「毎日2~3回くらい配信して最初の3カ月はフルタイムの仕事も続けてた」ksonさんが語るVTuber時代の超多忙生活と、配信者の“承認欲求”問題
文春オンライン / 2025年2月1日 11時0分
ksonさん ©文藝春秋 撮影・三宅史郎
「ずっと150%では走り続けるとおかしくなっちゃうから」
2016年に配信者として活動を開始し、大手事務所のVtuberの“中の人”として活動していた時期を経て、活動9年目に突入したksonさん。
人気者が急に活動を休止したり、燃え尽きのような形でフェードアウトしてしまうケースも多い世界で、ksonさんはなぜ8年間も活動を続けてこられたのか。事務所からの退所を決めたきっかけ、「今楽しくないかも」と気づいてしまった瞬間、そして長く活動を続けるたった1つの大事なポイントについてお話を伺った。
「私を動かしてたのは完全に趣味と承認欲求だけでしたね」
――ksonさんが動画投稿を始めた2016年って、どんな雰囲気でしたっけ。
kson もう8年前なんですね。当時はゲーム実況でお金を稼ぐっていう文化がまだなくて、どっちかっていうと動画を作る人がお金を払って投稿する状態でした。
主流も今のような配信じゃなくて動画投稿だったので、土日に1人でバーッてゲームの動画を撮って編集して、それを平日にアップする、みたいな。私を動かしてたのは完全に趣味と承認欲求だけでしたね。
――趣味と承認欲求。
kson 育った家が割と厳しくて、「ゲームは悪」「やると頭が悪くなる」と言われてゲーム機ももちろん買ってもらえず、ずっと禁止されてました。でも大学で1人暮しを始めたら一気に反動が来て。アルバイトしたお金で自分でゲーム機を買って、友達もいなかったのでドハマりしちゃって。
――友達が少なかった?
kson 少なかったというか、ほとんどいなかったです。学校行って、バイト行って、あとは帰ってゲーム。小さい頃から親が転勤族で1年おきに引っ越していたので人と仲良くなった記憶がないし、話しかけられるのも嫌だから「話が通じないから話しかけてもしょうがない子」みたいなキャラを作ってた気がします。
――それが承認欲求につながっていった。動画投稿を始めたのは大学生の頃ですか?
kson 大学の頃は1人で遊んでただけで、卒業して働きはじめてからでしたね。医療系で夜勤とかもある忙しい職場だったんですけど、逆にお休みの日に電話かかってきたりはしなかったので、動画を撮る時間は確保しやすかったかもしれません。
「『あ、自分の話で笑ってくれる人がいるんだ』っていうのも新鮮な発見で」
――何か始めるきっかけがあったのでしょうか。
kson 休日に遊びに行く体力も無くて、ゲーム配信を見るのが一番の趣味だった時期が1年くらいあったんですよ。家で見られるし外出なくていいから楽しくて。職場でできた数少ない友達に1人配信好きな人がいて、「じゃあ何人か集めて一緒に動画とか作ろうよ」と誘われたのが最初のきっかけでした。私はすっかりその気になったんですけど、なかなか人が集まらなかったり話が進まなくて、我慢できずに1人で始めちゃったという感じですね。
――最初に投稿した「日本語下手な外人女のSIREN」がいきなりバズったんですよね。
kson 1本目の投稿で多くの人に見てもらえたのは本当にラッキーでしたね。私は両親ともに日本人なんですけど高校までアメリカ育ちだったので日本語が中途半端で、その喋り方や感覚のズレも含めて面白がってもらえて。
――承認欲求は満たされた?
kson めちゃくちゃ満たされました(笑)。厳しい親の反動でずっとゲームは悪いもの扱いだったのに、それを投稿したら「続きが見たい」とか「面白い」とか言ってもらえるんですから。学生時代に人と話す機会も少なかったから「あ、自分の話で笑ってくれる人がいるんだ」っていうのも新鮮な発見で。
――当時はお金にはならなかったんですよね?
kson 私が活動を始めたのはニコニコ動画全盛期の最後くらいでしたけど、まだ「お金になる」とか「仕事にできる」とかは思いつきもしなかったです。逆に「好き」っていう気持ちでやってる人しかいなかったので、あの頃の配信者って今でも結構生き残ってますよね。
「みんなすごいけど、完全にモンスターなのは…」
――確かに第一世代の方は息が長いですよね。長く続けるのも大変だと思うんですが、ksonさんから見て「すごい」と思う方はいますか?
kson ずっと現役の方はみんなすごいですけど、ガッチマンさんとかは完全にモンスターだなって思いますよね(笑)。今でも毎日動画投稿されてて、配信もやってるし、家族もいるのに本当にすごいです。
――配信者として活動するうえで、顔を出すか出さないかというのは1つ大きな分岐点だと思うんですが、ksonさんはいつ頃から顔出しを始めたんでしょう。
kson 結構はやくて、2018年とかだと思います。確かニコニコのイベントに呼んでもらった時に最初は不安で黒いマスクをつけてたんですけど、やっぱり喋りにくいじゃないですか。それで「どうせ知り合いなんて誰も見てないでしょ」みたいな感じで外して、それが最初ですね。
「顔を出すようになると顔についてのコメントが増えるんですよ」
――特に女性だと迷われるところだと思うのですが、恐怖感はありませんでしたか?
kson 職場の人にバレたら嫌だなぐらいですね。でもやっぱり、顔を出すようになると顔についてのコメントが増えるんですよ。かわいいとかブスとかもそうだし、「アジア人じゃねーか」みたいな人種的な攻撃も来るようになって、容姿の話に引っ張られる。自分でも容姿売りするタイプの美人だと思ってないし、いい年なのも事実だから言われること自体はまだしも、ゲーム配信として面白いかどうかを見てもらえなくなるのはストレスでしたね。
――それはVTuber活動を始める動機になったり?
kson 個人でアバターを作って使ったりもしてました。アバターだと化粧しなくていいのが最高なんですよ。職場もすっぴんだったので「なんで配信のためだけに化粧しなきゃいけないんだ」って面倒すぎて。事務所に入ってVTuberとして活動するようになってからはもちろん顔は出さないですし。
――そして本格的にVTuber活動を始めていくことになるんですね。
「3年くらいしたら普通に仕事に復帰するつもりでした」
kson 2019年からあるVTuberのいわゆる「中の人」として活動を初めて、その時期はもうずっと150%で走ってましたね。ほとんど毎日2~3回くらい配信して、動画も作って、しかも最初の3カ月はフルタイムの仕事も続けてたんですよ。
――退職せずにやってたんですか!?
kson そのくらい本当に、生活できるなんて思ってなかったんですよ。大きな事務所だったので「ご飯くらいは食べられるように」って最低保証額はありましたけど、逆に言えばそのくらい。私も一時的なブームだと思ってたし、元の仕事も嫌いじゃなかったので、3年くらいしたら普通に仕事に復帰するつもりでした。なんなら今でも「さすがにもう続かないかな?」って思ってますし。
――ところがコロナ禍で人が外に出られなかったこともあって、VTuberは一気に伸びました。「スーパーチャットが1億円超えで上位を日本のVTuberが独占」みたいなニュースも話題になりました。
kson すごかったですよね。配信を見てくれる人もすごい勢いで増えたし、スパチャも多くて。ちょうどそのタイミングに私も活動を始めたので、すごい体験をさせてもらいました。当時私がいた事務所はスパチャは事務所と演者で半々のことが多かったので、それも含めてかなりバブルだったと思います。
〈 「もしかすると今楽しくないかも」ksonさんが“大手VTuber事務所”を辞めた後に受けた初めてのショックとは「数字や反響を気にする気持ちが大きくなりすぎて…」 〉へ続く
(「文春オンライン」編集部)
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