがない限り、中国企業が天下を取り続けるのではないか、と思っています。なぜ私がそう考えるのか。それをこれから解説していきます。

中国のECサイトの普及

 今年の前半、日本のメディアで「Temu」や「SHEIN」といったECサイトがよく取り上げられました。中国の商品を激安で販売していて、日本からだけでなく、世界中で激安商品が買えるようになっています。これまで以上に、ECサイトで中国商品が購入しやすくなったのです。

 ECサイトで商品を購入するのは、「安い」「質がまあまあいい」「確実に素早く届く」という点が便利だからですよね。中国のECサイトは、この要素を満たしているのです。海外の客が現地通貨で商品を購入すると、出店している企業の手元に確実に入金される決済方法も確立している。中国企業が世界中に商品を売るための仕組みがこの数年で出来上がったのです。

 中国企業が世界中に商品を売る仕組みは、2010年代後半頃から構築されるようになりました。ただ、当時はECサイトが生活に根付いている国がそこまで多くなかったため、中国企業が商品を売ろうとしても、ユーザーはEC自体を利用してない、というミスマッチがあったんです。

 しかし、2020年に新型コロナウイルスが感染拡大し、世界中で“家ごもり”が起きたことで、各国で一気にECサイトが普及した。

Amazonの“中国企業の締め出し”による変化

 2021年には、もうひとつ大きな事件がありました。Amazonによる中国企業の大規模な締め出しです。アカウントを閉鎖された事業者は5万店舗を超え、損失額1000億元超とも言われています。

 その後、中国の企業はAmazonではなく、「Temu」や「SHEIN」、「TikTok Shop」に出店するようになります。さらにアリババやテンセントが出資している「Lazada」や「Shopee」など、他国のECサイトにも商品を出すようになるのです。

 中国企業がAmazon以外の各国のECサイトに出店し、消費者もコロナを経てそれを利用するようになったのです。アメリカから制裁を受けた「ファーウェイ」は一時期スマートフォンを作れなくなりましたが、近年は逆境を乗り越え、スマートフォン事業が復活している。大雑把にいえば、それと似たようなことが起きたわけです。

中国商品が、海外で売れる仕組み

 そして、ECサイトに出品する中国企業の販売をサポートするために、海外への物流を担当する中国企業が世界各地に台頭します。例えば、中国とベトナムの国境付近には倉庫があって、ベトナムから注文があれば、すぐにそこから発送できるようになっているんです。

 アメリカが警戒するメキシコでも、中国企業による倉庫や配送などの物流網が整い、ECサイトで快適に中国商品を購入できるようになっています。

 物流だけでなく、ECサイトの決済支援を行う中国企業が世界各国にできています。その結果、中小企業が海外へ販売するハードルが下がり、自然と商品が海外で売れるようになっていくわけです。

インドでは、中国からの輸入額が1000億ドルを超えた

 さらに中国企業は、生産面でも世界展開を進めています。アメリカが中国製品の関税を高めた結果、多くの中国企業が、自社製品をベトナムやメキシコなどに再輸出貿易を行って販売したり、これらの地域で生産・製造できる体制を整えたりしています。

 ちなみにインドでは、中国からの輸入額が2023年度に1000億ドルを超えました。インドにある中国企業で製品を生産・製造する動きもあり、中国に依存しています。

 モノづくりだけでなく、物流の整備も中国のノウハウを参考にして展開。インド企業のバックには中国の投資ファンドがついていることが多く、専業の企業に投資を行ってサポートしています。

中国製品の品質は、世界全体で見れば悪くない

 少し長くなりましたが、このように中国のECサイトは「確実に素早く届く」サービスを世界中で実現できるようになっているんです。

 そして、「安い」「質がまあまあいい」という点についても、多くの国が満足しているんですね。

 日本ではしばしば「中国製品は品質が悪い」と言われます。とはいえ、中国製品の品質は世界全体で見れば、そこまで悪いわけではありません。偏差値に例えると、50台後半程度といったところでしょうか。

 もちろん偏差値60台後半の国から見れば、品質が悪いと感じるときもあります。しかし、偏差値40台か、それ以下の商品を作っている国と比べればかなりマシです。

 その偏差値40台の国のひとつがインドなのです。仕事と趣味を兼ねて、インドでデジタル製品や日用品などを購入したことがありますが、とてもじゃないけど中国のレベルまで至っていない印象です。

インド産iPhoneの品質の悪さが話題に

 比較的に知られているのは、インド産のiPhoneでしょう。イギリスの経済紙『フィナンシャル・タイムズ』がインド産iPhoneの品質の悪さを指摘した記事を掲載しています。

 記事ではこう書いています。中国を拠点とするサプライチェーン戦略からの移行に取り組んでいるAppleは、南インドの拠点に、カリフォルニアと中国から製品デザイナーとエンジニアを派遣し、製造の準備を整え、現地の人々を指導している。それは20年前に中国で構築したアプローチに似ている。

 しかし、アップルのサプライヤーの1つでインドの大企業のTataが運営する工場生産ラインでは、部品の半分は出荷できる品質に至っておらず、欠陥ゼロというAppleの目標には遠く及ばない状態だ、と。

 何年か前に中国での製造に携わる日本人に話を聞いたとき、「公式には言わないけれど」と前置きした上で、「同じ製品でも、日本で作られる製品のほうが中国で作られる製品より品質がいい」という話を聞きました。

 同じメーカーの同じ型番の商品は、世界中で同じ品質かというと、建前と本音は異なるようです。

インドだけでなく、ほかの国も中国を超えられない?

 先ほど「中国製品は偏差値50台後半」と書きましたが、中国では最高品質の製品もリリースしています。

 例えば、競技用ルービックキューブの「GANCUBE」。コンマ数秒を競う競技だけに、徹底的に滑らかに使いやすくして、スマホアプリにも対応した製品を開発しています。

 GANCUBEを製造しているのは「広州淦源智能科技有限公司」という中国企業です。製品は高価ながら、年3億元の売上を実現しています。

 中国のECサイトが世界中で実現している「安い」「質がまあまあいい」「確実に素早く届く」という要素をインドが満たせるのか、そしてそれを超えられるのかというと厳しいと思っています。

 それはインドだけでなく、ほかの国も同じです。インドはそれなりに成長はするとは思うのですが、高く評価しすぎると、「BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国を指す言葉)」のように言葉だけが独り歩きしてしまう気がしてなりません。

写真提供=山谷剛史

(山谷 剛史)

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