「朝起きたらLINEの未読メッセージが2000件あって。おっさん寂しいんだな(笑)」斉藤和義が振り返るカーリングシトーンズ結成秘話
文春オンライン / 2025年1月13日 17時0分
©三浦憲治
40歳を過ぎてから奥田民生と急接近し、カーリングシトーンズを結成した斉藤和義。奥田民生との出会い、そして音楽以外での付き合いが深まった理由を尋ねると……。(全2回の前編/ 続き を読む)
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40歳を過ぎて、急に仲良くなった
――話によると、初めて民生さんと会ったのは1999年ごろ、ゆずと3組でやった博多のイベントだったということですが。
斉藤 どうだっけな。そのイベントは覚えてるんですけど、それが最初だったのかどうか。ロックフェスができる前は、誰かと誰かでイベントをやるみたいなのがちょこちょこあったので、そういうので一緒になってた可能性はあるんですけどね。でも覚えてるものとしては、それが最初かもしれないです。
――初対面の印象はどんなものでしたか?
斉藤 その前から、俺がデビューしたころの曲を民はんがいいと言ってたという話を人づてに聞いてて、ああ、知ってくれてるんだなって。そんなこともあったので、初めて会う感じは特別なかった気がするんです。もちろんこっちは一方的に知ってましたから。たぶんそのとき、ギターの話かなんかしたんだろうなと思うんですけどね。
――その後、民生さんとの距離はすぐに縮まっていったんですか?
斉藤 いや、そうでもないんじゃないですかね。まだ20代、30代ぐらいだと、お互い尖ってたり、ギスギスしたりするところもあって、会えば挨拶するし、話もするけどっていう、しばらくはそんな感じだったと思います。
一緒に遊ぶようになったのは、たぶん40歳を過ぎてからじゃないかな。それまでは民はんに限らず、トータス(松本)にしろ吉井(和哉)くんにしろ、面識はあったけど飲みに行きましょうみたいな感じではなくて。でもみんな40歳を過ぎて、なにかから降りたのかわからないけど、急に仲良くなって遊びだしたんです。民はんもそのなかのひとりですね。
もうじじいになったし、ここからは助け合い
――40歳というのは、やはりひとつの転機なんですね。
斉藤 40歳になると、中年ですよというハンコをバーンと押される感じがあるというか。トータスや吉井くんもそうだけど、スガ(シカオ)くんとか、田島貴男とか、みんな66年生まれで、40歳になる06年に「ROOTS66-DON'T TRUST OVER 40-」というイベントがあったんです。10組以上集まったのかな。それが打ち上げでもずっと一緒にいるくらい砕けて、楽しい会になったんですね。
自分の印象としては、その辺りから急にみんな近くなった感じがして。もうじじいになったし、いつまでも肩肘張ってるんじゃなくて、ここからは助け合いで、みたいな(笑)。自分のなかでガラッといろんなものが崩れて、そこからえらい飲み歩くようになったんですよね。その流れで民はんのことも誘うようになって、浜崎貴司が「民生くん紹介してよ」って言うから、会わせたらすごく仲良くなったりとか。
民はんも40歳過ぎぐらいから急に社交的になったって、本人が言ってたのか、近い人が言ってたのか忘れたけど、たしかにそういうところはあるんじゃないですかね。民はんは俺に輪をかけて、自分から進んで外に出ていくタイプじゃないから。そのうちにLINE会が始まって、より仲良くなっていった感じがありますね。
おっさんって寂しいんだなっていう話ですけど(笑)
――何人かの話を聞くと、グループLINEを作ったのは大きかったということですよね。
斉藤 でかかったですね。最近は落ち着いてきましたけど、10年くらい前に始めたころは、朝起きると2000件くらい未読メッセージがあって。スマホにこんな機能があったのかって、夜通し女子高生のようにやってましたから。おっさんって寂しいんだなっていう話ですけど(笑)。
――そのグループLINEが発展するかたちで、18年にカーリングシトーンズが結成されます。
斉藤 その前からLINE会で、このメンツでバンドをやったら楽しいんじゃないかみたいな話はちょこちょこ出ていて。それで寺岡呼人のソロ活動25周年のイベントにみんなが呼ばれて、そこから始まっていったんですよね。
「学祭っぽいですよね」
――カーリングシトーンズについて、民生さんは「斉藤和義はレコーディングのアイディアも持ってくる(中略)。俺とキングは基本、言われたことをやるスタイル」と本のなかで話していますが。
斉藤 どうですかね。カーリングシトーンズは基本的に、みんなで曲を作るというより、それぞれが作った曲をみんなで料理するというスタイルなんです。この曲では民はんがベース弾いてよとか、トータスがドラムやったらとか、その場のノリでけっこう決まっていって。俺も、そんなにアイデアを持っていくわけではないんですけどね。
普段の自分のレコーディングと比べたら、責任は1/6だし、2曲くらい作れば1枚のアルバムになるので、おお、これは楽ちんだなと(笑)。昼から酔っぱらって録ってたりするし、誰かが作業してるときは、キング(YO-KING)はサウナに行っちゃったりもするし。なんていうか、学祭っぽいですよね。LINE会も学祭みたいな雰囲気があって。
――カーリングシトーンズは和義さんにとって、普段は行っていないバンド活動になりますね。
斉藤 もともとソロなのは俺だけなんです。昔はさんざん遊びのバンドをやってたんですけど、デビューするころにオリジナルを始めたら、その後は気の合うメンバーと出会えず、そのままデビューしちゃったという感じで。バンドへの憧れはもとからすごく強いんですよね。いろいろ大変だろうに、ちゃんと社会性があって偉いなと。だからそういう気分が味わえていいなという思いもあったりしますね。
「あれだけ名のある人に来られたらかなわない、もうやめて!みたいな(笑)。」
――和義さんは93年のデビュー、民生さんは93年にユニコーン解散、94年にソロデビューという流れです。初めのころは民生さんのことをどう見ていましたか?
斉藤 当時はみんなデビューが早かったじゃないですか。人によっては10代でデビューして、22~3歳までにデビューしないともう一生無理みたいな空気もあって。そういうなかで、俺は27歳までデビューできなかったんです。一方で民はんは、年がひとつ上ってだけで、そう変わらないのに、先にもう活躍してたからいいなっていうか、俺は大丈夫かなって。
そのあと俺もデビューするんですけど、そうしたらユニコーンが解散して、ソロになって出てくるっていうことで複雑でしたね。こっちは新人で、これから出ていくっていうときに、あれだけ名のある人に来られたらかなわない、もうやめて!みたいな(笑)。
あえての牛歩戦術
――おふたりとも30年以上ソロ活動を続けてきたわけですが、和義さんは葛藤を抱えるような時期もありましたか?
斉藤 ありましたね。デビューする前がいちばん思い込みと勘違いが甚だしくて、デビューしたら電車も乗れなくなる、街にも出られなくなると思ってたら、全然静かで(笑)。そこで一度、鼻っ柱を折られたというか。
でも逆に、ちょっと冷静にもなれて、そうか、自分は時間がかかるのかもなと思って、じゃあ牛歩戦術で行こうみたいな感じになったんですよね。民はんもそうだし、同い年くらいのみんなの活躍を見て、早くそっちに行かなきゃという焦りを感じつつ、俺はじんわりじんわりという感じで。
――でもじんわりじんわりと、和義さんはペースを崩さず、ずっと走りつづけてきましたよね。
斉藤 デビューしたのが遅いっていうのもあるし、自分は一周遅れで始まってる感じはすごくあるんです。でも追いつかなきゃみたいな気持ちはもうないんですよね。途中からそっちはそっち、こっちはこっちって割り切るようにはなっていて。もちろん横目で見ながら、刺激を受けるんだけど、やってることはみんなバラバラだし。
それぞれの道を進みながら、たまに集まってバンドをやる、そういう余裕や遊び心が出てきたことが、きっとみんなも嬉しいんじゃないですかね。それぞれがやるべきことをやったうえで、また別に「なんか遊ばない?」って。そういうカーリングシトーンズのノリは、すごくいいなと思ってるんです。
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〈 ギターでもなく、ドラムでもなく、歌でもなく…斉藤和義が考える奥田民生に“ずっと続けてほしいこと” 〉へ続く
(門間 雄介)
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