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別居中の夫宛ての荷物を開けると「150センチの子ども用Tシャツが…」不倫されても夫を信じたかった30代女性が「もうダメだ」と思った瞬間

文春オンライン / 2025年1月26日 17時10分

別居中の夫宛ての荷物を開けると「150センチの子ども用Tシャツが…」不倫されても夫を信じたかった30代女性が「もうダメだ」と思った瞬間

画像はイメージ ©AFLO

〈 「もううんざりなんだよ!」モラハラを繰り返す妻と不倫相手に癒しを求めた夫…10年を一緒に過ごした夫婦が決定的にこじれるまで 〉から続く

 友人から「あなたの夫が女性とラブホテルから出てくるところを友人が目撃した」と言われた九州在住の荻原道子さん(仮名・30代)は、目の前が真っ白になった。荻原さんが男児を出産してから半年後のことだった。高校時代から付き合いのある夫は、萩原さんが不機嫌をまき散らしたり暴言を吐くなどの「モラハラ」行為をしてしまっても、優しく受け止めてくれる人だった――。

 この記事はノンフィクションライター・旦木瑞穂さんの取材による、荻原さんの「トラウマ」体験と、それを克服するまでについてのインタビューだ。

 夫の浮気が発覚し一時的に別居することが決まった後、自身のそれまでの態度を反省した荻原さんは、カウンセラーに相談し「モラハラ」を抑える方法を身に着けていった。一方で別居中の夫の金遣いや言動に対しては、疑問が募っていったという。(全3回の3回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

別居期間の無期限延長

 別居期間解消が明後日に迫る中、自宅を訪れた夫が言った。

「今月分の小遣いをおろすからカード貸して」

 ぶっきらぼうにそう言い放つ夫に対し、離婚を考えていたものの、一方で別居期間が終わるのを今か今かと待ち望んでいた荻原さんは面食らう。

「え? お小遣い? 明後日帰ってくるんだよね?」

 すると夫は目も合わせずに言った。

「どうでしょうね~」

 カチンときた荻原さんは、自分を落ち着かせながら「違うの?」と訊ねる。すると夫はようやく荻原さんの方を見た。

「別居が始まってから、きみは仕事を始めて余裕で育児もこなしてるし、息子くんは俺見て泣くようになったし、離婚する気でいると思ってたからそのつもりだった。俺、帰って来ても迷惑だよね? きみは息子くんがいなかったら離婚してたよね?」

 荻原さんはそんな夫の発言を振り返る。

「正直、『何こいつマジで』と思いました。1人で幼い息子の面倒を見て、仕事と家事をしてきた私が、息子を連れて家を出た5月からの約8ヶ月間、どれだけ大変だったか想像もしていないんだと思いました」

 内心こう思いながらも、そのときの荻原さんは素直な気持ちを話したという。

「息子くんのためだけじゃない。夫くんも息子くんも同じくらい大切だよ。私は別居が終わる約束の1月をずっと楽しみにしてた。1人で家事育児仕事、余裕なわけないよ。言わないだけで、泣きながら育児してる日だってあった。夫くんが来てくれる一瞬にすごく助けられてるよ。だけどモラハラしていた私は何も言う権利はないから、夫くんの気持ちを尊重するよ」

 夫は驚き、弾かれたように言った。

「俺のこと大切なの?」

「大切に決まってる。別居してから夫くんは、自由に野球したりフットサルしたり、ほしいものをたくさん買ってたよね? 今まで私のことが怖くて、やりたいことも欲しいものも我慢してたんだなってわかった。夫くんが病院に行くのさえぐちぐち文句を言ってたよね。本当に後悔してる」

 それを聞いた夫は少し考えている様子だったため、荻原さんは続けて言う。

「だけど、まだ私と一緒には暮らせないと言うならもうやめよう。私は大丈夫だから……」

 すると夫は、「それなら、期限を決めずに、これからは一緒にいる時間を少しずつ延ばしていこう」と提案。

 荻原さんは複雑な気持ちになったが、了承するしかなかった。

「当時、夫が自宅に寄ってくれるのは2~3日に15分程度。別居を決めた時は、私と話をすると蕁麻疹が出ると言っていましたが、出る頻度は減ったと言っていました。カウンセリングで『過剰な愛情表現を控えるように』と指導され、あっさりするように心がけていたら、夫から頻繁に私の気持ちを確かめられるようになりました。誰だってモラハラ的な愛情は嫌でしょうけれど、あっさりしたらしたで、夫はわかりやすい愛情が欲しいタイプなのかなと思いました」

 とはいえ、別居生活が始まって約8ヶ月。その間、荻原さんは一度もモラハラをしなかったが、結果的に別居期間の無期限延長が言い渡されたのだった。

出会いと踏ん切り

 2019年1月。夫は12月に、「少しずつ一緒にいる時間を長くしていく」と言っていたが、自宅に来る頻度も、滞在時間もさほど変わりがない。荻原さんは、夫に対する信頼がさらに冷めていく自分に気づいていた。

「モラハラをした私が、先に悪いことをした。だけど、夫は『先輩の家に居候する』と言っていましたが、もしもずっと不倫相手の女性のところに入り浸っているのだとしたら、“ラブホテル目撃情報”の少し前からだとしても約2年間も不倫を続けていることになり、夫も悪いと思いました」

 荻原さんは覚悟を決めて、不倫の証拠を掴むことを決意。

「なんでこうなってしまったんだろうと思いました。だけどもう、やらなければ一生このままかもしれません。でも本当のことを知ってしまったら、本当に終わりになりますし……」

 翌日、友だちと一緒に別居中の夫が暮らしているアパートを見にいくと、ベランダに見慣れた夫の下着やシャツが干してあるのが見える。その横には女性の下着や衣服も干されていた。

 瞬間、けたたましいクラクションが鳴り響き、我に返る。友だちの車の中からアパートの様子を見ていたら、後ろから別の車が迫っていたのだ。

 慌てて友だちが車を動かすと、後ろの車はアパートの駐車場に停まり、中から派手めな30代半ばと思しき女性が出てきてアパートに入り、しばらくすると夫の洗濯物が干されている部屋の電気がついた。荻原さんは夫の不倫相手だと確信した。

もういらない

 踏ん切りがついた荻原さんは、その日は帰宅。3日後に自分で調べた弁護士の無料相談に行き状況を説明した。しかし、

「不倫相手のアパートに夫が入る写真か、自白するか以外は証拠にならない」

 と言われ、愕然。

「写真を撮るために探偵を雇うにはお金が莫大にかかりますし、その上弁護士費用だなんて、慰謝料をもらっても全部消えてしまいます。義両親か母に一緒に夫の部屋に乗り込んでもらうか、まずは夫と2人で話し合うべきか、悩みました」

 さらに荻原さんは、法テラスにも相談。すると法テラスで紹介された弁護士は、

「慰謝料300万円は請求できると思いますよ」

 と言った。

 ただ、「証拠は多い方がいい」とアドバイスを受ける。そこで荻原さんは、事情を知り、心配して来てくれた姉と一緒に、再び夫の滞在先のアパートへ向かった。

 すると今回は、夫や女性の洗濯物のほかに、小学生くらいの男の子と女の子の洗濯物が干されていることに気が付く。

 ショックを受けて帰宅した2日後、自宅に夫あての荷物が届いた。品名を見ると、「Tシャツ150サイズ」とある。

 荻原さんが開けてみると、紛れもなく150センチサイズの子ども用Tシャツだった。

「違うと信じたかったのですが、もうダメでした。『自分の大切な息子に会ったあと、他人の家族の元に帰る夫なんてもういらない』そう思いました」

 荻原さんは勤めている会社に、離婚に向けて夫と話し合うつもりだということを報告。すると社長から、「離婚するなら生活大変だろうし、9月から正社員にするよ」と言ってもらえた。

 さらに、当時荻原さんが仕事の日だけショートステイさせてもらっていた近所の保育園に、9月から空きがあることがわかる。

 準備を終えた荻原さんは、自宅に夫が訪れるのを待った。

「ハラスメントの連鎖」は止められる

 2019年7月。荻原さんは夫と話し合い、協議離婚することになった。

 夫は慰謝料を300万円支払うことにも、息子が成人するまで月に4万円支払うことにも同意した。拍子抜けするほどスムーズだった。

「私が離婚に向けた話し合いを切り出した時、もしも夫が不倫したことをきちんと謝ってくれて、『戻りたい』って言ってくれたら、私は受け入れていたかもしれません。でも、夫は私が不倫が続いていることを知っていると伝える前に、『きみの言動で気になるところがまだ色々ある』と言ったんです。私はその言葉にひどく傷つきました。私は別居してから、一度も夫にキレたりイライラしたりしていません。夫がいる時にはいつも笑顔でいるように努めてきました。それなのにまだ気になると言われるなんて……。多分、夫の中ではもう、私は『無理』な存在になってしまっているのだと思いました」

 荻原さんは、夫と一緒に建てた家を息子とともに出て、その家に夫は戻った。夫と出会った17歳の時から、12年の月日が流れていた。

 離婚から2年後、荻原さんは、妻のモラハラが原因で離婚したという男性と出会い、現在も交際は続いている。

 元夫と荻原さんの結婚式に参列できなかった父親は、離婚した娘と孫を心配して、よく家に遊びにきてくれている。母親はシングルマザーになった荻原さんを、お金の面で時々助けてくれた。元夫とは、息子の行事の時など、数ヶ月に1度再会する。義父母はいまだに荻原さんや孫を気遣い、お小遣いをくれたりしている。

「私は夫にモラハラをしてしまった最低妻ですが、夫にも相当傷つけられたと思います。カウンセラーさんには、『どんなことをしたら人が離れて行くかわからない幼い思考のまま、結婚してしまった』『相手には相手の人生がある。あなたが縛る権利はない』と言われました。当時の私にすごく響いた言葉です。もちろん、家庭があって、幼い子どもがいるのに毎週毎週、野球やフットサルなどの趣味に出かけてしまう夫も良くないと思いますが。それにしても私は縛りすぎてたなと反省しました……」

 荻原さんは17歳の時に元夫との交際が始まり、23歳で結婚した。温厚で一度も怒ったことがない元夫の性格もあり、荻原さんは自分のモラハラに客観的に気づかないで過ごしてきた。しかし元夫の限界が訪れ、最悪の形で自身のモラハラと向き合わざるを得なくなってしまう。元夫と別居し、カウンセリングに通い、自身の不機嫌やイライラするポイントを知り、その予兆をいち早く察知することで、本格的に不機嫌になったりイライラしたりするのを防ぐことができるようになっていった。

「11月から同棲することになり、元夫と別れてから、久々に息子以外の人と一緒に暮らし始めましたが、モラハラはしていないと思います。同棲してからというもの、彼は休みの日のたびにゴルフの打ちっぱなしに行くのですが、全然イライラしません。元夫は三交替勤務で夜もいないことが多かったし、野球やフットサルや飲み会で休日も家にいないので、私はいつも怒っていました。今は私も働いていますが、一緒に暮らす彼とは休みも合うし、『2時間で帰ってくる』と言ってちゃんと帰ってきてくれるので、少しも気になりません」

 荻原さんのケースは、両親のモラルハラスメントを見て育ったために、それが夫婦のコミュニケーションの取り方だと間違った学びをしてしまっていたのかもしれない。

「カウンセラーさんに『あなたのモラハラは両親の影響だと考えられる』と言われ、当時は両親を恨みました。でも今は、育ててもらった感謝の方が大きいです。同じ環境で育っても、反面教師で幸せな家庭を築いている人はたくさんいるので、両親ではなく私の問題だなって思うようになりました」

 育った家庭環境に加え、高校から12年間、別れを経験しないままに1人の人とずっと一緒にいた荻原さんは、「この人でなければ」と依存的になっていたのかもしれない。元夫が温厚で滅多に怒らない相手だったことも、荻原さんのモラハラを悪化させる一因になってしまった。

 しかしそうした紆余曲折を経て、現在の荻原さんは、最愛の息子と同棲相手との幸せを手に入れた。おそらく元義両親に可愛がられている様子からも想像できるように、親しくなった相手に依存しすぎない術を身につければ、多くの人から愛される人柄なのだろう。

 1人の人や1つのものに依存しすぎないためには、複数の大切な人やものを作っておくことが重要だ。荻原さんは、息子や彼、両親、そして元夫や元義両親、友だちや仕事など、以前よりも大切な人やもの、居場所ができたことで、モラルハラスメントを起こすことがなくなったのかもしれない。

「ハラスメントの連鎖」は止められる。

(旦木 瑞穂)

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