《懲役19年》「兵庫県知事選でSNSが遂に…」“妻殺害事件”元長野県議・丸山大輔被告が綴った記者への手紙「不倫相手の出廷については」
文春オンライン / 2024年12月23日 15時10分
丸山大輔被告
〈 《懲役19年》長野県議・妻殺害事件 不倫がバレても「後ろめたくない」借金8000万円の元県議が述べた“珍証言”の数々とは 〉から続く
12月23日、妻を殺害したとして殺人の罪に問われていた元長野県議会議員の丸山大輔被告(50)に対し、長野県地方裁判所は懲役19年の判決を言い渡した。
初公判以降、一貫して起訴内容を否定してきた丸山被告。「週刊文春電子版」では、公判中の丸山被告から編集部の記者宛に届いた手紙の内容を報じていた。以下、当時の記事を再公開する。(初出:「週刊文春電子版」12月20日配信分/年齢・肩書きは当時のまま)
◆◆◆
〈私は無実であり裁判の中でこれを証明してきたと思うので、無罪判決でなければおかしいということです――〉
妻を殺害したとして起訴され、裁判で懲役20年を求刑された元長野県議会議員(自民党所属)の丸山大輔被告(50)が、小誌に手記を寄せた。裁判で無罪主張を続ける被告が、亡き妻への思いや自身の政治活動について問われ、綴った内容とは――。
不倫相手まで出廷した“異例の裁判”
2021年9月29日未明、長野県塩尻市の酒造会社「笑亀酒造」(現在は「和饗酒造」に商号変更)の自宅兼事務所で丸山希美さん(当時47)が殺害された事件。10月16日に裁判員裁判の初公判を迎え、夫の丸山被告は妻殺しについて一貫して無罪を主張してきた。
社会部記者が解説する。
「被告は犯行時刻に、塩尻市の自宅から約80キロ離れた長野市内の県議会議員会館にいたとして『現場には行っていない』と主張しています。裁判は
①被告の所在・移動の状況
②殺害の動機
③現場の状況と痕跡
④事件前後の被告の言動
と4つのテーマに分けて審理が進みました。殺害の動機に関わる審理では、被告の不倫相手まで出廷し、『事件後に被告から結婚を迫られていた』と証言するなど異例の展開で進み、11月26日に検察側が懲役20年を求刑して結審しています」
小誌では 11月26日配信の電子版オリジナル記事 で、証拠提出された希美さんの「覚書」や、被告人質問での被告の様子について報じている。「覚書」は日常の苦悩などをパソコンでつづった希美さんの日記であり、たとえば2016年9月、不倫現場を目撃したとして、こう記述している。
「部屋から出てきた2人」「後ろからどついたら…」
〈視察後に帰る予定が懇親会ができたから明日朝に帰ると言われてうそだとすぐに分かりました。電車で長野へ。(中略)部屋から出てきた2人。隠れたものの怒りは頂点に。後ろからどついたら今までに聞いたことのないような驚いた声を出しましたね。今まではなにを聞いても知らぬ存ぜぬ認めさえしなければなんとかなるという甘さがあったから現場を押さえるしかなかった。つらい現実をつきつけられた。そこから長い話し合い〉
検察側は公判で、こうした被告の女性トラブルと、希美さんの実家から受けている4000万円の借金が事件の動機となったと指摘した。
「被告の不倫相手は結婚を望んでいたが、希美さんとの関係が絶たれると妻の実家から借金の返済を迫られ、選挙活動への支援も得られなくなる。離婚せずに不倫相手との関係を続けるために、希美さんの殺害に至った――というのが検察の主張です。対して弁護側は、夫婦間にトラブルはなく、殺害する動機はないと真っ向から反論しました」(同前)
総勢21人の証人尋問を実施し、検察側は被告が犯行現場に行ったという状況証拠を積み上げたが、具体的な殺害方法は解明されず、決定的な証拠も不明のまま。判決を控えるのみとなった11月末、小誌記者が裁判後の被告に手紙を送ると、勾留されている長野刑務所から返信が届いた。
記者は前職の信濃毎日新聞時代から、逮捕前の被告に対し、亡くなった妻の遺族としてコメントをもらったり、県議として選挙への出馬意向を聞いたりして面識があった。逮捕後も勾留先に何通か手紙を送っていたが、返信が来たのは今回が初めてだ。
今回、手紙を通じて12個の質問を被告にぶつけた。審理が終わった今、被告は何を語るのか。下記が丸山被告から寄せられた手記の全文だ。(斜字は小誌からの質問内容、原文では記者の実名が書かれていたが、本記事ではMと改めた)
「週刊文春」記者に届いた手紙の全文
M様
ご無沙汰をしております。先日接見禁止が解除になり、何通かお手紙を頂きましたが、時期を逸したと思い、そのままにしてしまいましたが、改めてお手紙を頂いてどうしようか迷いました。不十分な遣り取りでは誤解を招きかねないこと、名高い御紙が私に好意的な内容になる筈が無いことからです。ですが今こうして手に筆をしているのは、私の返事が一体どう利用されるのかと、信毎から文春というMさんの生き様と、この2つの好奇心からです。
さて、質問にそれぞれお答えします。
①(結審した率直な所感は。検察側の主張を耳にし、感じたことは)については、裁判の最後の私の発言が信毎デジタル?に載っているようなのでご参照下さい。書ききれません。
②(逮捕・起訴後、自身の後援会や弁護士を通じ、無罪の主張などを発信しなかった理由は)外への発信が司法の手続や判断に影響すると思えなかったこと、私が何を言っても裁判で勝たなければ誰もまともに受けないだろうと思ったことなど。受手も情報が十分で無い筈なので判断に苦しむでしょう。
③(留置場で読んでいる本、面白かった本について)今ちょうど「香君2」(上橋菜穂子、文藝春秋)を読んでいます。上橋作「守り人」シリーズ(御社ではないかも?)も全て読みました。一番読んだのはジェフリー・アーチャー次いでダン・ブラウン、湊かなえ、さくら剛。面白かったのは「火星の人」「百年の孤独」「テスカトリポカ」「ジェノサイド」など。「十二国記」(小野不由美)も良かった。
④(どんなことを考えながら日々を過ごしているのか)裁判(結審)までは事件と証拠についてよく考えていました。今は特に何というものは無いです。
⑤(公判で自身の不倫相手が出廷するなど、女性問題が詳らかになったことについて、どう感じているか)別段どうも考えていませんが、裁判で取り上げられたことについては疑問に思っています。
⑥(子どもとはどのようにコミュニケーションをとっているか)誕生日にメッセージを送っています。
⑦(亡くなった希美さんに伝えたいことは)日々対話をしているので特にありません。
⑧(有罪判決が出た場合、控訴の意向は)迷っています。したくはありません。
兵庫県知事選にも言及
⑨(自身の政治活動について、達成したと思っていることや、後悔していることは)少子化対策と伝産品振興の議連の立上げから条例化まで(伝産品は立会えていませんが)を主導できました。後悔するようなことは無かったと思いますが。
⑩(政治家を続けていた場合、いずれ国政に挑みたい野心があったのか)少子化対策については、県だけでは難しい(本当は出来ると思っていますが)ので国の力があればより良いと思いましたが、外交、防衛が困難すぎて、私には無理だとも思っていました。
⑪(無罪判決が出たら何がしたいか。政治家に戻りたいという思いはあるか)子供たちや仲間と美味しいものが食べたいと思っています。政治に戻りたいとは思いません。
⑫(改めて、読者に伝えたいことは)日本の世論は今迄一方向で揺り戻しが無いと思っていて、これは大手メディアと受手の共同作業で成り立っていたと思いますが、兵庫県知事選でSNSが遂にこの構図を打ち破りました。真偽不明の情報も頂けませんが、メディアの世論誘導も頂けなかったので、受け手は今後より自由に判断できるようになり、一方向的な考え方や偏見から解放され、新たな偏見を持つことでしょうと伝えたいです。言い換えれば、私は無実であり裁判の中でこれを証明してきたと思うので、無罪判決でなければおかしいということです。
以上、推敲もせず思いつくままにお答えしてきたので、おかしなことを書いていてもお許し下さい。
面会は一日一件しか出来ず、予定があればお断りするしか無いのでおすすめできません。23日の結果をお待ち下さい。
いつかお仕事の話を聞けるのを楽しみにしています。
令和6年12月12日
丸山大輔
SNSが世論を動かした兵庫県知事選を引き合いに出し、「メディアに有罪に仕立てられた」とでも主張したかったのだろうか。
現職県議が逮捕されるという衝撃的な事件は、どのような顛末を迎えるのか。判決は12月23日午後1時半に言い渡される。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)
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