「将来が見えないと思ってしまったんです」才能あり、周囲の応援もあり、しかし…21歳・男性バレエダンサーが大好きなバレエを引退→それでも復活できた理由
文春オンライン / 2025年1月12日 11時0分
才能があり、まわりからの信頼も厚い彼が「一度、バレエをやめてしまった」理由とは?(写真:森脇崇行さんInstagramより)
バレエを始めたのは3歳のとき。周囲が認める才能があり、その活動を応援してくれる人もいる男性バレエダンサーの森脇崇行さん(取材当時21歳)。しかし、そんな彼も「一度はバレエをやめた」ことがあるという。いったい彼に何があったのか? そして無事、カムバックできた理由とは? 谷桃子バレエ団を追い続ける映像ディレクターの渡邊永人氏(株式会社Sync Creative Management所属)の新刊『 崖っぷちの老舗バレエ団に密着取材したらヤバかった 』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
3%。
25万人以上いるバレエ人口のうち、男性が占める割合だ。その数8000人。
「母が昔バレエをやっていた縁で、3歳からバレエを始めました」
そう話すのは森脇崇行さん、21歳。
「彼は将来有望なプリンシパル候補です」
髙部先生も期待を寄せている男性ダンサーだ。
「入団1年目で主役級」若手のホープの人柄
それもそのはず、森脇さんは、芸術監督の髙部先生と同じく、世界的な若手バレエダンサーの登竜門・ローザンヌ国際バレエコンクールのファイナリストだ。谷桃子バレエ団では、入団1年目で主役級の役柄を任される若手のホープである。
ただでさえ男性人口が少ないバレエの世界。だから才能ある男性ダンサーは本当にごくわずかであり、とても貴重な存在なのだ。
「出身は広島です。1年前に入団と同時に上京してきました」
一人暮らしをしているワンルームの部屋でそう教えてくれた。喋り方は少しゆったりしていてマイペースな感じだ。どちらかといえば草食系男子といったところだろう。
しかし踊りになると、普段の雰囲気とは真逆の力強さを見せるから、そのギャップに毎度驚く。バレエ素人の僕でも「何かが違う」とわかるほどだ――実際にはわかった気になっているだけかもしれないが。
滞空時間の長いジャンプを可能にする跳躍力、体に一本軸が通っているような安定感抜群の回転。練習を撮影していても、特に森脇さんが回転をした後は、自然に拍手が起こることが多い。撮影を続けていくうちにわかったことだが、素晴らしい技を披露した時は練習中でも拍手が起こるというのは、「バレエあるある」だそうだ。
ちなみに僕は人生で「バレエをやろうかな」と思ったことが一度もない。僕に限らず、そんな男性は少なくないはずだ。
女の子ならバレエは人気の習い事の一つに入ってくるかもしれないが、男の子なら野球やサッカーなどが一般的だろう。その上、他の習い事に比べてバレエはお金がかかるのだ。
週に1回のレッスンで月謝が1万円を超えることも珍しくないため、選択肢から遠ざかるのも無理はない。
「始めた時の記憶はないんですけど、小学校2年生くらいから段々自らの意思でやる気が出てきたみたいです。家庭のお財布事情的にバレエを続けるのはなかなか厳しかったのですが、通っていたバレエ教室の先生がだいぶ協力してくれて……」
「一度バレエをやめた」理由
ただでさえ人口が少ない男性ダンサーだ。才能がある森脇さんにバレエを辞めてほしくなかったのだろう、バレエ教室の先生もお金はそっちのけで協力してくれたという。しかし、その後の道のりも順風満帆とは程遠いものだった。
「実は一度バレエは辞めたんです」
髙部先生をはじめとしたバレエ団幹部がこぞって将来のプリンシパルに推すほどの才能の持ち主にいったい何があったのか。
ローザンヌでファイナリストになった後、その特典の奨学金で中学卒業と同時にドイツの名門バレエ学校に進んだ。コンクールでの成績が優秀だったため、学費だけでなく、生活に必要な食費や住居費も給付される「フルスカラシップ」での留学だったそうだ。
卒業を控え、海外のバレエ団で踊ろうと考えていた矢先、コロナ禍になり、日本に強制帰国となってしまった。海外のプロバレエ団は軒並み新規団員募集を停止、既に進路が決まっていたバレエ学校の先輩たちの入団内定も取り消しとなったという。
「このままバレエをやっていても、将来が見えないと思ってしまったんです」
一時はバレエから完全に離れ、ごみ収集などのアルバイトを地元・広島でしていたという。
〈 「今はなんとかバレエだけで生活できています」3歳から始めたバレエをコロナの影響で引退…夢を失った21歳・男性ダンサーを救った「ある人物」の正体 〉へ続く
(渡邊 永人)
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