1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

関東学生連合チームのスローガン「俺たちのはじめての箱根駅伝」……東大大学院生29歳キャプテンがいま考えていること

文春オンライン / 2025年1月2日 7時0分

関東学生連合チームのスローガン「俺たちのはじめての箱根駅伝」……東大大学院生29歳キャプテンがいま考えていること

古川大晃さん

「関東学生連合チーム」。箱根駅伝予選会で、本選への出場権を得られなかった大学の上位選手(※留学生を除く)で結成される。2024年の第100回記念大会では組織されず、今回は2年ぶりの出場が決まった。

 今年の学生連合チームのキャプテンを務めるのは、東京大学大学院博士課程4年生の古川大晃さん。3度目の挑戦にかける古川選手がいま考えていることは……。

◆◆◆

――4月の刊行当初から『 俺たちの箱根駅伝 』を読んで、学生連合チームのスローガンにも書名を引用してくださいました。

古川 普段小説をよく読むほうではないのですが、池井戸潤さんが学生連合チームのことを書かれたと知り、手に取りました。ランナーたちの描写がとてもリアルで……調子がいいときはただひたすらリズムを刻む感覚で、周りの風景なんかが一瞬一瞬で抜けていくイメージがありますし、調子がよくないときは余計に色んなことを考えてしまう感じが、良く分かりました。

 一番好きだったのは上巻の最後のシーンです。箱根駅伝本選を誰が走るか、10人のメンバーが発表される。ランナーにとって「選ばれる」というのは特別な瞬間です。特に彼らは学生連合のメンバーなので、全員が「人生初の箱根」を走ることが決まる。その瞬間の緊張感と高揚には、とても共感しました。

学生連合チームのスローガンは

 この本が出版された2024年に学生連合チームに選抜されたということは僕にとっても特別で、チームのスローガンにも入れたいと思い、ミーティングで提案しました。決定したスローガンは、「俺たちのはじめての箱根駅伝」。

「はじめての」を入れたところがオリジナリティかつポイントです。僕たちの共通点ってなんだろうと考えたとき、全員が箱根駅伝本選を走るのは「はじめての」ことなんです。学生連合チームへ選抜されるには、これまで本選への出場経験がないことが条件です。経験者は一人としていない、全員が「はじめての」箱根駅伝。それは箱根への強い気持ちがあり、フレッシュであるという意味では強みですし、経験値という意味では弱みでもあります。そうした僕たちのわくわくと不安、その微妙な心情をこのスローガンに込めました。多くのメンバーがこのスローガンを推薦してくれ、チームスローガンとして決定しました。

――キャプテンになるまでには、どういったやり取りがあったんですか?

古川 小指徹監督(東京農業大)に、声をかけていただきました。チームの中で、僕が最年長の29歳、その下が22歳なので、7歳も差があって(笑)。19歳~22歳の集団の中で、29歳がキャプテンをするということに対する迷いもありましたし、僕はもともとキャプテン気質でもなく、これまでリーダーになることを避けてきたので、相談してもらった時は悩みました。

 でもよく考えると、学生連合チームに強くあってほしいという気持ちは、人一倍あるなと気づいたんです。

 僕はこれまでに2度、東京大学大学院に入学した年の第98回大会(2022年)、2年次の99回大会(2023年)でも学生連合チームの16人に選出されました。どちらも本選出場の10人には入れず、応援する側に回ったのですが、特に99回大会のチームは本当に強くて、わくわくしながら本選を見ていました。しかし結果としては、予選会に比べて思ったように振るわず、歯がゆいような気持ちでした。

 昨年の100回大会では学生連合チームそのものが組織されず、チームそのものが存続の危機にあると言われています。いろいろな議論がありますが、そのひとつに「学生連合チームの弱さ」が挙げられることが多くて……そういった声を払拭するためにも、学生連合チームは強くありたいという思いがあるんです。

選抜方法がおもしろい!

――今年のチームの調子はいかがですか?

古川 12月初週に、2泊3日の合宿を行いました。この後も、合同練習会をする予定です。2022年、23年の時はコロナ禍の影響もあり、特に2023年は合同で練習をする機会もありませんでした。寂しい思いをしましたので、今回は嬉しいですね。

 今年は、本選出場への選考方法も、監督たちが練ってくれました。10人を選ぶ方法はその年の監督にゆだねられているのですが、僕が経験した2回はどちらも、予選会の成績で上から順番に採用される方式でした。

 今回は3段階の評価方式によって、選考されることになっています。

 ひとつめが、10月の予選会の成績です。箱根駅伝本選は10区間217.1kmなので平均すると一人21kmを走る計算です。予選会はハーフマラソンコースの21.0975キロを走るので、長い距離をきちんと走れる選手なのかをここで見られます。

 ふたつめが、11月に行われた10000mの記録挑戦会のタイムです。このトラックレースで、スピードが試されます。

 三つめの基準が、先日の合宿で行われた16kmの単独走です。箱根駅伝では、ほとんどの時間を単独で走ることになります。単独走では、ひとりでリズムを作り、ペースを整えないといけない。人と一緒に走ると、ついていくということをモチベーションの一つにできたり、考えを飛ばせるんです。単独走と集団走では求められるスキルが異なるので、単独走ができるか、というのは重要なポイントですね。

 そして10月の予選会から12月の合宿にかけて、3つの選考で力を発揮する必要があるため、高い水準で調子をキープする力が求められます。そういう意味でも今回の選考方法は厳しくもあり、例年よりも強いメンバーが揃いやすいと思います。

――チームの目標もぜひお聞きしたいです。

古川 8位入賞を目標にしています。例年10位くらいが目標で、今年も当初はそうしていたんですが、監督から選手間でよく話し合ってほしいと言われ、みんなで考えました。

 僕たちは予選会のタイムでいうと、1位なんです。これにシード校10校を入れて11番手相当と捉えると、8位以上というのは無理な目標ではない。

 箱根駅伝では、本選で10位以内に入ることで翌年も予選会なしで出場が決まる――シード権を得ることができますが、僕たち学生連合チームは、あくまで「オープン参加」なので、正式な記録としては認められません。なので、10位以内に入っても「参考記録」になり、後輩たちに翌年へのシード権を残すことはできないんです。

博士号取得者で最速……? 卒業後の目標も

 でも、入賞のレベルに到達できたという実績は残ります。僕は今年で卒業するので、箱根駅伝への挑戦は今年で最後ですが、チームメイトたちはそれぞれ、自分の所属している大学チームで本選に出たいという思いがあります。だからこそ、8位以内のチームの一角を担ったという経験は、自身のチームに持ち帰って還元できるはず。

 強いメンバーがそろっていて、監督たちが考えた選考方法も充実しているし、行けるんじゃないかと思っています。

――先ほどおっしゃったように、古川さんは今年が最後の挑戦になります。

古川 僕としては、1年目に選ばれたのはラッキーで、2年目に本腰を入れて本選に出るつもりでいたのですが、それが叶いませんでした。その時点で、3年目となる100回大会では学生連合チームが編成されないことが分かっていて……。今年、また選ばれることができてよかったです。

 しかし、今年卒業を迎えるので、博士論文の執筆がちょうど11月から12月にかけてでした(笑)。合宿の直後に提出できたのですが、口頭試問が、箱根駅伝本選の直後に控えています。夏休みの宿題を最終日にやるタイプなので、本当に大変なことになっているのですが……いまはとにかく本選に向けてしっかり準備して、終わったら口頭試問の準備をします(笑)。

――卒業後の進路ももう決まっているのですか?

古川 京都のほうで、研究職に就く予定です。競技のほうはまだ白紙状態ですね。……でもやっぱり、走るだろうな。走る中で研究のアイディアが浮かんだり、息抜きにもなりますし。走ること自体は続けると思います。

 いま、世界で一番速い「博士号を持っている」ランナーのタイムが、2時間9分49秒なんです。アメリカの選手なんですが、ぜひその選手のタイムを超えたいなと思っています(笑)。あと7分は縮めないといけないので、先行きは長いのですが、頑張ります。

――1月2日、3日の箱根駅伝本選、学生連合チームの皆さんの活躍を祈っています!

(文藝出版局/文藝出版局)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください