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パトカーで試験会場、地下鉄に乗る会社員に大批判も…厳しい大学受験国・韓国の令和の受験事情「塾代は100万円以上も…」

文春オンライン / 2025年1月19日 11時0分

パトカーで試験会場、地下鉄に乗る会社員に大批判も…厳しい大学受験国・韓国の令和の受験事情「塾代は100万円以上も…」

韓国ソウル出身、東京在住14年目の韓国人YouTuberのJINさん

 世界で最も厳しい大学受験国とも言われる韓国。毎日10時間以上の勉強、100万円を超える高額な塾通いなど、年に1度の受験日に人生を賭ける受験生も少なくないそうだ。

 そんな韓国の受験事情について、自身も受験を経験し、YouTubeでも発信しているJINさんに詳しく話を聞いた。(全2回の1回目/ 続きを読む )

◆◆◆

基本的に大学以外はない韓国の受験

――韓国の受験といえば大学受験のイメージが強いですが、中学受験や高校受験はどのような立ち位置なのでしょうか。

JIN 韓国では、基本的に大学受験以外はないんです。それまでの内申点を元に家から近い学校に割り当てられます。私立や公立関係なくランダムに振り分けられますが、学費は私立でも無料です。

 私が日本に来てまず驚いたのが、受験が何回もあるというところです。小学校受験もありますよね。韓国でも都市部のとんでもないお金持ちエリアでは、そういう学校がありますが、ほとんどの人は大学受験以外は経験しません。

 70年代に高校平準化(普通高校における学校毎の入試の廃止)が導入されて、義務教育まではお金や実力ではなくて平等にやりましょうという政策になってるんです。

――では、高校ごとに偏差値などはないのでしょうか。

JIN ないです。同じ学校に、韓国トップのソウル大学にいくような学生もいれば、大学受験をしない学生もいます。日本のようにこの高校に行けば「東大進学率◯%」みたいなことは全然なくて、高校で学力は測れないんです。

高校の授業だけでは大学受験対策ができない

――様々な学力の学生が一緒の高校に進学するわけですね。授業スピードも同じですか?

JIN 基本的に授業はみんな一緒です。レベルの高い学生だと授業を聞かずに自分で勉強している子もいます。それに大学受験のためにほとんどの学生が塾通いをします。高校の授業だけでは大学受験対策が全然できないです。

 ただこの塾代がすごく高いんです。例えば地方の学生だと、ソウルからいい先生を見つけてきて、指導してもらいます。教育熱心な親が大都市に先生をスカウトしにいくなんてことはたくさんあるのです。有名な先生だと取り合いにもなります。

――塾代はどのくらいかかるのでしょうか。

JIN ピンキリですね。人気な先生だと1ヶ月で1科目100万円かかることもあります。地方の学生が1人で先生を呼ぶと多額の料金がかかってしまうので、地域のお母さんたちで協力して20人くらい学生を集めて安く呼んだりもします。塾の先生の年収は高くて、すごい人だと億を超える人もいます。そのくらい韓国では塾文化が根付いています。

「沢から龍は生まれない」と言われている韓国の今

――塾にそれだけのお金がかかるとなると、金銭的に余裕がないと受験そのものが難しそうですが。

JIN 本当にそうです。お金がある家庭はいい先生を雇えるけど、そうでない家庭は自力で頑張らないといけない。塾があった方がより上を目指せるので、金銭的な格差が生まれてしまいます。

 韓国に「개천에서 용난다(直訳:沢から龍が出る)」ということわざがあるんですけど、最近は、沢から龍は生まれないってみんな言ってます。どれだけ頑張っても綺麗な海には勝てないと。

――日本でも「親ガチャ」という言葉が流行りましたが、韓国でも同じように言われているんですね。

JIN そうですね。生まれた家庭である程度決まってしまうというのはみんな思っています。医者の息子は医者になるし、弁護士の息子は弁護士になる。お金がないと、塾にも大学にも行けません。ただ、受験そのものは平等なので、誰にでもチャンスはあります。

出願大学を決める全国共通のテスト「スヌン」

――韓国の大学受験はどのような仕組みになっているのでしょうか。

JIN まず推薦と一般募集があり、一般募集は全国共通のテスト「スヌン」を受けて、その点数で出願する大学を決めます。

 日本の二次試験のようにそれぞれの大学のテストはありません。スヌン一本勝負です。誰もが同じテストを受けるからこそ、問題が簡単だと差がつきにくいので、かなり難しくなっています。満点を取る学生はほとんどいません。毎年1人いるかいないかです。

――スヌンの対策のためにみんな塾に通っていると。

JIN そうですね。一応、この中から出ますよと出題範囲は決まっているので、そこを勉強していればいいんですけど、いくら勉強しても不安は拭えません。

 だからみんな毎日10時間以上勉強しています。スヌン前の1年間はほとんど遊ばない。今はSNSなどもあるから誘惑も多いんですけど、直前の期間は携帯を見ない学生も多いです。

――大学受験をしない学生はどのくらいいるのでしょうか。

JIN 2割ちょっとくらいですね。基本的には大学に進学します。あとは専門学校にいく学生もいます。ただ韓国では専門学校に対するイメージが悪いのも事実です。

 勉強が苦手な学生は早期留学することもあります。外国語ができると、帰国子女枠があるので、競争率が高くないんです。だから「うちの子は勉強が苦手そうだな」と思った親が早々に子どもを留学させるというのはよくありますね。ただこれもお金がないとできないので、誰もができるわけではないです。

スヌン受験日は国をあげて応援

――スヌンと言えば、受験日に国をあげて応援する重要な試験というイメージがありますが、実際のところはいかがでしょうか。

JIN まず誰もが受けられるように、週末ではなく毎年11月の中旬の木曜日に行われます。キリスト教徒の礼拝などを考慮しているみたいです。

 交通機関は運行本数を増やしたり、警察やタクシーも各地に待機して、遅れそうな学生を送ったりします。通勤時間と被らないようにその日だけは会社の始業時間を遅らせています。それに合わせて株式市場や為替市場のスタート時間も遅らせます。

 アパートの自治会では、みんなを乗せていくために車を用意して待機しています。

――その日だけはスヌンを中心に動いているわけですね。

JIN そうですね。例えば、ラッシュ時に電車で通勤している会社員がいたら社会的に批判されます。大事な試験を邪魔するなと。だからスヌンの日の地下鉄には受験生しかいません。

 あとはその日だけはパトカーで試験会場までいくことも許されています。「受験生緊急輸送」みたいなステッカーを貼って送る方もいます。遅れそうな学生がいれば速度をあげたり信号無視することもあります。そのくらい大事な日なんです。

塾の先生や後輩たちも応援

――日本だと試験会場の前に先生や親が立って声をかける光景も見ますが、韓国もありますか。

JIN 韓国でも塾の先生や後輩たちも応援に駆けつけますね。韓国では問題がよく解ける(答えがよく出てくる)ようにとゲン担ぎで巻物状のトイレットペーパーを渡しますね。他にもその日に渡すと良いとされるお菓子が何個かあって、百貨店やスーパーにはたくさん並んでいます。

 あとは風邪を引いたりしないように、みんなマスクをしたりして対策しています。一応、体調が悪い人用の部屋も作られるのですが、健康じゃないと頭も回らないので。

〈 「リスニング中は飛行機の離着陸が禁止」「ソウル大出身者が普通の会社員は恥…」YouTuberが明かす、韓国のリアルな受験事情と意外な就職先 〉へ続く

(「文春オンライン」編集部)

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