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「首を絞められ胸を触られ…」ベンチャー投資最大手「ジャフコ」で卑劣セクハラが起きていた《被害女性が告発》

文春オンライン / 2025年1月9日 19時0分

「首を絞められ胸を触られ…」ベンチャー投資最大手「ジャフコ」で卑劣セクハラが起きていた《被害女性が告発》

ジャフコの三好社長(会社YouTubeチャンネルより)

「被害に遭ってからはドラマで女性が襲われるシーンはトラウマで見られなくなりました。仕事にも復帰できなくなった。会社にはきちんと謝罪して欲しい」

 声を震わせながらそう告白するのはベンチャー投資「ジャフコグループ」に勤務していた岩田清美さん(40代、仮名)。最大手の老舗企業で一体なにが――。

◆ ◆ ◆

新進気鋭のベンチャーへ投資してきた“上場請負会社”

 ジャフコ社は1973年に設立。日本電産(現ニデック)やソフトバンク、ZOZOなど国内を代表する企業を上場させてきた。

「ベンチャーキャピタルでは数少ない東証プライム上場企業。累計投資企業は4000社以上で累計ファンド運用額は1.2兆円を超える。最近ではタイミーやマネーフォワード、UUUMなど新進気鋭のベンチャーに投資実績があり、上場をサポートしてきた“上場請負会社”です。経産省のスタートアップチャレンジ推進補助金事業にも採択され、最近では女性起業家に特化した投資プログラムを始めている」(経済誌記者)

男性社員2人による卑劣なセクハラ

 そんなジャフコ社に契約社員として岩田さんが入社したのは2018年11月。待ち受けていたのは長年ジャフコに勤務する30~40代男性社員による卑劣なセクハラ行為だった。

「入社直後から男性社員A氏からしつこく電話があり、夜中の3時に立て続けに8回かかってくることもありました。『俺は(不貞しても会社を)辞めさせられない』と不貞行為を迫られたこともあった。ほかにも頬にキスをされたり、付きまとわれたりもしました」(岩田さん)

 さらにはA氏と親交があり、「パートナー」と呼ばれる投資ファンドの運用責任者であるB氏からも被害を受ける。

「2019年6月、ほかの男性もいる懇親会でB氏から『岩田さん、こいつ(同席していた男性社員)にやらせてやってよ』と言われました。立場もB氏の方が上なのでその場では流すことしかできなかった」

 その3カ月後にはA氏、B氏の2名から深夜に電話がかかってきて「来ないと仕事に協力しない」と酒席に誘われたという。

 そして“事件”は起こる。

首を絞められ、無理やり胸を触られ…

 同年12月18日、オフィス内で開かれた忘年会。会も終盤になり、岩田さんが身支度をして帰ろうとエレベーターホールにいたところ、A氏とB氏が近づいてきた。

「B氏は『もう帰るのかよ』と声をかけてきて私のマフラーを引っ張り、首を絞めてきた。B氏はA氏に『お前もそっち(マフラーのもう片方)を持て』と指示。すると『俺はこっちの方がいい』と無理やり胸を触ってきました。床に倒され抵抗することはできず、解放されてからは呆然としてしまった」

 岩田さんは会社に被害を報告。A氏、B氏は行為を認め、翌年1月に懲戒処分が下った。その後、B氏は依願退職で会社を去った。

「セカンドハラスメント」を受け、給与は半額に

 だが、被害はこれだけに留まらなかった。

「B氏は懲戒後、当時役員で現在は取締役社長の三好啓介氏の指示で社員の前で謝罪しました。私は三好氏には『(セクハラについて社内の人間に)話すこと自体やめてほしい』と伝えていたのですが、『具体的内容には触れず、加害者所属部員に限定して話す』と言われた。そもそも女性社員が少ない会社でB氏と関わりがあるのは私を含めて数名。被害者が私だと推定される要因になりました。この出来事がきっかけで心療内科に通院するようになり、適応障害と診断された」

 近年では、ハラスメントを告発した被害者がさらに「セカンドハラスメント」に遭うケースが問題視されている。岩田さんはまさにその被害を訴えているのだ。さらにこんな追い打ちも受けた。

「2020年10月、今度は執行役員の松本季子氏から『退職金を出すから』と退職を勧められた。断ると次には給与を半額にすると提示され、応じなければ退職するしかないと迫られました。やむなく給与半額を受け入れる契約書に署名しました。面談の際、松本氏からは『異質』、『したたかな感じ』、『軽い』など人格を否定するような発言もありました」

急性ストレス性胃炎を発症、休職の末に雇止め

 追い込まれた岩田さんは同年12月、昼食で外出した際に新橋の路上で倒れた。急性ストレス性胃炎を発症した。

「休職せざるを得なくなり、結局は2022年10月31日付で雇い止めになりました」

 岩田さんはセクハラ発覚後の対応も含めてジャフコ社は従業員の安全配慮義務に違反しているとして、慰謝料を求めている。

 雇い止めも客観的に合理的な理由はなく、社会通念上相当であるとも認められないとして無効を主張している。

会社側の回答は

 当事者はどう答えるのか。

 三好氏を直撃すると「会社の方に連絡してもらえますか?」と語るのみ。執行役員の松本氏に取材を申し込むと「弊社関係者に直接接触をされることはご遠慮ください」と会社広報から連絡があった。

 ジャフコ社に質問状を送ると主に以下のような回答があった。

 A氏、B氏のセクハラ行為については「当該女性社員に対する配慮のための措置を適正に行い、2020 年 1 月下旬に両男性社員に対して就業規則に基づいた懲戒処分を行っています」。

 三好氏の言動については「当該女性社員のプライバシーに対して最大限配慮を行った上で、三好から当該女性社員に対して、両男性社員を月末会(月例で実施していた当社の全社向けのミーティング)で謝罪させたい旨、また、当該謝罪の際には当該女性社員の名前を明かさない旨を女性社員ご本人に伝え、了承を得ておりました」。

 松本氏の発言と雇い止めについては「契約更新についての当社の考えをご理解いただいた上で、契約更新および満了をいただいたものと認識しております。もちろん、これらに関する話し合いの席において、当社から被害者の人格を否定するような発言を行ったという認識はございません」とした。

女性たちが同じような被害に遭わないために

 最後に岩田さんは今回取材に応じた経緯を話す。

「投資家による女性起業家へのセクハラは欧米で社会問題になり、日本でも今年8月にNHKで特集されるなど#MeTooの動きがあります。日本経済再興の起爆剤となるベンチャー投資の最大手でなにが起こっているのかを伝えたい。女性たちが同じような被害に遭わないためにも声を上げたい」

 一人の女性の訴えが業界の闇に一石を投じようとしている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)

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