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草彅剛、三谷幸喜のほかにも……香取慎吾が最も影響を受けたのは“あの名優”だった!

文春オンライン / 2025年1月4日 6時10分

草彅剛、三谷幸喜のほかにも……香取慎吾が最も影響を受けたのは“あの名優”だった!

〈 「僕、人生も“雰囲気重視”で生きてるんで!」香取慎吾が今後“本当にやりたい仕事” 〉から続く

 デビュー以来多くの作品で鮮烈な印象を残してきた香取慎吾は、ひとりの名優から大きな影響を受けたという。その人物とは……。(全3回の3回目/ ♯1 、 ♯2 を読む)

◆◆◆

「まだこんなにあるのか……」大河ドラマの撮影で一生忘れられない出来事

――香取さんのドラマ出演におけるキャリアのなかで、いわゆる“ターニングポイント”となった作品を挙げていただくとしたら?

香取 やっぱり『新選組!』(※2004年。NHK大河ドラマ)になっちゃいますね。もう、とにかく辛かった。それまで僕はドラマって1クール(※3カ月)しか経験したことがなかったので、3カ月目が過ぎたころ、「まだこんなにあるのか……」と、あまりの衝撃に、楽屋で一人、近藤勇の姿で愕然としたときのことは、一生忘れられません。

――楽屋でうなだれている近藤勇って、あまり見たくないかもしれない(笑)。

香取 ですよね。本当に辛過ぎて「もう、どうしよう……」みたいな感じだった(笑)。着物を着てかつらを付けているから、疲れても横になるのさえ大変だったし。ちょっと時間が空いても、楽屋で自由に寝られないし。

 だから、毎年、「大河ドラマがぼちぼちクランクアップですよー」といったニュースを見ると、自分と何の接点も無い俳優さんでも、「お疲れ様です! よく頑張りましたね……」と、いまだに心のなかで手を合わせていますよ。もうねえ、あの苦労は一度経験した人じゃないと絶対に分からないと思う!

「草彅さんは本当に大好きな俳優さんの一人だし、ずっと刺激を受けています」

――俳優・香取慎吾のキーパーソンと言えば、それこそ、まず『新選組!』の脚本を務めた三谷幸喜さんや、盟友・草彅剛さんのお名前が浮かぶのですが。

香取 自分でもそう思います。草彅さんは本当に大好きな俳優さんの一人だし、ずっと刺激を受けています。当時、SNSでも思わず書いちゃいましたが、草彅さんが主演した映画『ミッドナイトスワン』(2020年)を観たときは、あまりに素晴し過ぎて、もう本当に芝居を辞めようと思った。

 それは決してマイナスな意味ではなくて、「こんなに素敵な俳優さんが存在するのならば自分はもうやらなくてもいいんじゃないか?」といった、どこか清々しいまでの思いからだった。でも、それはもしかしたら家族みたいに近しい存在だからこそ、尚更そう思えたのかもしれないし……やっぱり不思議な関係ですよね。

――過去にはお二人で舞台もやられていましたが、演技について話し合ったりされるんですか?

香取 時々、しますよ。と言っても、話題は主に“気持ちよさ”についてですけど。「あれ、観たよ。あのシーンは気持ち良かったでしょ?」「うん、あれは気持よかったね」みたいな。例えば大きく声を張り上げて叫ぶシーンとか、普段の生活ではまず無い経験だから胸がスーッとするというか、ちょっとした気持ちよさがあるんですよ。グッと涙するシーンもそう。そういうのを共感し合うような会話はします。

名優から学んだ現場での立ち振舞い

――例えば、過去にドラマで共演されたかたから言われた、今も記憶に残っている言葉、教訓になっているような言葉などはありますか?

香取 うーん……ああ、言葉じゃないんですけど、ありますね。僕は田中邦衛さんと何度かご一緒させていただいたんですが……。

 邦衛さんはいつも冗談みたいに僕のことをずっと“兄貴”と呼んでくださって。例えば、撮影が深夜遅くまで押したときの疲れを、「今日、疲れたね」と暗く重たく言うのではなく、「今日疲れたなあー。じゃあ、明日みんな休み?」と、ちょっと笑える一言で表現されるんですよ。

 その日の撮影が終わったときも、ロケバスや楽屋に戻る途中、「おおー終わったぞー。おらー!」とか言って歩きながら衣装を脱いで、ぽんぽんと道端に放り投げていっちゃうんですよ(笑)。それを僕や衣装さんやADさんで、「ちょっと邦さーん何やってんすか、ダメですよー!?」って衣装を拾いながら後を追っていって。

 邦さんだってどう考えても疲れているはずなのに、明るくみんなを笑わせて、最後はわーっと楽しく現場を終えようとする。いつも朗らかで緊張感を感じさせない、本当に素敵な立ち振舞いでしたね。

――演技論云々よりも、現場にどう居るか、現場でどう人と接するかのほうが、香取さんのなかでは大きい?

香取 そうですね……邦さんにはかなり大きな影響を受けていたんだと思います。いま初めて気付いたかもしれない。

――年齢や経験を重ねたいまだからこそ、改めて気付かされた影響なのかもしれませんね。

香取 そうかもしれない。僕は大前提として、生きるって必ずしも年齢が物差しではないと思っているふしもあるんですが、やっぱり経験値というのは歳を重ねないと増えていかないものだし。

過去を振り返りたくなくて「これまでの 明日を振り返ってみた」という歌詞に行き着いた

――ニューアルバム『Circus Funk』を昨年11月にリリースされたばかりですが、音楽についてはどうでしょうか?

香取 やっぱりありますね。僕、過去を振り返るのが嫌いなんですよ。“明日を生きる”という感じのテーマでいまこの瞬間を生きてきたつもりだし、それじゃ足りなくて“明日を生きるぞ”と言ってきたくらいで。

 今回、アルバムに収録された「Not Too Good Not Too Bad(feat. Yaffle)」という曲では、一緒に曲を作ったYaffleくんと歌詞を揉んでいくうちに、「振り返る」という言葉にぶつかった。でも、「やっぱり、これは僕ちょっと言いたくないな」と言って、さらにやり取りを重ねていった。すると、「これまでの 明日を振り返ってみた」という歌詞に行き着いて。我ながらとても気に入っています。

 言いたくないことは言わないけど、お芝居でも、音楽でも、時には経験が自ずと滲み出てくるような場面があるんですね。

――最後に、改めて今回のドラマの抱負をお聞かせください。

香取 “ニセモノホームドラマ”みたいな入り口ですが、いざ蓋を開けてみると、「え、こんな内容だったの!?」と思ってもらえるんじゃないでしょうか。演じている真っ最中の僕自身も、日々、「え、そうだったの!?」と騙されているくらい。いま、このタイミングで、こんな面白い役に出会えて楽しいです。

 社会と、家族と、どう向き合うのか。この国で生きている誰しもが気にせざるを得ないテーマが詰まっていると思うので、期待していただけたらうれしいです。ぜひご覧ください!

撮影 杉山拓也/文藝春秋
ヘアメイク 石崎達也
スタイリスト 黒澤彰乃

(内田 正樹)

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