「わかっているだけで6人が死亡」《鳥取連続不審死事件》上田美由紀が亡くなる前に匂わせた「ある支援者=東京の父親」の存在
文春オンライン / 2025年1月4日 17時10分
亡くなった上田美由紀死刑囚の自宅 ©文藝春秋
2つの連続不審死事件の犯人として死刑をくだされ、2023年に収容先の広島拘置所で死亡した上田美由紀死刑囚。亡くなる前に彼女が没頭した「ある趣味」とは? そして彼女を支える「謎の支援者」とは? ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の新刊『 殺人の追憶 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
松江刑務所での面会
アクリル板の向こう側に、静かに腰を下ろした身長146センチの小柄な女性は、少しの沈黙のあと、「私は、強い女ではないので」と前置きし、こう吐露した。
「無の状態というか、判決日が思ったより早かったので、パニックになりました。正直、自分の気持ちをどう表現したらいいのか分からないんです」
2009年に発覚した「鳥取連続不審死事件」の被告・上田美由紀(当時43歳)は、島根・松江刑務所で私に、判決前の心境をそう明かした。2017年6月のことである。2件の強盗殺人罪などに問われていた上田美由紀は、このときまさに最高裁で争っていた。
事件の発端は、鳥取県警が2009年の11月、上田美由紀と同棲中の元自動車セールスマンの男(当時49歳)を、軽自動車などをだまし取った詐欺容疑で逮捕したことにさかのぼる。さらなる疑惑が浮上したのは、その取り調べのなかでのことだった。複数の男性を相手に嘘をついて金銭を貢がせていたことにとどまらず、上田美由紀のまわりでは交際相手や知人男性が次々不審死を遂げていたのだ。
わかっているだけで6人が亡くなっていた。ぎょっとする数字である。2004年、読売新聞の記者(当時42歳)が列車にひかれて死亡。2007年、警備員(当時27代)が日本海で溺死。
2008年、鳥取県警の刑事(当時41歳)が首を吊り死亡。2009年、上田美由紀と同じアパートの住人が急死。ただ、証拠不十分で、この4人はそれぞれ自殺や事故死、病死で処理されている――。
上田美由紀は残る2人の事件で裁かれていた。2009年4月に鳥取県北栄町沿いの日本海で遺体が発見されたトラック運転手の矢部和実さん(当時47歳)と、同年10月に鳥取市内の摩尼川で遺体が発見された電気工事業の圓山秀樹(当時57歳)さんだ。2人とも水死だった。
この2つの連続不審死事件で、2人と接点があった上田美由紀は、いずれも睡眠導入剤を飲ませて水死させたとして強盗殺人容疑で再逮捕、起訴された。しかし詐欺容疑については罪を認めたが、強盗殺人については否定。直接証拠がないなか、一貫して無罪を主張してきた。
2012年、一審の鳥取地裁は上田美由紀に死刑判決を言い渡した。上田美由紀はこれを不服として控訴したが、二審・広島高裁は訴えを棄却。上田美由紀は最高裁に上告の身だった。
そして2017年7月27日、最高裁は「第一審・控訴審の判決は正当」として上告を棄却し、死刑判決が下された。
私が面会を重ねたのは、その判決の約2ヶ月前からのことだった。
――事件のことを考えることは?
面会室。何度も同じ問いをしたが、いつも淡々とこう繰り返した。
「それは……、答えてはいけないと弁護士さんから言われていますので。それに私は、(事件のことが)よく分かっていないんです」
上田美由紀を支える「父親(支援者)」の存在
――では、日々何を考えているのか?
「いまは、一日をどう過ごしていこうか、と。判決までの一日が終わるのが凄く早いんですね。一日が、24時間よりもうちょっと長く欲しいなって思います。最終弁論から判決までもう少し長く時間が貰えると思っていたので。みなさんが2ヵ月のところ、私の場合は1ヵ月を切っていましたので。私の中で、1分が1秒に感じられるほど、時が過ぎるのが早いんです」
判決期日が早まったのは、なぜか。最高裁判決には、時の政権の意向が影響するといわれている。有名事件の犯人に対してスピーディに判決を下すことが、支持層へのアピールになると考えられている。つまり安倍政権の空気が反映されたことになる。
――そのなかで、いまは何をしたい、何を考えている?
「東京に新しい『父親(支援者)』がいるんです。その方をはじめとして、お手紙をくださる支援者の方々にお返事や絵をかかせてもらえることで、時間を忘れさせてもらっています」
――絵とは?
「動物が好きだったので、生き物や花のイラストですね。一人ひとりに返事を書くことで生きている実感が得られて、まだ自分を見失わないでいられています。だから、消費税が上がるのは困るんですよ。葉書きが値上がりしますから……」
〈 「なぜ訴えられるのか、わからない」“和歌山毒物カレー事件の林真須美”が《鳥取連続不審死事件》上田美由紀を訴えた理由とは…? 亡くなる前に語った「共感と戸惑い」 〉へ続く
(高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
女性教師(29)を殺害して時効まで逃げ切った男の“唯一の誤算” 遺族が起こした1億8000万円の損害賠償請求に、裁判所がまさかの決断「著しく正義に反する」――2024年読まれた記事
文春オンライン / 2025年1月5日 6時0分
-
「なぜ訴えられるのか、わからない」“和歌山毒物カレー事件の林真須美”が《鳥取連続不審死事件》上田美由紀を訴えた理由とは…? 亡くなる前に語った「共感と戸惑い」
文春オンライン / 2025年1月4日 17時10分
-
「紀州のドン・ファン事件」裁判で須藤早貴被告に一審無罪 検察は控訴しても勝てないこれだけの理由(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月29日 9時26分
-
筧千佐子死刑囚が死亡 青酸連続殺人事件で夫や内縁関係の男性3人を殺害、無罪を主張
産経ニュース / 2024年12月26日 16時19分
-
“飲酒死亡事故”DJイェソン、懲役8年確定
Wow!Korea / 2024年12月15日 11時7分
ランキング
-
1俳優の吉沢亮さん、住居侵入容疑で書類送検へ…「トイレに行きたくて勝手に」
読売新聞 / 2025年1月6日 21時13分
-
2自民・義家弘介氏が政界引退へ 「ヤンキー先生」、文科副大臣など歴任 後任は「落下傘でない人であってほしい」
カナロコ by 神奈川新聞 / 2025年1月6日 16時50分
-
3「患者の8割がインフルエンザ」連休明け車あふれるクリニック 流行のピークは「あと1~2週間」福岡市
RKB毎日放送 / 2025年1月6日 18時40分
-
4「dポイント」有効期限が大幅変更へ。2025年「“見逃したら損をする”ポイ活ニュース」を節約プロが解説
日刊SPA! / 2025年1月6日 15時52分
-
5海岸約900mに渡ってイワシ大量漂着 去年暮れに地元漁業者が発見し役場に連絡…町は撤去方法を検討 北海道松前町
北海道放送 / 2025年1月6日 12時41分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください