「出来ない自分が悪いんだ」「自分は結局こういう性格なんだ」生きづらさを感じていたミュージシャン・4s4ki(アサキ)がADHDと診断されて気づいた“よかったこと”
文春オンライン / 2024年12月29日 11時0分
〈 「もう死ねば解決じゃん」「飛び降りちゃおう」「首絞めちゃおう」気鋭のミュージシャン・4s4ki(アサキ)を苦しめていた“ある疾患” 〉から続く
作詞・作曲のほか編曲やトラックメイクも一人でこなし、舞台音楽でもその才能を発揮するなど今最も注目を集めるミュージシャンの4s4ki(アサキ)。海外からも注目される彼女が子供のころから感じていた“生きづらさ”、そしてADHDと診断されて感じたよかったことは……。(全4回の3回目/ ♯1 、 ♯2 、 ♯4 を読む)
◆◆◆
服薬のクリエイティブへの影響に不安もあったけれど…
――初めてADHDと診断されたときは、どう感じましたか?
4s4ki もちろん最初に聞かされたときは、ひどく落ち込みました。怖かったし。でも、先生からは、元凶となるADHDをうまく生活の中で対策して、それに適ったお薬を飲むことでほかの精神疾患も自然と良くなっていくケースもあるというお話を聞かされて、それで前向きになれて。私の場合、もし本当に統合失調症だったとしたら、もっと入院が長引いていたそうなんですが、ADHDをきっかけとした症状という診断だったために早期に退院することができて、音楽活動にも早々に復帰できたので。
――ADHDについて処方されたお薬を飲み始めたころ、クリエイティヴへの影響という点で、何らかの不安を感じたことは?
4s4ki 最初はまさにそれが怖くてお薬を積極的に飲めなかったんです。曲を書けなくなっちゃうんじゃないか? と怖かったんです。でも、飲み始めてみたら、自分の発想力は消えなかったし、むしろ、「この衝動だったら人前で出してもいい」とか「この衝動は人前ではダメなやつ」と、自分の意思である程度コントロールができるようになってきたんです。
それを契機に、服用する薬も劇的に種類が減りました。現在、毎日必ず飲んでいるのはADHDのお薬1種類と頓服くらいで。大きなパニックがほとんど起きなくなったし、回復も少し早くなりました。
同じように、苦手なことも苦手なんだとより明確に自覚できるようになりました。これは苦手だから、それをどうなるべく周囲の人に迷惑をかけずに済むレベルで何とかするか、みたいな工夫を考えるようになったし。自分の疾患に合ったお薬を飲み始めたことで、自分のメンタルを認識できるようになったのは大きな変化でしたね。
落ち込みからの回復法がわかるようになった
――自分の対処法が分かってきた?
4s4ki はい。正直、いまもパニック発作が起きることはあるし、戦っている最中ではあるんですけど、最近はパニックになったことで気持ちが落ち込んだ時の対処法も徐々に分かってきて。それは、何もしないこと。そこで無理に行動してしまうと、かえって悪い衝動が出てきちゃうんです。
だから、パニックになったあとは、とにかく自分のしたいことだけをすると決めておくと、いち早くダウナーから抜け出せるんです。で、やりたいことすら何もないほどダウナーなときは、本当に何もせず、ただただベッドで横になっている。携帯がいっぱい鳴っても見ない。そうすると、落ち込みからの回復が早くなってきました。
あと、ADHDという自分の精神疾患を、今日のインタビューみたいに結構人に話すようになりました。友だちにも話せるようになったし、自分の公式SNSでも公表したし。ダウナーのままで引き籠もる時間が長期化すると、それはそれで良くないので、「30分でいいから散歩しようよ」とか、「いまから家に行ってもいい? ご飯買って行くから一緒に食べよ?」と声をかけてくれる友だちや知人が周りに増えて、回復も早くなって。
お仕事の面でも、スタッフにADHDだと知ってもらえたことで、お任せしたほうがいいことはお任せできるようになったし、音楽活動を再開するまでのプロセスを一緒に頑張れたという絆も感じていて。お仕事の関係者の皆さんもとても理解をしてくださって。本当、周りの人からの支えはかなり大きいですね。
診断はショックでも「疾患との付き合い方に気づける」ことが大事
――つまり、生き易さ/生き辛さで言うと、かなり生き易くなった?
4s4ki まさにそうですね。ADHDをはじめ、大人の発達障害というのはそもそも見つけることが大変らしいんです。長い間、「自分は結局こういう性格なんだ」とか、「出来ない自分が悪いんだ」と思い込んでしまっているせいで、逆に鬱病になってしまったりもするし。私のように違うきっかけで病院に行って、初めてちゃんと疾患が見つかる人も少なくないそうなんです。
私も大人になってから診断されたので、もっと早くADHDだと分かっていれば、いろいろな精神疾患や失敗も未然に防げたのかな? と思うこともありますが、私自身も周りの人も、そんなのすぐに気付ける術もなかったし、仕方が無かったと思うんです。逆に言えば、大人になってからでも気づけて、いまは本当によかったと思っています。
疾患を診断されることって、やっぱりショックではあるんですけど、診断される恐怖よりも、気付けた時の解放された感覚や疾患との付き合い方に気付けるほうがはるかに有意義だし、人生が圧倒的に楽しくなる気がします。いろんなことが良い方向に変わる気がするし、やれることもすごく増えるし。事務所やレーベルや周囲の人にはすごく迷惑をかけてしまいましたけど、もし、いまだに診断されていなかったらと思うと、恐怖しかないです。
――入院による休止を経た活動再開後、今年(2024年) 10月と12月にリリースされたEPには、それぞれ、ADHDについて描かれたリリックの曲が入っていました。
4s4ki そうですね。いまは自分の音楽と姿を通して、ある証明したい思いが強くあって……。
撮影 深野未季/文藝春秋
〈 「ああ、ADHDでも意外と頑張れるじゃん?」4s4ki(アサキ)が疾患を告白して証明したかったこと《より良くなるために「楽しく戦おう!」》 〉へ続く
(内田 正樹)
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