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《藤井流星主演で実写ドラマ化決定も》めちゃくちゃ売れているのに“推されない”…愛読者3名が明かす、女性向けエロ漫画「ティーンズラブ」が語られないワケ

文春オンライン / 2024年12月30日 20時0分

《藤井流星主演で実写ドラマ化決定も》めちゃくちゃ売れているのに“推されない”…愛読者3名が明かす、女性向けエロ漫画「ティーンズラブ」が語られないワケ

『愛くるしくて(スーツの下が)はち切れそう!(1) 』(forcs)より。忍者頭巾をかぶった覆面ヒーロー「スーツァーマン」と、気弱平凡女子のラブコメディ。トンチキな世界観で、バナー広告が一時期SNSで話題に。

 近年、拡大を続ける電子コミック市場の中でも、急速に売り上げを伸ばしているとされるTL漫画(ティーンズラブ漫画。性描写を含む女性向け漫画のこと)。「ティーンズ」を冠するジャンル名であるにもかかわらず、主な読者は大人の女性たちだ。

 ヒット作『キスでふさいで、バレないで。』が2025年2月に実写ドラマ化を控えるなど勢いの止まらないTL漫画について、ライターのアオヤギミホコさん、藤谷千明さん、『週刊文春WOMAN』編集長・井崎彩の3名による座談会を実施。

 発売中の 『週刊文春WOMAN創刊6周年記念号』 より、一部を抜粋・編集の上、紹介する。

◆◆◆

“ティーンズ”といいつつ、大半のヒロインが20~30代

――ティーンズラブ(以下、TL)というジャンルに馴染みがない読者も多いと思うので、最初にその定義から聞かせてください。

アオヤギミホコ(以下、アオヤギ) ざっくりいえば「女性向け恋愛漫画の中のひとつのジャンルで、性描写が作品の中心にあり、読者もそれを求めて読んでいるもの」と受け取ってもらうとわかりやすいかと思います。

 そういうと、『快感♥フレーズ』(新條まゆ/小学館)のような少女マンガが思い浮かぶ人もいるかもしれません。でも少女マンガの場合は建前としては恋愛がメインで、エロいことはあくまでその一環という位置づけなんですね。逆にTLは性愛がメインで、基本的に1話に1回はエロいシーンが描かれます。

藤谷千明(以下、藤谷) 注意が必要なのが、“ティーンズ”といいつつ、今のTLは大半のヒロインが10代ではなく20~30代なんですよね。

井﨑彩(以下、井崎) 私は2020年にTLにハマったんですが、入り口になったのはお仕事とセックスがテーマで、アラサーが主人公の作品だったんです。当初はジャンル名を知らなくて、後から「これのどこが“ティーンズ”なの?」と驚きました。

アオヤギ 歴史的にいうと、大人の女性向けのマンガジャンルとして「レディースコミック」があって、その読者層が高齢化する中で若い世代にリーチしようと生まれたのがTLです。“ティーンズ”という名称は投稿雑誌が元ネタと言われていますよね?

藤谷 そうですね。主に10代女子が自分の性体験を投稿する「エルティーン」(近代映画社/1981年創刊、2005年休刊)という、今読むと「ウソだろ」みたいな過激な話も載ってる雑誌で、ネットが浸透してない時代にクラスの女子間で回し読みされていたり。

 その派生で、投稿内容をマンガにした「エルティーンコミック」(1995年創刊、2005年休刊)というマンガ誌も生まれました。

アオヤギ その流れも下地になって、2000年前後から各社がTLマンガ誌を刊行し始めます。つまりジャンルが生まれた当初は読者も主人公もティーンだった。

スマホシフトで2度目の流行が到来

藤谷 私は2000年代半ばに書店で働いていて、そこでTLマンガ誌を手に取るようになりました。元々面白いマンガが好きだし、エッチなものも好きなので「無敵恋愛S*girl」(ぶんか社/2005年創刊、2024年休刊)などを読んでました。

 まだ知られていないマンガ家さんを発掘するのも楽しかった。たとえばリカチ先生(『星降る王国のニナ』『明治緋色綺譚』ほか)が当時TLマンガ誌で連載していて、「この人、絵柄も話も好みだな」と記憶に残ってて。そしたら数年後、一般誌でも活躍されるようになって「私の眼に狂いはなかった」と(笑)。

アオヤギ 古参ヅラだ(笑)。

藤谷 かつ、同時期に拡大しつつあった携帯コミック市場もTLが関わってますよね。誰にもバレずに気軽にエッチなコンテツが買えるから。女性からの需要に気づいた出版社がオリジナルのTLを作り始め、作品数が増えてジャンルの存在感が増しました。

 この時期にはすでに主人公の年齢は20歳前後が主だったと思います。つまり読者が歳を重ねるのに合わせて、スライドしていったのでは。

アオヤギ TLが流行したタイミングは2つあって、ひとつが携帯コミックの時期、もうひとつはスマホシフトが進んだ2015~2018年あたりです。私がジャンルとして追いかけ始めたのは後者の時期でした。

 その頃、電子書籍販売サイトがTLの面白いバナー広告をいっぱい出していて、ツイッター(現X)でよく話題になっていたんですよ。それに惹かれて読み始めて。『僧侶と交わる色欲の夜に…』(真臣レオン/2014年~)、『オネエ失格~ケダモノに豹変した午前3時~』(冴月ゆと/2016年~)などですね。

藤谷 2020年以降はマンガアプリや電子レーベルが定着したことで、さらにジャンル定義が難しくなったのでは。

 昔は「TLのレーベルから出ている作品がTL」といえたけど、今はTLではないレーベルの作品がアプリでは「TL」のタグで配信されているケースもあって、境界線が揺らいでいる。逆にTLレーベルの作品をそう認識せずに読んでいる人もいるだろうし。結果規模は拡大していると思います。

アオヤギ 市場規模はかなり大きいです。近年業績を伸ばしているマンガ配信サイト「コミックシーモア」で、売り上げを支えているのはTLだといわれていますから。

セックスシーンが笑えるのにエロい

――井﨑さんがハマったのは2020年とのことで、まさに電子書籍やマンガアプリが全盛になってからですね。

井﨑 その頃、子どもが大学受験を控えて家で勉強していて、その横でテレビを点けるのも悪いと思ってスマホをいじっていたとき、SNSに流れてきたマンガアプリの広告を押したのが始まりです。最初はTLではなかったんですけど、読んでいるとアプリがどんどん別作品をおすすめしてくるんですね。

 それでたどり着いたのが、セックスに劣等感がある35歳バリキャリ女性が主人公の『木更津くんの××が見たい』(以下『木更津くん』/萩原ケイク/2020年~)でした。ジャンル名は知らずに、ちょっとエロのあるお仕事ものの女性マンガだと思って読んでいて。

藤谷 心理描写もかなりしっかりしている作品ですね。

井﨑 自分磨きに一生懸命で、仕事も頑張っている女性が、恋愛とセックスについてはとにかくこじらせている。その姿がリアルで愛しくて、しかもセックスシーンが笑えるのにエロい。周囲の男性を含めて、仕事とセックスを通した成長譚にもなっていて「こんなマンガ、読んだことない!」と思いました。

 その後に「これがTLなんだ」と認識したのが、2025年2月から実写ドラマが放送される『キスでふさいで、バレないで。』(以下『キスバレ』/ふどのふどう/2021年~)ですね。

アオヤギ ふどの先生は絵がすごくキレイですよね。

井﨑 そうなんですよ。アオヤギさんがおっしゃったようにTLは毎話エロが必要なだけに、「とりあえずエロいシーンを入れました」という感じの作品も結構あるんですが、『キスバレ』は毎回のエロにちゃんと必然性がある。一見ぼおっとしているのに、毎回易々とエロ展開に持ち込んでしまうヒーロー像も新しいと思いました。

※TL漫画の王道展開や、TL漫画が「唯一推されていないジャンル」である理由、女性たちがTL漫画について語ろうとする際に生じる問題についてなど、縦横無尽に語った全文は発売中の 『週刊文春WOMAN創刊6周年記念号』 でお読みいただけます。

アオヤギミホコ

1990年生まれ。ライター。女性向けエンタメを中心に執筆活動を行う。主に担当・参加した企画に『アダルトメディア年鑑2024』、『ユリイカ』「百合文化の現在」「女オタクの現在」特集、『SFマガジン』「百合」「BLとSF」特集など。

藤谷千明

1981年生まれ。工業高校を卒業後、自衛隊に入隊。その後職を転々とし、フリーライターに。著者に『藤谷千明 オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)、『推し問答! あなたにとって「推し活」ってなんですか?』(東京ニュース通信社)など多数。

井﨑彩

1975年生まれ。2018年の創刊時より『週刊文春WOMAN』編集長。毎晩深夜0時になると、愛読する5つの漫画アプリから大量の更新通知が届く日々。その多くがTLかもしれません……。

(斎藤 岬/週刊文春WOMAN 2025創刊6周年記念号)

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