《写真多数》“生誕100年”三島由紀夫が最期に残した声明文、血のついた灰皿、妻・瑤子夫人からの贈り物も…“割腹の瞬間”を目撃したもう一人の男の日記
文春オンライン / 2025年1月15日 16時0分
三島由紀夫 ©文藝春秋
今年1月14日に作家の三島由紀夫(享年45)が生誕100周年を迎えた。ノーベル文学賞候補とされながらも、自衛隊市谷駐屯地に立てこもり割腹自殺した三島。その最期を見届けた隊員の家族が知られざる逸話を明かした。
三島の割腹を見届けたもう一人の人物
昭和45年、11月25日。三島由紀夫が「楯の会」メンバー4人と共に、陸上自衛隊東部方面隊の益田兼利総監(当時57)を人質に取り、自衛隊員にクーデターを呼び掛けた、通称「三島事件」。
これまで三島の割腹を見届けたのは、益田総監と楯の会の3人とされてきたが、実はもう一人、事件の一部始終を知る者がいた。市谷駐屯地の「業務室」に勤務し益田総監の秘書的な役割を果たしていた、磯邊順藏二曹(86、当時31)だ。
「主人は三島さんからわずか3メートルのところで、割腹を見届けていました。三島さんのお腹の傷は深く、腸がかんなで引いた木くずのように波打ち、次から次へと飛び出したそうです」
「本を書きたいと、章立てまで考えていたのですが……」
そう語るのは、順藏さんの妻、眞知子さん(75)。順藏さんは4年前に脳梗塞に倒れ、現在は介護老人保健施設で過ごしている。
「倒れる前、主人はこれまでに集めてきた三島事件の資料の整理を始めました。事件から50年以上の年月が経ち、事件を知る人が少なくなる中で、自分が見たものを後世に伝えなくてはという思いが芽生えたそうです。最終的には本を書きたいと、章立てまで考えていたのですが……」
夫の意志を引き継ぐために眞知子さんが順藏さんの残した段ボール箱の中を覗くと、そこには事件に関する自衛隊の内部資料や、三島のものと思しき血飛沫のついた現場の物品など、貴重な資料があった。中でも目を引くのは、昨年5月、『FRIDAYデジタル』上に公開された順藏さんの日記だ。
三島が来監してからの出来事が分刻みで記録
「筆まめで、毎日の出来事を書き留めていた」という順藏さんが1ページ半を費やした“その日”の日記には、三島が来監してからの出来事が分刻みで記録されていた。順藏さんの日記や証言をもとに事件を振り返ってみたい。
〈11月25日 水曜日 晴11:00 三島由紀夫以下5名来監する
11:02 木村佳枝2曹と自分の2人でお茶を出す。総監室には三島由紀夫以下5名と益田兼利方面総監のみ
11:05 三島以下5名益田総監をしばり日本刀をぬく。乱入するも右手の中指を刀で切られる。益田総監を助けに行くも人質にとられているために助けられず〉
順藏さんから幾度となくこの日の話を聞いてきた眞知子さんが補足する。
「その日は事前に三島さんの来監予定があり、主人は皆さんにお茶をお出ししたそうです。その時は和やかな雰囲気だったらしいのですが、面会の終了時間を過ぎても誰も出てこない。不審に思った隊員が小窓から総監室を覗くと、益田さんが縛られているのが見えたそうです。主人は掃除用モップを持ち、上官の合図とともに総監室へ突撃したと聞いています」
そして、日記には三島の割腹自殺の真実が綴られていた――。
1月15日12時配信の「 週刊文春 電子版 」並びに16日発売の「週刊文春」では、三島由紀夫の“最期の瞬間”を見届けた磯邊氏の日記を公開。さらに「三島の血の付いた本」など事件の生々しい様子を伝える秘蔵写真を掲載。当時の日記と家族の証言でよみがえる「昭和の大事件」の全内幕とは?
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年1月23日号)
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