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「コレステロール値が高いほどガンになりにくい」「糖尿病の治療がアルツハイマーを促進する」和田秀樹『老いるが勝ち!』が医学界に問う「不都合な新常識」

文春オンライン / 2024年12月26日 6時10分

「コレステロール値が高いほどガンになりにくい」「糖尿病の治療がアルツハイマーを促進する」和田秀樹『老いるが勝ち!』が医学界に問う「不都合な新常識」

『老いるが勝ち!』(文春新書)

 高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている和田秀樹さんの話題書『 老いるが勝ち! 』は、目からウロコのファクトが詰め込まれた、中高年必読の一冊です。

 今回は、本書の中身を少しおすそわけ。年末年始、自分のライフスタイルを見直すタイミングにぜひ知ってほしい「意外な事実」をいくつかご紹介します。

◆◆◆

メタボリック・シンドロームは忘れるべき罪深い言葉

 まず、一つのデータを和田さんは示します。宮城県の郊外で行われた東北大学公衆衛生学グループの疫学調査研究による5万人規模の調査です。BMI(体重÷〈身長×身長〉。25以上は危険信号とされている)でいうと、40歳の平均余命は、

BMI 25~30未満(やや太め) 男性41.64年、女性48.05年
BMI 18.5未満(痩せ)    男性34.54年、女性41.79年

 痩せ型の人はやや太めの人よりも、男女ともに6~7年も早く亡くなっていることが明らかになったのです。 

 ずっと高齢者を診てきた和田さんは「私たちは、太っていると体に悪いという思い込みが強烈すぎて、なかなかそこから脱却できません。内臓脂肪はどうやら免疫細胞を作っているという説が強くなってきています」と触れたうえで、こう断言します。

〈 私は患者さんたちをちゃんと診ていれば、太めの人のほうが長生きしているのは容易に分かることだと思うのです。だから「痩せなさい」などと言っている医者は、患者さんをちゃんと診ていない人の典型なんじゃないかと思ってしまいます。〉

 実際、1999年以降、BMIが高い人の方が長生きするという「肥満パラドックス」を示す研究論文が山のように発表されています。たとえばお隣の国・韓国で130万人の住民を9年間にわたって調査した研究が2017年に発表されていて、そこでは「心不全だけではなく、急性肺炎、透析、肺気腫、心筋梗塞、ガン、脳血管障害、糖尿病などにおいて、痩せている人より太っている人のほうが長生きする」ことが示されています。

 まさにメタボリックシンドロームを真っ向から否定する結果がでてしまっているのです。

〈 データを取って統計を精査してみないと分からない本当のことが、たくさんあります。にもかかわらず、調査データを取る前に痩せたほうがいい、と指導するのが日本人です。これでメタボリックシンドロームなる用語の発案者が、どれだけ罪深いか分かるのではないでしょうか。〉

コレステロール値が高い人ほどガンになりにくい

 和田さんは、コレステロールをめぐる「一面的」な通説にもメスを入れます。「コレステロール値が高いひとほどいわゆる心筋梗塞になりやすい」というデータがあることは確かだが、一方でハワイのある住民調査では、「コレステロール値の高い人ほどガンになりにくい」という結果が出ています。

〈 コレステロールに関しても善玉悪玉とか呼んでいますが、それはあくまでも循環器内科的視点からの善玉悪玉にすぎません。いわゆる悪玉コレステロールは動脈硬化の原因で心疾患を引き起こすからです。

 悪玉コレステロールはその一方で、免疫細胞の細胞膜の材料になったり、男性ホルモンの材料だったりもします。だから、悪玉コレステロール値が高い人ほど、かえってガンにかかりにくいとか、齢を取っても精力的で元気だという側面もあるのです。〉

「糖尿病の治療がアルツハイマーを促進する」

 さらに和田さんは、高齢者医療の現場で気付いた「糖尿病治療」が引き起こすリスクと、現代医学への疑問を投げかけます。

 一般に現代医学では、「糖尿病の人はアルツハイマー型認知症になりやすい」と言われています。ところが......。

〈 私が勤めていた浴風会病院では、「糖尿病の人とそれ以外の人では生存曲線は変わらない」ことがわかっていたため、「高齢者の糖尿病は積極的には治療しない」という方針をとっていました。

 その方針の先にわかったことは、「糖尿病の人のほうがアルツハイマーになりにくい」ことでした。浴風会での3年間のご遺体の剖検では、糖尿病ではない人のほうが、糖尿病の人の3倍の確率でアルツハイマー型認知症になっていました。

 脳にたっぷりブドウ糖が行きわたるほうが、アルツハイマーになりにくいのだと病院内では言われていましたね。〉

 薬やインシュリンで血糖値を正常レベルに戻すとむしろ低血糖が起き、脳に糖分が十分にいかない時間帯ができることで、脳にとって大きなダメージが生じうるのではないかーーそんなメカニズムを和田さんは「私の仮説」として示します。

「人は齢を取れば取るほど幸せになる」のに、さまざまな「刷り込み」がその幸せを妨げているのではないかーーそんな視点で記された数々のファクトや提言が満載。高齢者はもちろん、これから齢を重ねていくミドルレンジの人々にとっても、今後の人生を楽しく生きる指針となる一冊です。

(「本の話」編集部/本の話)

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