「愛人を家に連れ込んで口論に」62歳妻に刺殺された夫は首相SPだった《元首相は取材に「立派な方でした」》
文春オンライン / 2025年1月6日 7時0分
警視庁本部庁舎 ©時事通信社
関東管区警察学校からほどちかい、緑豊かな東京・国分寺市の閑静な住宅街。昨年12月28日、年末の穏やかな朝の空気が突然、大量のパトカーのサイレンに切り裂かれた。
包丁を片手に返り血を浴びる妻
「この日の午前7時55分ごろ、3階建てマンションの一室に住む中山由美容疑者(62)が夫の祐二さん(65)の首を果物ナイフで刺し、その後すぐ『夫を包丁で刺してしまった』と自ら110番通報。祐二さんは救急車が到着したときにはすでに心肺停止状態で、搬送先の病院で失血死が確認されました」(社会部記者)
警察が現場に駆け付けたとき、由美容疑者はマンションの居室で包丁を片手に返り血を浴び、呆然とした状態だったという。夫はリビングのソファのそばに血を流して倒れていた。
「由美容疑者は任意聴取に『夫が浮気をして愛人をつくり、家にまで連れ込んでいるのを見た。不倫について朝から口論になり、夫に暴言をはかれ、カッとなった。ソファにいた夫をナイフで刺した』などと説明。その後、『包丁を突き付けたら夫が立ち上がって刺さった。殺すつもりはなかった』と、殺意については一部否認しています」(同前)
近隣住民によれば、「中山さんご夫妻は10年ほど前に引っ越してきて、2人暮らし。日ごろ言い争う声が聞こえたことなどはなかった」という。何の変哲もない夫婦の“浮気”騒動が、最悪の結末を迎えてしまった不幸な事件。だが、その背景には、報じられていない事実があった。
「亡くなった祐二さんは、以前は警視庁の警察官で、結構な幹部だったと聞きました」(近隣住民)
警視庁の発表では「会社員」とされた夫。だが、生前は警視庁で警察官として勤め上げ、通信指令本部の幹部職などを歴任していたというのだ。当時を知る警視庁関係者が語る。
要人警護としてあの大物政治家も…
「彼は2019年に定年退職。若い頃は要人のSPなどいわゆる『警護課』の経歴が長く、50代で第一線を離れてからは郊外の警察署の警備課長をいくつかやっていました。通信指令本部の指令課長を務めたことも。定年前の最後の仕事は、日野警察署の副署長でした」
警護畑の警官の中でも優秀だったようで、
「警護畑の花形であるSP、つまり要人警護も任されていました。正義感が強く、現役SPだった1997年には、当時住んでいた千葉の自宅近くのプールでおぼれた小さな子供を人工呼吸で助け、市長に表彰されたこともあったそうです。政界の重要人物の警護にも抜擢。なかでも大物だったのは、“殿”の異名で知られる細川護熙元首相(86)です」(警護課関係者)
当時を知る千葉県内の元自宅の近隣住民が語る。
「本当に仲のいい夫婦という感じ。祐二さんは人当たりがよく、由美さんも明るくてお喋りな、溌剌とした人でした。由美さんは家族のこともよく話してくれる方で、『旦那が細川さんのSPなんです』と嬉しそうに教えてくれた。細川さんの隣に、黒いスーツ姿のキリッとした祐二さんが写り込んだ週刊誌の写真記事を見せてくれたこともあったくらいなんです」
息子2人と仲良し一家だった
2人の息子がいたという夫妻。一時、千葉県に自宅を構えていたのも、子供の健康を考えて空気の良いところを選んだためだったという。
「警察官の息子らしく、息子さんは2人とも空手を習って鍛えていた。上のお兄ちゃんもその後、警察官になったと聞きました。喧嘩のけの字も見えない仲良し一家だったんですが……」(同前)
祐二氏について尋ねるべく、細川氏の携帯を鳴らしてみると、確かに記憶にあるという。
「中山さん。はい、そういう方がおられましたね。SPの方は、皆さん今も覚えていますよ。とても立派な方でしたね。温和といいますか、口調もそうですし、動作も、とても紳士的な方でした。確か私が現職(首相)のときからいたのかな……彼は途中から来たんじゃなかったでしょうか。そこは詳しく覚えていませんが、動きも非常に素早いけれども、極めて目立たないようにしていて、非常に上手にやっていましたよ」
細川氏に年末の事件について伝えると、「いや、そうですか」と驚きを隠さなかった。
「ご家族の話は彼からあまり聞いたことがないですが、いや、愛人だとか、とてもそんなことがあるような人とは思えなかったですね。警護を離れてからは連絡を取ってませんで。時々『どうしてるかな』と思っていたんですけど……」 (同前)
“殿”の身辺を外敵から守った強固な護衛も、家内の諍いは防げなかったようだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)
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