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ランチビールに大好きな中華を平らげ「おかわり!」…“奇跡の1枚”でバズり、白目ヘン顔もこなす橋本環奈が25歳で「紅白」を手際よく仕切れる納得の理由

文春オンライン / 2024年12月30日 19時0分

ランチビールに大好きな中華を平らげ「おかわり!」…“奇跡の1枚”でバズり、白目ヘン顔もこなす橋本環奈が25歳で「紅白」を手際よく仕切れる納得の理由

橋本環奈 ©時事通信社

「大嫌い!」

 朝ドラこと連続テレビ小説『おむすび』で橋本環奈演じる主人公・米田結が恋人・四ツ木翔也(佐野勇斗)にこう言い放った。この「大嫌い!」の殺傷能力は高く、放たれた翔也のダメージは相当のものであろう。

 こういうシーンで、大好きだった恋人への好きだけど嫌いがないまぜになった複雑な心情や、励まそうとしてあえて厳しく言ってみる葛藤、等々は、様々な表現の方法があると思う。だが、ただ一点、「大嫌い!」で突破した橋本環奈の潔さ。もしかしたら言い方は演出の提案かもしれないが、それを端的に表現した橋本環奈の表現力は抜群だった。

橋本環奈の演技は「極めてCM的」

 ここのところ橋本環奈の演じる米田結の「瞬間」に出す演技の正解感がすごい。「大嫌い!」を放ったのと同じ回、恋人と別れを決めて合コンしているときのサバサバ感、ランチビールに大好きな中華料理を平らげながら「大将、生おかわり~」のけろっとした様子や「いいよもうその話は」と恋人の話題を軽くあしらう感じ、等々。あまり前後の感情は関係なく、その瞬間はこれしかないというような表現にビールのCMを見ているような気分になった。

 そう、橋本環奈の演技は極めてCM的なのである。つまり、短期集中型だ。瞬間の訴求力に賭けているように見えるのだ。

 CMは商品を売ることが目的だから、ここぞというときに、商品名やその効能をアピールする必要がある。ほんの数秒の勝負であり、橋本環奈は一瞬で視聴者を仕留める力にひじょうに長けている。これは彼女のポテンシャルであろう。

 そもそも彼女の出自も「瞬間」だった。

SNSでバズったアイドル時代の「奇跡の1枚」

「奇跡の1枚」というこれ以上なくよく撮れた写真がSNSでバズって「1000人にひとりの逸材」と注目されたのである。10代のとき、地元福岡で御当地アイドルRev. from DVLの一員として活動していた橋本環奈は、たくさんいるご当地アイドルのひとりであったが、「奇跡の1枚」で突如1馬身リードした。

 地元のイベントで踊る橋本をななめ下からとらえた写真「奇跡の1枚」は、健気に真摯にポーズをとったときのもので、伸ばした指の緊張感と、この動作に命をかけているような熱っぽい眼差しと少し開いた口元のバランスが、これぞ「奇跡の」黄金比のようであった。髪の毛のなびき具合も最高であった(映した人もすごい)。

 これをきっかけに橋本環奈は角川映画40周年記念作『セーラー服と機関銃‐卒業‐』(16年)のヒロインに抜擢された。女子高生がヤクザの組長にまつりあげられるという、昭和感あふれる『セーラー服~』は、もとは1981年に公開された薬師丸ひろ子の出世作であり、その後、2006年のリメイクドラマで長澤まさみも演じている。アイドルから俳優への道筋としてはこのうえない作品に出会えたと言っていい。ただ、橋本環奈の俳優としての才能が花開くのは、福田雄一監督との出会いを待たなくてはならなかった。といってもそんなに間はなく、翌年のことである。

福田雄一作品で活きた「瞬間芸」

 福田作品で橋本は意外にも、「奇跡の1枚」に見えた健気で清楚な美少女のイメージをぶち壊し、汚れもこなすコメディエンヌとなった。

 映画『銀魂』(17年)で橋本が演じたのは、言葉の語尾に「~ある」「~よ」などがつく、チャイナ服を着た神楽だ。色白でかわいいが戦闘能力は高い。これだけだとまあまあよくあるキャラクターなのだが、神楽はそこに「汚れ」属性が付与されていた。原作漫画で神楽は、週刊少年ジャンプ史上、初めてゲロを吐いたヒロインとされている。それだけでなく、白目をむいたり、とてつもないヘン顔をしたりと、笑いのために滅私奉公しているような役なのである。そこから、いわゆる美少女のイメージを払拭した橋本環奈は大衆に親しみやすさを感じさせ、めきめき知名度を広げていく。

 同じく福田監督による『今日から俺は!!』(18年 日本テレビ系)ではスケバン役。長いスカートのセーラー服に聖子ちゃんカットの京子は、色白の顔に真っ赤な口紅が蠱惑的。しゃべると荒っぽく喧嘩も強いが、彼氏の前ではかわいい女の子になってしまう。

 美少女の仮面をはいで、汚れやおもしろのできる思い切りのよさで注目された橋本は、これを自身の俳優としての得意技としていく。演技の上でも、別人のように表情を切り替える瞬間芸の能力に磨きがかかっていく。筆者は『銀魂』の撮影現場で、福田監督が動きの提案をして、それを橋本が瞬時にこともなげにやって見せて、福田が満足そうにニコニコしているところを見たことがある。

 橋本のこの切り替えの速さは、これはこれで立派な芸である。この芸を全うするには、秒でどれだけ飛距離を出せるかが問われる。つまり身体的能力がものを言うのだ。

待機中も「女社長」のようだった

 そして、あっという間に豹変芸が名人芸のようになった頃、『十二人の死にたい子どもたち』(19年)では、徹頭徹尾クールな役を演じた。自身に絶望して死ぬために集まってきた10代の子どもたちのひとりであるリョウコは、死にたいと思うのが不思議に感じられる人気女優の役である。でも「大勢の大人が時間とお金をかけて作った商品よ!」と自虐する。

 このとき、オフィシャルライターとして撮影現場を取材していた筆者は橋本環奈にインタビューをしたのだが、リョウコのように大人にプロデュースされるままになっている状態と自身はまったく違うようだった。若い俳優は、どうしても演技が未熟な分、自分に似た感じの役で不足部分を埋めることが多いが、橋本は自分と違うパーソナリティでも躊躇なく演じることができるようだ。

 同じ現場で筆者は、撮影の合間に監督のベース(撮影中、監督や記録、現場編集、CGスタッフなどがいる場所で、モニターがあるので俳優も撮った画を見に訪れる)で待機している橋本を見たとき、たったひとりで凛と座っていて、どこかの事務所の社長がいらっしゃるのかと間違えたことがあった。橋本はとても小柄なのだが、ものすごく堂々としたオーラを放っていた。

 そのときの彼女は、大人の言うがままになっているリョウコの面影はまったくなかった。以来、私のなかでは橋本環奈は女社長のようだというイメージなのである。そういう意味では『セーラー服と機関銃』の組長の役は彼女にぴったり。彼女が昨年の『第74回紅白歌合戦』で司会として、現場を手際よく仕切っていたのもナットクなのだった。

今年の紅白ではどんな姿を見せるのか

 橋本環奈の司会の安心感は、その瞬間、最適なことを選んで動くことができる判断能力の高さゆえであろう。俳優のなかには、感情のつながりや根拠が気になりすぎて体が動けなくなってしまうようなナイーブなタイプもいて、それはそれでいいのだが、橋本はそこに重きを置いていないように見える。

 朝ドラこと連続テレビ小説『おむすび』のヒロインに抜擢されたのも、この手際よさが理由のひとつであろうと推察する。朝ドラの撮影のスケジュールがパンパンで、当然ながら順撮りなど望めず、同じセットを使うシーンを先々の分までまとめて撮るようなやり方をしていることは、ヒロイン経験者がよく語っていることだ。

 そういう状況だといちいち感情の繋がりや、物事の整合性を気にしていたらやっていられない。その瞬間、瞬間で、最大のパフォーマンスを発揮することが重要で、それを橋本環奈なら無理なくできる。実際、そうなっていると思う。ただ、あまりにも手練れ感があり過ぎるのが、制作側としては誤算だったのではないかという気もしなくはない。

 朝ドラを見ていると、ハードなスケジュールや朝ドラヒロインの重責への心の震えがときに、物語の叙情となって視聴者に訴えかけてくるようなことがあるものなのだが、橋本環奈は常に堂々としていて揺らぎがないのである。

 今年5月に舞台『千と千尋の神隠し』でロンドンデビューも飾り、ますます自信とスキルがアップしているようにも見える。

 どのシーンも「奇跡の1枚」のように、どこから見ても完璧に整った正解の演技の連続であることは称賛に値する。だが、B’zも『おむすび』の主題歌で歌っているではないか、「震えたっていいよ」と。常に完璧でなくていい。たまにはすこし揺らいでもいい。そんな橋本環奈も見てみたい。

 もちろん、今年で3度目となる(快挙である)紅白の司会では、決して揺らがず、テキパキとした、いつものスキルを存分に発揮してほしいけれど。

(木俣 冬)

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