【なぜ?】真面目な女性教師(26)が“2歳年上の内縁夫”をバラバラ殺人…彼女の母親も「共犯者」になったワケ(1953年の事件)
文春オンライン / 2024年12月29日 17時0分
勤務ぶりは真面目、生徒からも慕われていた女性教師(26)がなぜ殺人を? 写真はイメージ ©getty
〈 【足立区バラバラ殺人】生徒から人気の女性教師(26)が警察官の夫(28)を殺害→世間からも同情を集めたワケ(1953年の事件) 〉から続く
1952年5月に東京の足立区で起きた、警察官バラバラ殺人事件。犯人は内縁の妻で小学校の女性教師だった。勤務ぶりは真面目、生徒からも慕われていた彼女はなぜ殺人を犯したのか? 背景には彼女が夫から受けた、ひどい仕打ちの数々があった…。 新刊『 戦後まもない日本で起きた30の怖い事件 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/ 最初 から読む)
◆◆◆
拳銃を奪われたことも…あまりにずさんな勤務態度
勤務を終えるとすぐ酒に走り、酔うと暴れ出す。富美子は知らなっかったが、同棲前には飲み屋で客と口論となり、格闘した挙げ句に拳銃を奪われるという失態を犯していた。幸い、銃は見つかり大事には至らなかったものの減給処分になり、同棲を始めた当初はその素行の悪さから解雇寸前だった。
伊藤は給料の半分しか家に入れず、女遊びにうつつを抜かし外泊することもしばしば。借金も抱えており、後に判明したところ、その額7万円(現在の貨幣価値で約280万円)。そんな状態で富美子が憧れていた結婚式を挙げられるわけもなく、本人もその気配すら見せなかった。
当初の想像とはまるで違う同棲生活を送るなか、ほどなく富美子の母シカと弟が上京。同居生活が始まる。今後は2人の面倒もみなければならない。伊藤とこのまま暮らしていれば破綻は明らか。そこで彼女は決心を固め別れ話を切り出す。と、伊藤は「そんなことを言うなら殺してやる」と拳銃を持ち出し、「逃げても絶対見つけ出す」などと脅してきた。
素行が悪く解雇寸前とはいえ、肩書は警察官。だが、内縁の妻と別れるとなれば、いよいよクビを告げられるかもしれない。伊藤は今の立場を守るためにも、富美子との別れは絶対避けねばならなかった。一方、富美子は警察を解雇されたら本気で自分の命を奪いに来るかもしれないと恐れた。同居する母や弟のことを考えても、これ以上別れ話はできないとあきらめる。
こうしてずるずると冷え切った同棲生活を送り1年以上が経過した1952年5月7日、伊藤は21時ごろに泥酔状態で帰宅する。が、その日は22時から夜勤が入っていた。制服に着替えることもままならない状況で、富美子は思わず「どこでそんなに飲んできたの!」と叱責してしまう。これに伊藤は「どこで飲んでこようが俺の勝手だ! 生意気言うな!」と怒鳴り返し富美子に手をあげた。
殺害を決意した瞬間
しばらくしてその場は収まり、富美子は伊藤を寝かしつけた後、彼の上司に電話をかけ「故郷の親戚が事情があり、急遽上京したので9日まで休みます」と連絡する。伊藤を思ってのことだった。しかし、伊藤は酔いつぶれて寝入る寸前、ふと言葉を漏らす。
「捨てるのは惜しい。売れば金になる」
これが何を意味していたのかはわからない。が、富美子は自分が売春婦として売り飛ばされると直感。ついに我慢の糸を切らす。
日付が変わった同月午前1時ごろ、母親と弟が寝入っていることを確かめた富美子は、1ヶ月ほど前に伊藤が持ち帰っていた警察の機関誌『自警』で読んだ絞殺事件の記事をヒントに殺害の準備を進める。まずは、真ん中に麻紐をくくりつけた警棒を外に出し雨戸を閉鎖。窓際から引っ張ってきた麻紐を泥酔し寝ている伊藤の首に巻きつけたうえで、紐の両端を渾身の力で引く。伊藤はかすかにうめいたもののすぐに動かなくなった。
異変を察した母シカ(同51歳)が駆けつけると、富美子は号泣。母も事態を知って泣き崩れたが、これまでの娘の苦しみを間近で見てきただけに心中は複雑で、しばし逡巡した結果、自首させるより遺体をバラバラにして捨て殺人を隠蔽しようとの結論に至る。
この提案を富美子も受け入れたが、夜明けも近かったため、いったん遺体を柳行李に入れ押入に隠匿。何事もなかったかのように学校に行き教壇に立つ。一方、母親は出刃包丁や鉈、油紙、麻紐を購入。夕方、富美子が学校から借りた自転車で帰宅すると、弟(同14歳)を兄の家に遊びに行かせ、母子で遺体切断を実行に移す。
〈 「夫を殺した瞬間、ホッとした」借金あり、女癖も悪い暴力夫(28)を母親と協力してバラバラに…世間からも同情集めた「26歳・女性教師」のその後(1953年の事件) 〉へ続く
(鉄人ノンフィクション編集部/Webオリジナル(外部転載))
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