SNSで拡散された安倍晋三元首相の「エンタメ力」 “スルーされない”ネット戦略とは?
文春オンライン / 2025年1月4日 6時0分
トランプ大統領(当時)の来日時には2人でゴルフを楽しむ姿が話題に ©JMPA
安倍晋三元首相の長期政権の背景を分析するうえで、その“エンタメ感”は欠かすことのできない要素だ。政治学者の牧原出氏が、安倍元首相の“スルーされない”ネット戦略を読み解いた。
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エンタメの世界を楽しむ姿が支持された
確かに、政治の世界と、娯楽やエンタメとは切っても切れない関係にある。だが、その中で安倍は、スポーツやゲームの腕を特に上げることもなく、また派閥運営の道具としてでもなく、エンタメの楽しみにひたすら興じていた。
外交の場でふと相手を和ませて、日本の国益に沿った方向付けを図ろうとする。あるいは、政治の駆け引きでは「ゲーム」のようにプレーしたりもした。
何よりも、そうした安倍の姿は、SNSで拡散するためには格好の素材となった。安倍政権は、Facebook、Instagram、Twitter(現X)を活用したが、そのネット戦略のおおもとは、エンタメ力ある首相である。首相自ら楽しむ姿が、多くの関心を集めたのである。SNSをよく使う政治家といっても、攻撃的な言説で炎上するか、事務的な活動報告がスルーされるかのどちらかである。SNSで「楽しんでみせる」姿を振りまけたのは、今なお宰相安倍だけと言えよう。
政治に持ち込まれるエンタメ
もっとも、「安倍一強」の政権を築く前の安倍には、そこまでのエンタメ力はなかった。第1次政権では消えた年金問題の処理に失敗して、国民からの信頼も失墜して参議院選挙で歴史的敗北を喫し、辞職した。当時の安倍は、元来「休日はもっぱら映画館」というくらい映画好きだと評された。『プラダを着た悪魔』を見たかったが、『犬神家の一族』を親族と見たという一面もあった(上杉隆『官邸崩壊』幻冬舎文庫、2011年)。これらは『ハウス・オブ・カード』や『ザ・クラウン』のように、およそ外交や政治の現場で効果的に話題として使えるものではない。
第1次政権崩壊後の雌伏の時期に、安倍は様々な反省をノートに記していた。その上に立って組織されたのが、第2次政権だった。改めてどう戦略を立てるかを考えていたと自ら語っているが、エンタメを政治に持ち込むことの意義にどこかで気づいていた節がある。
「パンとサーカス」を心ゆくまで楽しむ宰相
後に政治資金の違法支出を疑われて糾弾されることになる首相主催の「桜を見る会」では、ももいろクローバーZをはじめ芸能人とポーズをとる姿が報じられた。嵐やTOKIOなどの芸能人と歓談する姿が、Twitterなどで拡散された。吉本興業の吉本新喜劇に出演するといった一幕もあった。何とも珍妙な印象を持った向きも多かったし、ローマ帝国の統治術である「パンとサーカス」とばかりに国民の目を欺いているといった野党側からの批判も強かった。
だが、どの安倍もその場を楽しんでいるように見受けられた。安倍は、ローマの皇帝のように、「パンとサーカス」に我を忘れる市民を冷たく見下ろしたりはしない。「パンとサーカス」の中に飛び込み、心ゆくまで楽しむのである。そうであればこそ、第2次政権時代、安倍は『ウィンストン・チャーチル』から『永遠の0』など話題となった映画を、映画館で見続けた。
そうした姿勢の延長線上に、スーパーマリオの扮装もあった。「地方創生」や「一億総活躍」など内政面で次々と施策を打ち出し、海外では、アベノミクスで日本株を売り込むようなセールストークも躊躇しない。「地球儀を俯瞰する外交」を掲げた外交実績もさることながら、地道にエンタメに関する話題を振りまき続けたのが、宰相安倍晋三である。
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本記事の全文(約1万5000字)は「文藝春秋 電子版」でご覧ください(牧原出「 宰相・安倍晋三論 政治にエンタメ感を演出。『次へ次へ、さらにその次へ』と国民を誘い込んだ 」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
《目次》
『安倍晋三 回顧録』の臨場感
“ドラマ好み”という政治資源
「雑談力」の核心にあるもの
「ゲーム」を勝ち抜く
オリンピアン麻生太郎
オペラ好きの小泉純一郎
ゴルフ・待合・麻雀・囲碁
エンタメの世界を楽しむ姿が支持された
政治に持ち込まれるエンタメ
エンタメ宰相に映し出される「自分自身のかげ」
「次へ次へ、さらにその次へ」のドラマ感覚
エンタメに生きエンタメに殉じる
安倍の時代が再来するまで
(牧原 出/文藝春秋 電子版オリジナル)
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