羽田JAL機炎上の原因はどこに? 「一段、重いミス」と報告書がにじませた“海保主犯説”の根拠
文春オンライン / 2025年1月16日 6時0分
事故では海保機の乗員5人が死亡
2024年正月早々の1月2日に海上保安庁の航空機と日本航空機が衝突し、大炎上した衝撃の事故。海保機の乗員5人が死亡、機長が重傷を負った。その事故から一周年を目前にした昨年末の12月25日に運輸安全委員会による調査の経過報告書が公表されたが、早速様々な憶測を生んでいるようだ。
「報告書のポイントは379人を乗せた旅客機が炎上するという信じ難い事故が起きた原因の究明と再発防止策です。報告書は日航機、海保機、そして両者に指令する管制の三者を中心に事故に至る経緯をかなり明らかにしました」(全国紙社会部記者)
「三者とも国交省の管轄で、バランスを誤れば関係各所に余計な軋轢も」
管制が滑走路の手前で止まるよう伝える中、海保機は滑走路に進入、日航機がぶつかったことがこれまでに分かっていた。報告書ではさらに、前日に発生した能登半島地震の支援中だった海保機の機長が「震災支援のために優先離陸が許可されたと考えていた」一方で、チェックするはずの管制は誤進入に気付かず、日航機も海保機の機影を見逃していたと指摘した。
「今回の事故は民間航空機による単独事故ではなく、民間機、海保機、管制の三者の行動が重なって初めて起きるもの。三者とも国交省の管轄で、バランスを誤れば関係各所に余計な軋轢も生じかねず、報告書には腐心の痕がみえます」(前出・記者)
そんな中、注目を集めているのが、海保機だ。
「海保機は聞き間違いという一段、重いミスを犯していた」
国交省関係者は、「初公開した海保機の音声記録によれば、海保機の機長も副機長も、管制の指示を誤解したままやり取りしていたことが分かる。日航機と管制は見落としの問題だが、海保機は聞き間違いという一段、重いミスを犯していたとみることもできる」と海保主犯説を滲ませる。
そんな報告書の“ニュアンス”に、業務上過失致死傷容疑で捜査を進める警視庁が気付かないはずもない。
業過事件に詳しい捜査幹部OBの分析。
「再発防止を目的とする安全委の調査と刑事責任追及を目指す警察の捜査は全く別個に行われるが、安全委の報告書は刑事事件の重要な証拠となる。警視庁も報告書と全く違う方向の捜査はできないだろう」
業過事件では、事故が予想できたか、回避できたか、過失があったか、が立件への主なポイントとなる。
「別の航空機が着陸予定の滑走路に進入すれば事故が起きるのは当然で、今回の事故の核心は、日航機、海保機、管制各々の過失の程度に帰着する」(同前)
となれば海保機の聞き間違いを指摘した報告書は「海保機長に責任を帰する方向へ捜査を一歩進めたものといえる」(同前)という。
最終報告までは1年以上、立件までにはさらなる年月がかかる見通しだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年1月16日号)
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