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再選後に「“もう辞めたい”という声も」…職員30人が告白した斎藤元彦知事へ“もの言えぬ空気”とは「理不尽な異動が怖い」

文春オンライン / 2024年12月29日 20時0分

再選後に「“もう辞めたい”という声も」…職員30人が告白した斎藤元彦知事へ“もの言えぬ空気”とは「理不尽な異動が怖い」

11月19日、就任記者会見で質問を聞く斎藤元彦兵庫県知事 ©時事通信社

〈 斎藤知事の「“選挙後の疑惑”をテレビは当初大きく取り上げなかった」兵庫県知事選に「テレビ不信」をもたらした“報道の穴” 〉から続く

 パワハラ疑惑・おねだり疑惑などの対応をめぐって県議会議員の全会一致の不信任決議案可決を受けて前知事の斎藤元彦氏が失職したことで実施された兵庫県知事選挙。11月17日に投開票が行われて斎藤氏が再選を果たした。

 これまでの数々のテレビ番組で改めて注目したいのが10月2日にNHKが放送した「クローズアップ現代」だ。タイトルは「兵庫県職員30人の告白“もの言えぬ空気”はなぜ生まれたか?」として、選挙前の斎藤県政がどのように運営されていたのか。それを職員の声を中心に再現した番組だ。(全2回の1回目、 後編 に続く)

◆ ◆ ◆

約4割が斎藤氏のパワハラを見聞きしたと回答

 再選翌日の記者会見で斎藤氏は「県議会と県職員の皆さんとの関係をしっかり前に進めていくことがすごく大事」「有権者が評価してくれたのは主に実現した政策」「政策をどう進めていくかが大事」「県職員も県議会も同じ思いをお持ちだと思う」などと話していた。

 今後注目すべきは、斎藤氏の再選で再び彼の下で働くことになった兵庫県庁の職員の心中だ。兵庫県議会の「百条委員会」が実施した県職員約9700人(回答は約6700件)のアンケートでは約4割が斎藤氏のパワハラを見聞きしたと回答している。

「知り合いの職員でも“もう辞めたい”という声も」

 この日のTBSの朝の情報番組「THE TIME,」では、現役の兵庫県職員の話として今回のSNSを使った選挙戦略について「SNSを駆使するやり方は構わないですが、伝える中身の問題ですよね。人のプライベートを晒す。あるいは嘘を言う。個人的には残念だと思います。知り合いの職員でも“もう辞めたい”という声も聞こえてきます」と失望の色を濃くしていた。

 さらに再選後、選挙戦略にかかわったと自らネット上に公表したPR会社の女性社長の行為が「公職選挙法違反」になるのかどうかが、選挙後にわかに焦点となった。12月2日、大学教授と弁護士が斎藤氏とPR会社社長を警察と検察に公職選挙法上の「買収」の疑いで刑事告発したことを発表。一方で告発状が受理されて捜査が進んだとしても、実際に裁判で決着がつくまでは3~4年はかかるという見方は根強い(同日のフジテレビ「イット!」)。万一、裁判で有罪になった場合でも斎藤氏は4年の任期を全うできる可能性があるという。

斎藤県政での「もの言えぬ空気」

 10月2日に放送された「クローズアップ現代」では、「もの言えぬ空気」が第一次斎藤県政では職場に蔓延していたとして、その実態を詳しく伝えている。

 第一次斎藤県政では、就任1年で58の事業の廃止や見直しのほか、当時700億円かかるとされた庁舎などの再整備計画の凍結や県立大学の段階的な完全無償化を実施した。

 知事が改革の司令塔として作ったのが、10人程度の幹部ら職員で構成される「新県政推進室」だった。以前は知事と各部局が個別に議論を重ねていた政策形成のプロセスを簡素化。迅速な意思決定を行えるようにした。その後、この「新県政推進室」も形式化し、“側近”と呼ばれる少数のメンバーで物事を決めていくようになったという。

「密室で取り巻きだけで決めて、どんどん進めていく」(OB職員=幹部)

「異論とか、多様な意見を別に求めているわけじゃない」(現役職員)

 このことが“組織の健全さを欠く事態”を招くことになった、と複数の職員が取材に明かしたという。

「敵か味方か。賛成か反対か。白黒をはっきりさせて、賛成のチームと反対に回るチームを分ける傾向があった。そうすると、いろんな意見がだんだん言いにくくなって声が届かなくなる」(OB職員=部長級)

 さらに人事権をちらつかされて圧力を感じたという職員もいたという。

 知事が打ち出した賛否が分かれる政策に意見を述べたOB職員は、後日、県幹部から「斎藤県政に刃向かうんだったら辞表を書け。さもなくば服従しろ」と迫られた。

 異論を言うと排除。異動させられてしまう。自然に知事の周囲にはイエスマンしかいなくなってしまう。知事は“裸の王様”のような立場になってしまったとOB職員(幹部)は証言した。こうしたことで職員たちは知事の言動に違和感があっても次第に声を上げられない状態に陥っていた。

「理不尽に異動させられることが怖い」

 複数の職員が知事のパワハラ疑惑を見て見ぬふりをした後悔を口にした。

「(パワハラ疑惑などを)看過していたということでいえば、批判はその通りだと思う。報復というか人事の面で見られた。そういうのを見ていると管理職も声を上げにくい空気になったり、(声を上げることに)二の足を踏んでしまう。好転しないどころか悪化する」(現役幹部職員)

「人間の心の弱さ。理不尽に異動させられることが怖い。異動させられることは不名誉だし、怖い。そういうことで意見が言えなくなる。幹部が意見が言えなくなると、その部下もさらに意見が言えなくなる。こんなに危ういとは思わなかった。こんなに簡単に崩れるんだと」(現役幹部職員)

「人間の心の弱さ」という言葉が印象的だ。県庁の職員は現役であれ、OBであれ、退職後に県がらみの仕事に就くことが多いので県のトップである知事の意向に逆らうことは現実的な不利益になってしまう恐れは強いはずだ。

 ある職員は“民意で選ばれた知事の意向に意見することは容易ではない”と心情を吐露した。

「何もできなかったふがいなさ。そういうものは感じるが、だからといって、じゃあ、何ができたのかといったら、根底から覆すようなことなんて本当にできなかっただろうと思う。選挙で選ばれた人が4年間はそこにいるわけだから。それは仕えないとしょうがない」(OB職員=幹部)

 番組が伝えていたのは、人事権を握る行政のトップが自分の考えを押しつけるばかりで異論を許さない恐怖政治だ。周辺にいる職員たちにとっては「恐怖」でしかなかったという実態。これが現代日本の出来事なのかと思わず、背筋が寒くなってしまう。

〈 「内部告発の“犯人探し”を徹底」兵庫県庁の職員は“特定”を恐れて顔も手も隠し…それでも「クロ現」に証言した“壮絶な背景” 〉へ続く

(水島 宏明)

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